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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第四章 前略、王都オヴェリウスより

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Lv.140 洞窟の調査へ

   [Ⅰ]



 時間は少し遡る。

 これは、コタローがヴィザーク地区へと移動を始めてから、暫く後の話。

 その頃、ウォーレンは屋敷の応接室の椅子に腰かけ、1人で考え事をしている最中であった。


(……コタローとミロンの言っている事が本当ならば、門は既に開かれている可能性が高い。が……その門を開いたのは一体誰だ? 魔物か? それとも猊下の一団か? ……わからん。だが、何れにせよ、あの島はかなりの厳戒態勢を敷いているから、そう簡単に魔物はおろか、我等ですらおいそれと入る事は出来ない筈だ。一体どうやってあの遺跡に侵入したのだ……)


 コタローの話を聞いてからというもの、ウォーレンはそれを考え続けていた。


(しかし……魔導騎士や神官達に見つからず、遺跡の中に入る事などできるのだろうか? 守衛の魔導騎士達の様子を見る限り、侵入者はいないような雰囲気だった。となると、門を開いたのは猊下達の一団か……う~ん、わけがわからん。頭痛くなってくるな……)


 ウォーレンは困ったように溜息を吐き、椅子の背もたれに深く寄り掛かる。


(とりあえず、この件については判断材料が少ない。今は置いておくとしよう。しかし……コタローは一体何者だ。洞察力や思考力も凄いが、あれだけの腕を持つ魔法の使い手なら、このイシュマリアで少しは噂になってもよさそうだが……アイツの名前は聞いたこともない。しかも、話を聞く限りじゃ、有力貴族にも仕えていないみたいだ。まぁアマツの民みたいな外見だからかもしれないが、この国にもアマツクニ出身の魔導師やラミリアンの魔導師も極少数だがいる。だが、アイツは冒険者だと言っていた。本当なのだろうか……。出身はマール地方といっていたが……まぁいい……今から来る者達に訊いてみるのが早いか。ン?)


 と、その時、扉の向こうから女の声が聞こえてきた。


「ウォーレン様、アーシャ様達をお連れ致しました」


 そこでウォーレンは姿勢を正した。


「うむ、お通ししてくれ」


 扉はゆっくりと開かれる。

 使用人に促され、5名の者達が部屋の中へと入ってきた。

 入ってきたのは、アーシャとイメリア、そしてレイスにシェーラ、最後にラティであった。

 4人と1匹が部屋の中に入ったところで、使用人は扉を静かに閉める。

 ウォーレンは立ち上がり、恭しい所作でアーシャ達を迎えた。


「お休みのところを御呼び立てして申し訳ありません。ですが、早急にお伝えせねばならぬ事が出来たものですからな、ご容赦願いたい。さ、まずは、こちらの長椅子にお掛けになって下さい」

「わかりました」

「はい、では」


 全員が長椅子に腰を下ろしたところで、ウォーレンも対面の椅子に腰掛ける。

 ウォーレンはそこで話を切り出した。


「さて、皆さんをお呼びした理由ですが……実はですね、先程、アレサンドラ家とラミナス公使から私宛に書簡が届いたのですよ。それで皆さんを御呼びしたのであります」


 ウォーレンはそう言って、テーブルの上に茶色い巻物のような書簡を2つ置いた。

 それらには2つの印章が押されている。

 ラミナスとアレサンドラ家の紋章であった。

 4人は驚きの声を上げる。


「えっ!?」

「ほ、本当ですか!」

「なんと!」

「ようやくね」


 アーシャは書簡に目を落とした。


「ウォーレン様、読ませて頂いてもよろしいですか?」

「どうぞ、ご覧になって下さい」

「では早速」


 アーシャとイメリアは書簡に目を通しゆく。

 程なくして、アーシャが口を開いた。


「これによりますと、本人かどうかを確認をする為に、明日、アレサンドラ家の使いの者が来るみたいですわね。という事は、お父様の元へ向かうには、もう少し時間が必要なのですね」

「私のにも同じような事が書いてありました」


 ウォーレンは頷く。


「ええ、申し訳ありませんが、そういう事になります。ですが、アーシャ様達の証言内容が間違いないと確認されれば、通行許可証が降りるのにそう時間はかからないでしょう。まぁそんなわけでですな、あと数日、我が屋敷に滞在して頂くことになりますので、そこは我慢して頂きたいのです」

「我慢だなんて、そんな……。私達はウォーレン様に物凄く感謝しているのです。感謝しても足りないくらいです」

「そうですよ。私達がこうしていられるのもウォーレン様のお陰なのですから」


 アーシャとイメリアの返答を聞き、ウォーレンは安堵の息を吐いた。


「それを聞いて私も安心しましたよ。私ができるのはここまでですからな。ところで……アーシャ様に少し訊ねたい事があるのですが、よろしいですかな?」

「構いませんよ。何でしょうか?」

「……訊きたいのは他でもない、コタローの事なんですが……」

「コタローの奴、何かやらかしたんでっか?」


 ラティが口を挟む。


「いや、違う違う。そうじゃない。純粋に好奇心から訊きたいことがあるだけだ」

「そうですか……ちなみに、コタローさんの何を知りたいのでしょうか?」

「どういう素性の男なのか、わかりますかね。昨日、コタローと行動していて、それが少々気になったものですからな」

「素性……といわれましても、マルディラントで冒険者をしているという事くらいしか、私には分かりませんわ」


 どう答えるか、アーシャも悩んだが、とりあえず余計な事は言わないでおこうと考え、無難な返答に留めておいた。


「不審な点でもあったのでしょうか? コタローさんは怪しい方ではないと思いますよ。私はあの方と行動を共にしてましたので、それは断言できます」


 と、イメリア。


「ああ、そういう意味で訊いたのではありません。ただ……あれほどの腕を持つ魔法使いなのに、冒険者をしているというのが不思議だったものですからな。それでですよ」

「そうですか……。ですが、私もコタローさんの事はそれほど深くは知らないのです。私も兄を通じて知り合ったものですから……申し訳ありません、ウォーレン様」


 アーシャはそう言って、申し訳なさそうに頭を下げた。


「いやいや、お気になさらないでください、アーシャ様。本人から直接訊けば良い話ですからな。さて、それはともかく、私の話は以上になります。明日、使者が訪れましたら、また御呼びする事になりますので、その時はよろしくお願いしますよ」

「はい、ウォーレン様」

「こちらこそ、よろしくお願い致しますわ」――



   [Ⅱ]



 翌日、朝食を終えた俺は、ウォーレンさんとアーシャさんに適当な理由を告げ、ラッセルさん達との待ち合わせ場所へと向かった。

 ウォーレンさんには、ゼーレ洞窟の件について返事をしてくるとだけ言っておいた。

 するとウォーレンさんは、


「どういう決断を下したのか知らんが、あまり無理はするなよ」


 と言って、気楽に俺を送り出してくれたのである。

 魔の神殿に向かう途中、この話をしたので事情を察してくれたようだ。

 それからウォーレンさんは、


「ああ、それから、今日も事情があってミロンはつけてやれそうにない。どうする、案内人をつけるか?」


 と、訊いてきた。

 だが、昨日出歩いたことで街の移動にも慣れたので、俺は、


「いえ、街の構造も大体わかってきましたから1人でも大丈夫ですよ」


 とだけ答え、屋敷を後にしたのである。


   *


 話は変わるが、アーシャさんには昨日と同じ理由を話して、一応、納得はしてもらった。少し嘘を吐くことにはなるが、まぁこの際、やむを得んだろう。

 とまぁそんなわけで、俺は今日も辻馬車を使い、ラヴァナへと下ることになるわけだが……今日はお供が1匹いる。ラティである。

 今日はどうしてもラティに来てもらう必要があったので、昨晩お願いをしたのだ。

 で、来てもらった理由だが……ラティ曰く、ドラキー便の配達エリアということもあって、この辺りの地理には精通しているらしい。

 当然、ゼーレ洞窟の辺りもよく知っているとの事であった。

 しかも、普通の旅人が通らないような裏道も知っていると言ってたので、とどのつまり、ナビゲーターとして来てもらったのである。

 つーわけで話を戻そう。


   *


 辻馬車に揺られながら、朝日が降り注ぐラヴァナの街並みを、俺はぼんやりと眺める。

 城塞に遮られ、影となる部分が多い所為か、モノクロ写真とカラー写真を合成したかのような、なんとも言えない街並みが目に飛び込んできた。

 それは正に、城塞都市ならではといった、明暗の別れる光景であった。


(城塞のお陰で強固な守りが得られるけど、考えてみれば、日当たりが悪くなるんだよな。日本に住んでた時も思ってたが、安全と快適さはなかなか両立しないのかも。まぁしゃあないか……ン?)


 などと考えていると、イシュラナ大神殿の方角から、神官達の礼拝を告げる重厚なイシュラナの鐘が鳴り響いた。

 どうやら、もう集合時間になってしまったようである。


「あらら、鐘が鳴ってもうたやん。少し遅刻やな」

「だな。でも、城塞東門まであと少しだ。ラッセルさん達も少しくらい待っててくれるだろう」

「せやな。あの兄ちゃん、結構、心が広そうな雰囲気やもんな。ところでコタロー、今日はアーシャ姉ちゃん達についとらんでよかったんか? 上の方から使者が来るんやろ?」

「2人の確認をしに来るだけだろ。なら大丈夫だよ。それに、俺は両家に仕えているわけではないから、いようがいまいが同じさ」

「ふぅん。まぁ、ええわ。それはそうと、ワイの知ってる道を行くのはええけど、道中どうやって危険回避するつもりなんや? 敵は多分、ごっついのばかりやと思うで。ワイもここ最近、ゼーレ洞窟方面は厳つい奴等が多なってきたから、あまり行ってへんねん」


 俺はそこで、右手に持っている布にくるんだ細長いブツに目を落とした。


「ああ、それはな、コレを使うんだよ」

「実はワイ、それがさっきから気になっとったんや。なんなんやソレ?」

「へへへ、まぁ後でわかるよ」

「なんや気になる言い回しやな。まぁええわ、楽しみは後に取っておくわ」

「おう、楽しみにしててくれ」


 そんなやり取りをしつつ、俺達は進んで行く。

 暫くすると城塞東門が見えてきた。

 門に近づくにつれ、守衛の他に、ラッセルさん達の姿も視界に入ってきた。

 どうやら、少し待たせてしまったようである。とりあえず、着いたら謝っておこう。

 まぁそれはさておき、ラッセルさん達は昨日の打ち合わせ通り、馬車で来てくれたようだ。

 俺は馬に乗れないから、これで一安心である。

 ちなみにだが、ラッセルさん達の馬車は、ヴァロムさんのと同様、オープンカー仕様である。

 今日は晴れなので、日除けに屋根が欲しいところだが、まぁ仕方ないだろう。文句は言えん。

 と、ここで、御者の声が聞こえてきた。


「お客さん、城塞東門が見えてきましたが、門の前まで行きますかい?」

「ええ、お願いします」

「わかりやした」――

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