表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、辺境の地ガルテナへ……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/139

Lv.71 坑道へ

   [Ⅰ]



 俺達は、ラウム鉱採掘跡へと続く砂利道を進んで行く。

 採掘跡は村の奥に広がる森の中にあるらしく、草木が鬱蒼と生い茂る狭い道を進まなければならなかった。

 それは思っていたよりも疲れる、険しい道のりであった。

 思わぬ所に伸びている木々の小枝や蔓などが、手足や肩に引っ掛かるからである。

 特に、俺みたいなローブを身に纏う者にとっては、立ち入りたくない最悪な場所といえた。

 理由は勿論、木の枝に引っ掛かりまくるからだ。

 そんなウザい道を進んで行くわけだが、どうやらそれも、後少しで終わりを迎えるだろう。

 目的地らしき大きな穴が、前方に見えてきたからだ。


(多分、アレが坑道の入り口だろう……モロに鉱山て感じの穴だし……)


 ここから見る限り、穴が見える辺りは木々が無いようだ。

 その為、頭上を枝葉に覆われたこの木陰の道とは違い、日の光が降り注ぐ明るい場所となっていた。


「コタローよ、あそこに小さく見えるのが目的の坑道じゃ」


 リジャールさんはそう言って、前方を指差した。


「やはりそうでしたか。自分もそうではないかと思ってました。でも、ここから見る限りだと、結構開けた場所にあるのですね。少々意外でした」

「うむ。まぁそのお蔭もあって、魔物を食い止めるのには役に立っておるわい。やはり、戦闘となると、木々が邪魔するからの」

「確かにそうですね……」


 リジャールさんの言うとおりである。

 木々が密集していたならば、剣や槍といった長い得物を振るうには不利なのだ。

 坑道に魔物の押し留めるのは、そう簡単にはいかなかったに違いない。


(あそこが広場になっていたのは、不幸中の幸いだったのかもな……ン?)


 ふとそんな事を考えていると、入口周辺で待機する冒険者達の姿が俺の視界に入ってきた。

 人数にすると十数名といったところだろうか。

 この位置からだと姿がハッキリ見えないので、どんな容姿をした者達かまではわからない。

 だが、最前線で待機している事実を考えると、この村に来ている冒険者の中でも選りすぐりの手練れに違いない。

 とはいえ、それを喜ぶわけにはいかない。

 これが意味するところは1つ。

 危険区域という事に他ならないからだ。

 俺はすぐ魔法を発動できるよう、意識を戦闘モードへと静かに変えた。

 周囲を警戒しつつ進んでいると、カディスさんの仲間の1人が俺に話しかけてきた。


「アンタは確か、コタローさん、だったかな」

「ええ、そうですが」


 話しかけてきたのはドーンという名の男であった。

 歳は30前後といったところだろう。

 やや浅黒い肌をしたプロレスラーのようなガタイのオッサンで、黒い顎髭と口髭を豪快に生やしていた。

 顔立ちは彫りの深い中近東地域の系統で、ターバンでも巻いていれば、モロにそんな感じである。

 また、若干色褪せた感じのする鋼鉄の鎧と鉄の兜を装備しており、背中には鋭利な両刃の戦斧を担ぐという出で立ちだ。

 全体的な雰囲気を言えば、筋金入りの戦士といった感じの男である。

 冒険者として、かなり場数を踏んでいるのは間違いないだろう。

 なぜなら、色褪せた鎧の継ぎ目から見え隠れする鍛え上げられた肉体を見れば、本人が言わずとも、身体がそうだと語っているからだ。

 ドーンさんは俺の肩にポンと手を置いた。


「敵は毒の霧を吐いてくるから、今日はアンタの解毒呪文を頼りにしてるぜ」

「ええ、勿論です。毒に侵された時は任せてください。良く寝たので魔力は充実してますからね。今日は一杯唱えられますよ」


 俺は微笑みながら自信満々に答えておいた。

 こういうのはオドオドすると向こうも不安に思うから、このぐらい言っておけば安心する筈だ。


「オウ、任せたぜ。しっかし、アレだなぁ……こんな所でアマツの民の者と会うとは思わなかったぜ。俺も旅をしてて、たまに会うくらいだからな」


 う~ん……これにはどう答えたらいいのだろう。

 悩むところではあるが、とりあえず、アマツの民ではないので否定しとこう。


「えっとですね……勘違いされてるようなので言っておきますが、俺、アマツの民じゃないですよ。まぁその系統の血は、入ってるかもしれませんがね」


 するとリジャールさんが、勢いよく俺に振り向いた。


「なんじゃ、お主……アマツの民ではないのか?」

「エッ、そうなのか? てっきり、アマツの民かと思ってたぜ。じゃあ、どの辺の出なんだ? マルディラントか?」


 また答えにくい事を訊いてきたな。

 さて、どうするか。

 大きな嘘を吐くと後が面倒なので、とりあえず、目覚めた場所にでもしておこう。

 一応、あの辺りの事は大体わかるから、突っ込まれても何とかなる。


「俺の出身地はベルナ峡谷なんですよ」

「はぁ? ベルナ峡谷だって……。あんな岩山だらけの辺境の地に、町や村なんてあるのか?」


 ドーンさんは腕を組み、怪訝な表情になって首を傾げた。

 この反応は想定の範囲内である。

 ヴァロムさん曰く、ベルナ峡谷は魔物と岩山だらけで、人の寄り付かない土地と有名らしいからだ。


「ええ、ですが誤解がありますね。一応、ベルナ峡谷にはガナという小さな集落があるんですよ。そして、俺はその辺りに住む、とある人に拾われたもんでして……。つまり……まぁそういうわけです」


 今言ったガナという集落の名前は嘘ではない。

 実際に存在する集落である。

 ただ、このガナは普通の集落とは、ちょっと違う。

 なぜなら、ガナの住民達は、ベルナ峡谷にある岩山の洞窟で生活しているからだ。

 その上、外部との接触もごく稀なので、このマール地方でも知っている者はかなり少ない。

 ちなみにだが、なぜ、俺がそんな事を知っているのかというと、何度かヴァロムさんに連れられて行った事があるからだ。

 勿論、アーシャさんもこの集落の事は良く知っている。

 つまり、知る人ぞ知る集落なのである。


「そういえば……ガナから少し離れた所に居を構えておると言っておったな。あ奴は……」


 と、リジャールさん。

 この口振りだと、ガナを知っているようだ。

 あ奴とはヴァロムさんの事だろう。


「そうだったのか……すまないな、コタローさん。嫌な事を訊いちまって」


 ドーンさんがコメカミをポリポリかきながら、罰の悪そうな表情で謝ってきた。

 これは恐らく、拾われたという境遇に対しての反応だろう。

 だが俺の境遇は、色々と複雑な事情があるので、そんな事は些細な問題なのだ。

 気にしてたら負けである。


「ああ、別に構いませんよ。あんまりというか、全くその手の事は気にしてないので。だから、ドーンさんも気にしないでください」

「そうか、ならいいが……。まぁそれはともかくだ。今日はよろしく頼むぜ、コータローさん」


 ドーンさんはそう言って、俺の肩をバシバシと軽く叩いた。

 少し痛かったが、この人なりの元気づけなのだろう。

 と、その時であった。


「おい、入口付近の様子がおかしいぞッ!」


 先頭から大声が上がったのである。

 声を上げたのは、ネストールという名の男であった。

 この人もドーンさんと同様、鋼鉄の鎧と鉄の兜を装備する戦士である。武器は槍だ。

 見たところ、金と銀の奇妙な装飾の施された槍であった。

 もしかすると序盤の武器である鉄の槍ではなく、その上位武器なのかもしれない。

 また、ドーンさんのようなパワー型のムキムキではなく、細マッチョ系の戦士だ。

 ちなみに、他の2人とは違い、髭などは生やしてないが、鋭い目と引き締まった頬をしている。

 年は30前後だろう。

 強そうな顔つきの男である。

 それはさておき、俺達はネストールさんの声を聞き、前方に視線を向けた。

 すると坑道の入り口付近で、慌ただしい動きをする冒険者達の姿が目に飛び込んできたのだ。

 確かに何か様子が変であった。

 もしかすると魔物の襲撃があったのかもしれない。

 カディスさんの大きな声が響き渡った。


「向こうで何かあったみたいだッ。急ぐぞッ!」――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ