桜散る
「アンタ何でそんなとこ座ってるの?其処は俺のお気に入りなんで他行ってよ?」
田舎にそぐわない銀髪の男はいつの間にか目の前に居て理不尽な事を云いながら此方を見下ろしてきた
モデルでも出来そうな整った容姿なのに勿体無いな…この態度ではイケメンが台無しだと内心思った
「嫌です私も此処お気に入りなんです」
桜の幹に寄りかかったまま口に出して男を睨み返した瞬間に目に飛び込んできたのは彼の腕に抱えられた有名メーカーのスケッチブックである
表紙の端にかかれた桜マークが無かったなら気にもとめない代物であるが表紙のアレは間違いなく自分のスケッチブックに目印でつけたマークではなかろうか?
「そのスケッチブック…なんで貴方が?」
疑問を口に出しただけなのに男の顔は一気に強張った
「俺のだけど?」
偶々同じ箇所に同じマークを付けるなんて中々考えられないが彼の物の可能性も0ではない
せめて中身を確認したいところである
「私のスケッチブックを探しているんです
実は12年前に此処に置いていってしまったんですけど
そのスケッチブックの表紙のマークが私の物にそっくりで気になってしまって…中身を確認させて頂けませんか?」
おずおずと彼をみるがやはり表情は強張ったままである
「確かにこれは12年前に姉が拾ったスケッチブックだけど今は俺のだから見せたくない…アンタの物だって証拠が他にないんだったら見せたくないかな?個人情報ですからオバサン」
オバサンさんと言い放った彼は冷ややかな笑みを浮かべていてイラッとしたが怒ったら敗けだと思った
「そうですか…お姉さんに逢わせて頂けませんか?もしかしたら12年前に私と此方で逢っていた方かも知れないんです。私あの日に此処で声をかけてくれた女の子に酷い事をしてしまって…謝りたくて来たんです。もしかしたらお姉さんかも知れないし、違っていても女の子の子について何か知ってるかも知れない。」
彼は冷ややかな笑みを浮かべたまま刺すように此方を睨んでいる
「そんなの今更すぎ…今更謝るとかいらなくない?その子アンタの事もきっと覚えてないんじゃない?仮に姉がアンタの逢いたい女の子だとして俺は逢わせたくないしアンタは絶対に逢えない」
絶対に逢えないとは?まさか…そんな…
「死んだんだ…俺が殺した…」
呟いた彼に私は言葉を失ってそのまま時が止まってしまった様な感覚が辺りを包んだ




