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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第三章 前略、王都へ

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Lv.105 泉での戦い

   [Ⅰ]



 建物の壁を背に、俺は入口の様子を窺う。

 安全を確認した俺は、手振りで中へ入る合図をラティに送る。

 そして、物音を立てないよう注意しながら、建物の中へと入っていった。

 ラティも俺に続く。

 建物の中に入った俺達は、20m程の通路を慎重に進む。

 その先は白く明るい部屋があった。

 俺は忍び足でその部屋に近づき、中の様子をそっと窺った。

 すると次の瞬間、うつ伏せになって倒れている2人の女性神官が、俺の視界に入ってきたのである。


(あの神官達も、さっきの奴に眠らされたみたいだな……。まだここに奴がいるかもしれない。とりあえず、室内を確認しよう)


 俺は周囲を警戒しながら、室内の隅々に目を向けた。

 一通り見回したところで、俺とラティはホッと安堵の息を吐いた。 

 なぜなら、目に付く物と言えば、周囲の壁に描かれた神秘的な女神の壁画と、奥の壁に設けられた扉だけだったからだ。

 あの怪しいローブ姿の者はどこにも見当たらなかったのである。

 俺は一息ついたところで、倒れている女性神官に目を向けた。

 ここから見る限り、2人の女性神官に怪我は無いようだ。

 また、身体が僅かに動いているところを見ると、呼吸はしているみたいである。

 多分、外の女性騎士達と同じで、眠らされているのだろう。

 と、そこで、ラティが耳打ちしてきた。


「し、死んどるんかな?」


 俺も小声で答えた。


「いや、呼吸はしているから、外の騎士達と同じで、眠らされているんだろう。ところでラティ、この奥はどうなってるんだ?」

「この奥は、多分、泉やないか。さっきの奴はそこやと思うで」

「泉か……よし、行ってみよう」


 俺は物音を立てないよう注意しながら、忍び足で扉の前へと向かう。

 すると扉に近づくにつれ、話し声が聞こえてきたのだ。

 扉の前に来た俺は、その話し声に耳を傾けた。


「なにを……」

「……きまって……あなた……ことだ……」


 話し声は男と女の声であった。

 だが、ハッキリと聞き取れないので、何を話しているのかが全く分からない。

 その為、俺は扉を少し開き、隙間から向こうの様子を窺う事にしたのである。

 俺は扉を3cm程開き、そこから中を覗き込む。

 狭いながらも向こうの様相が見えてきた。

 するとそこは、白く美しい石で造られた部屋の中心に、丸い泉があるという構図の四角い大きな部屋であった。

 泉の周囲には光る8本の柱が規則正しく立っており、それらの光が反射して泉は美しく輝いていた。

 その様子は、まるで泉自体が光を満たしているかのようである。

 またその他にも、ラベンダーのような芳しい香りも漂っており、非常に清潔感の漂う空間となっていた。

 隙間から見える部屋は、そんな、穢れの無い美しい所であった。

 だがしかし、それは普段ならば、と付け加えなければならない。

 なぜなら今は、そんなモノなど微塵も感じさせない事態が起きているからである。


(女性の方はともかく……なんなんだアイツは……魔物か?)


 俺の目に飛び込んできた光景……それはなんと、漆黒のローブを身に纏う何者かが、泉の中にいる美しい女性を威圧している姿であった。

 そして、泉の中の女性はというと、青褪めた表情を浮かべながら、ジリジリと後退りしているところなのである。

 ローブ姿の者は、後ろ姿しか見えないので、その表情は窺い知れない。

 また、女性は逃げ道を探しているのか、険しい表情で周囲を見回しているところであった。

 その緊迫した空気に、俺は生唾をごくりと飲み込む。

 と、その時である。

 ローブ姿の者が、不敵な笑い声を上げたのだ。


「ククククッ、幾ら見回したところで、周りは石の壁だ。逃げ道などはございませんよ、フィオナ様。さて、御覚悟はよろしいですかな。なあに、貴方には眠っていてもらうだけですよ。ただし、決して目覚める事のない、呪いの眠りですがね。クククッ」


 声を聞いた感じだと、ローブ姿の者はどうやら男のようだ。

 人間かどうかわからないが、とりあえずは男という事にしておこう。

 ローブ姿の男は捻じ曲がった杖を上に掲げた。

 先端に深紫色の水晶が付いた杖である。


「フィオナ様、何も心配しなくてもいいのですよ。痛くはありませんのでね。クククッ」


 と、その直後、フィオナと呼ばれた女性は、ローブ姿の男に向かい、呪文を唱えたのである。


「ギルラーナ!」


 女性の手から火炎が放たれ、ローブ姿の男はモロにそれを浴びる。

 だが……ギルラーナの炎を浴びているにもかかわらず、男は愉快そうに笑っていた。


「クククッ、この衣は攻撃魔法に対して耐性があるので、その程度の魔法など恐れるに足りませんよ。さて、では、もう眠ってもらうとしましょうか」


 女性が青褪めた表情を浮かべる中、男の持つ杖の水晶が、不気味に怪しく輝き始めた。

 またそれと共に、嫌な魔の瘴気も漂いだしたのである。

 直感的に、今の内に何とかしないと不味いと思った俺は、ここでラティに1つお願いをした。


「ラティ、奴と戦う事になるから、外で入り口を見張っていてくれ。誰か来たらすぐに知らせるんだ。良いな?」

「お、おう、わかった。コタローも、気ぃ付けなアカンで」

「ああ」


 ラティはそう言って、この部屋を後にした。

 するとその直後、ソーンのオッサンが小声で俺に話しかけてきたのである。


「コタローよ……我は、奴と戦うのをあまり薦めん。が、戦うのならば1つ忠告しておこう。奴の持つ杖に注意しろ。あれは恐らく、夢見の邪精を封じた呪われた武具だ。夢見の邪精に憑かれると身体を乗っ取られるぞ」

「おいおい……このタイミングでそれを言うか……」


 お陰で決心が鈍ってきた。

 だが、そんなやり取りをしている最中にも、扉の向こうに見える黒いローブ姿の男は、既に次の動作へと移ろうとしているところであった。


(チッ、不味い。あの子に杖を向けてやがる。もう悩んでる時間がない)


 俺はそこで魔法を行使する事にした。

 扉の隙間から右手を伸ばし、男に狙いを定める。

 そして、俺は呪文を唱えたのである。


「ファーラミ!」


 直径1m大の火球が男の背中に直撃する。

 火球は爆ぜ、男を包み込んだ。

 男の苦悶の声が聞こえてくる。


「グァァァ! こ、これは、ファーラミの炎!」


 この様子を見る限り、多分、少しはダメージがあったという事なのだろう。

 まぁまぁの攻撃力があるファーラミを選択して正解だったようだ。

 しかし……これで止めを刺せるほど、甘くは無いようである。

 なぜなら、奴自体がピンピンしている上に、炎も既に沈静化しつつあるからだ。

 炎が消え去ったところで、ローブ姿の男はこちらに振り向き、怒りの言葉を投げかけてきた。


「おのれェェ、何者だッ!」


 手を出した以上はやるしかない。


(すぐに魔法を行使できるよう、今の内に魔力分散作業をしておこう……)


 俺は魔力制御しながら扉を開き、奴の前に姿を現した。


「ただの通りすがりだよ。アンタさ、その女性を眠らせようとしてたみたいだが……眠らせて何するつもりだったんだ? 悪戯でもするつもりだったのか、この変態野郎」


 余裕のある言い回しで啖呵を切ったが、内心ビクビクであった。

 当然である。

 相手は得体の知れない奴だからだ。

 しかし、だからといって弱気を見せると相手を調子づかせてしまうので、この対応は止むを得んのである。

 どんな相手かわからん以上、必要な措置なのだ。

 いきなり、わけのわからん特技を繰り出されて酷い目に遭わない為にも……。

 俺がそんな事を考える中、ローブ姿の男はフードで覆い隠した顔を向け、こちらをジッと窺っていた。

 少しは警戒してくれているみたいである。

 とりあえず、余裕のある演技が功を奏したのだろう。


「フン……見たところ、魔法使い1人だけか……まぁいい。まずは貴様に呪いを施してやろう」


 ローブ姿の男は俺に杖を向けてきた。

 だがしかし!


「ファーラミ!」


 既に魔力分散作業を終えている俺は、そこで両手を奴に突きだし、ファーラミを2発お見舞いしてやったのである。

 ちなみに、2発の内の1発は杖を持つ手に向かって放っておいた。

 やはり、あんな話を聞いてしまったからには、無視することは出来ないからだ。

 放たれた2つの火の玉は、容赦なくローブ姿の男に襲いかかる。


「なッ、ファーラミを2発だと! グウォォォ!」


 ファーラミの直撃を受けたローブ姿の男は、勢いよく吹っ飛んでゆき、反対側の天井付近の壁に激突すると、床にドサッと落ちてきた。

 また、男が持っていた妙な杖も、今の衝撃で吹っ飛び、部屋の片隅をコロコロと転がっているところだ。


(よし、計画通り!)


 俺は内心ホッとしながら、そこで泉にいる女性に目を向ける。

 すると女性は、この突然の事態に、ただただ震え、呆然と眺めているだけであった。

 無理もない。

 俺も逆の立場なら、こうなっていただろう。

 色々と説明をしないといけないのかもしれないが、まだ戦いは終わっていない。

 その為、俺はローブ姿の男を注視しながら、追加のファーラミを放つ為の魔力分散をすぐに始めたのである。

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