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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第三章 前略、王都へ

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Lv.101 ガテアの広場

   [Ⅰ]



 ガテアの広場は、ドーム状の屋根で覆われた縦長の建造物であった。

 見たところ、学校の体育館2つ分くらいの広さは優にあり、中には天井を支える為の大きな丸柱が何本も立っていた。

 天井も高く、ドームの一番高い所で20mくらいはありそうな感じだ。

 以上の事から、かなり大きな建造物なのだが、広場には沢山の人々の他に、荷物等もあってゴタゴタしている。なので、それほど広くは感じなかった。

 おまけに、ザワザワとした話し声が至るところから聞こえる所為もあってか、酷く雑然とした雰囲気が漂っており、こんな場所にも拘らず神聖な感じが全くしないのだ。

 まるで、震災直後の避難所のような光景である。

 やはり不特定多数の人が集まると、宗教的な施設でもこうなるのだろう。

 ちなみに、このガテアという名前だが、ラティ曰く、この巡礼地の初代神官長の名前だそうだ。

 この人が広場を作るよう指示したので、その名前が付けられたそうである。 

 それはさておき、ラティの話だと、この広場での場所取りは早い者勝ちらしいので、俺達はまず、寝る場所を確保する事にした。

 そして、寝場所を確保したところで、広場の一角にある食事の配給場所へ行き、俺達は質素な晩餐にありついたのである。


   *


 話は変わるが、神官食は1人前につき2ゴルのお布施が必要であった。まぁ早い話がお布施という名の料理代だ。

 というわけで、俺は12ゴルを支払って6人分の神官食を購入し、外にいるレイスさんにも食事を届けたのである。

 それとラティの食事だが、今はルーヴェラで調達しておいたバンバの実という果物を食べているところであった。

 一応、人間の食べ物もOKらしいのだが、ここのバートン族は基本的に、バンバの実を主食にしているそうだ。 

 ちなみにだが、バンバの実はバートンだけでなく人間も食べる果実である。

 形は洋ナシに似ており、林檎のように赤い色をしているのが特徴だ。

 ついでに言うと、食感も林檎そっくりである。

 だが、味はプラムのような甘酸っぱい感じである為、食べ慣れない俺からすると、不味くはないが、少しギャップを感じる果物なのであった。

 つーわけで、話を戻そう。


   *


 食事を終えたところで、俺はアーシャさんの一時帰宅に付き合う事となった。

 転移場所を探すべく、俺とアーシャさんが外に出ると、辺りは既に、満月の光が仄かに照らす薄明の世界となっていた。

 とはいえ、月明かりがあるので、そこまで視界は悪くない。

 周囲を少し探すと良い場所が見つかった。

 神殿からやや離れた所に、人の数倍はある大きな岩があったのである。

 俺達はとりあえず、そこへと移動した。

 そして、周囲に誰もいないのを確認したところで、アーシャさんは風の冠を使い、空へと舞い上がったのである。

 まぁそんなわけで、暫しの間、俺は待つ事になるわけだが……今回は予想外にも、かなり早くアーシャさんが帰ってきた。

 時間にして10分くらいだろうか。

 いつもと比べると、20分くらい早い、お帰りだったのである。


「お疲れ様でした。今日はえらく早いですね」

「ええ、今日はお兄様にだけ会ってきましたわ。お母様は、配下の夫人達との晩餐会でお忙しいようなので」

「へぇ、晩餐会ですか」


 さぞや良いもん食ってんだろう。

 羨ましいところだ。


「ところで、ティレス様は何か言っておられましたか?」

「そういえば、これをコタローさんに渡しておいてほしいと言われました」


 アーシャさんはそこで、アメジストのような石が取り付けられたネックレスのような物を俺に差し出した。


「これは?」

「お守りのアミュレタンです。敵の魔法に掛かりにくくなるそうなので、これを持っていた方が良いと言われたのです。一応、皆さんの分も貰ってきましたわ」


 懐かしい名前がまた出てきた。

 ゲームでは結構お世話になったアイテムである。

 ウィザレスやパサートといった魔法に掛かり難くなる効能があった筈だ。

 派手な効果はないが心強いアイテムである。

 遠慮せず貰っておくとしよう。


「ありがたく頂戴いたします。他には何も言ってませんでしたか?」

「いいえ、何も。他は、今現在の場所を訊かれただけですわ。でもお兄様ったら、私がピュレナに到着したと言いましたら、羨ましそうな顔をしてましたよ」

「ティレス様も執務に追われて、毎日が忙しいでしょうからね」


 ここ最近は執務室から出られない日々が続いているとティレスさんも言っていたので、そりゃ羨ましくもなるに違いない。

 まぁそれはさておき、用は済んだので、そろそろ戻るとしよう。


「さて、それじゃ戻りますか」

「ええ」――



   [Ⅱ]



 ガテアの広場に戻ると、サナちゃんが笑顔で俺達を迎えてくれた。


「ご苦労様でした。コタローさんにアーシャさん」

「ごめんね、待たせちゃって」

「いいえ、全然待ってませんよ。今日はコタローさん達も早かったので」

「で、何か目新しい情報とかあったの?」


 シェーラさんが小声で訊いてくる。


「いえ、それは無いんですが、代わりにちょっとした物を貰ったんですよ」


 俺はそこで、アーシャさんに目配せをした。

 アーシャさんは頷き、2人にお土産を差し出した。


「これはアミュレタンです。お兄様から皆さんの分を頂いて参りましたので、遠慮せずにお使いください」


 2人は顔を見合わせる。

 イアちゃんは慌てて俺達に頭を下げた。


「あ、ありがとうございます、アーシャさん。レイスとシェーラの武具の他に、このような物まで頂けるなんて、もはや、お礼の言葉すら見つかりません」

「イアさん、そんなに気にしないでください。お兄様は当然の事と思って、私に持たせたのですから」


 素性を知らないティレスさんは、イアちゃん達の事をアーシャさんの護衛と考えているので、そう言うのは当然だろう。

 とはいえ、いつかは本当の事を言わないといけない日が来るに違いない。

 まぁそれはさておき、ラティの姿が見えないので、俺は2人に訊いてみた。


「ところで、ラティはどこに行ったの?」

「そういえば食後の散歩に行ってくるとか言って、さっき外に出て行ったわよ」


 と、シェーラさん。


「外に行ったのか」


 俺は広場の入り口に目を向ける。

 するとそこで、ラティがタイミングよく入口から姿を現したのだった。

 ラティはパタパタと羽ばたきながら、こちらへとやってくる。


「お、戻ってるやん。何の用やったんか知らんけど、とりあえず、お疲れさん」

「ラティは散歩に行ってたのか?」

「ま、そんなとこや。それはそうとやな……」


 するとラティは俺の肩に止まり、耳打ちをしてきたのであった。


「コタロー……エエ場所が、ここにもあんねん。どや、ちょっと外で話でもせぇへんか。今度は大丈夫やさかい」


 全てを察した俺は、そこでサッとウインクをしてラティに合図を送った。

 他の3人は、そんな俺達のやり取りをジッと見ている。

 だが、これは機密事項なので、当然、彼女達のいるところで話す事は出来ない。

 その為、当局はこの瞬間を持ってミッションの開始となるのだ。

 俺は3人に告げた。


「あのですね。ラティが俺に相談したい事があるらしいんで、外でちょっと話してきます。ですから、少し待っていてもらえますか」


 アーシャさんは首を傾げる。


「ラティさんが相談?」

「ごめんな、アーシャねぇちゃん。コタローにどうしても相談したい事があるんや」

「そうですか。わかりましたわ」

「まぁそういうわけなんで、ちょっと行ってきます。では」


 そして、俺とラティは、ガテアの広場を後にしたのである。

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