第二十七章 天幕の下の世界の真相
大厅の内部には、想像していたような暗闇も血の臭いもなかった。
そこに満ちていたのは――
極限まで研ぎ澄まされた冷たさと、息を呑むほどの厳粛さだった。
無数の巨大な晶壁が、淡い青い光を放ちながら周囲を取り囲んでいる。
それらが連なって形成するのは、巨大な穹窿だった。
その中央。
そこには、百丈もの大きさを持つ「天体模型」が宙に浮かんでいる。
無数の光の糸が複雑に絡み合い、それぞれが互いを結びつけていた。
だが、よく見れば――
それは星空などではなかった。
修仙界に存在する億万の生き物。
その命運。
霊気の流れ。
そして因果の線。
それらすべてを、完全に編み上げた巨大な三次元ネットワークだった。
網の中では、無数の光点が明滅している。
そして、次々と消えていく。
その一つ一つの光が消えるたび――
下界にある修仙門派が一つ滅びる。
あるいは、どこかの大能修士が飛昇する。
そんな世界の変化が、ただの一つのデータとして、この巨大な網の中へ記録されていた。
そして。
その巨大な網の最上部。
そこには、いくつかのぼんやりとした影が浮かんでいた。
その身体から放たれる高次元の威圧は、ただ見ているだけで神魂を震わせるほどだった。
彼らは高みに座し、網全体を見下ろしている。
まるで――
冷淡な牧羊者のように。
「これが……」
墨三はその場に立ち尽くした。
「これが、上宗連盟の背後にある真実……?」
彼女の手にあった歯車羅盤は、完全に動きを止めていた。
顔から血の気が引いている。
これまで何度も「漏洞清理工」として仕事をしてきた。
だが――
この世界そのものが牧場として飼われ、その底層コードに成り果てている光景を、実際に目にしたのは初めてだった。
晏清は重剣を強く握り締めた。
指の関節が、力を込めすぎて白くなる。
彼女はようやく理解した。
なぜこの世界の修仙者たちが、どれほど努力しても上宗による搾取と収奪から逃れられなかったのか。
それは――
この規則が生まれた、その瞬間から。
彼ら自身が、すでに網の中で飼われる牛や羊だったからだ。
「修仙は、天に逆らうためのものじゃない」
終夜の声は、波一つないほど静かだった。
「奴らが、もっと効率よく刈り取るためのものだ」
その目の奥だけが――
冷たい炎を燃やしていた。
終夜は一歩前へ進む。
そして、そのまま巨大な光網の中枢へ向かって歩いていった。
その瞬間。
終夜が中枢へ近づいた、まさにその時だった。
穹窿の上に浮かぶ、いくつかの高次元の影が――
何か、決して許容できない「異物の侵入」を察知したかのように動いた。
そのうちの一つが、ゆっくりと目を開く。
次の瞬間。
冷たく、巨大な声が、三人の識海の中で直接炸裂した。
「低次元の漏洞が――」
「神の眼を覗き見るとは」
「――死をもって償え」
轟――!
恐ろしいほどの降次元攻撃の威圧が、天から一気に降り注いだ。
核心大厅を構成していた巨大な晶壁が、一瞬で耳をつんざくような悲鳴を上げる。
空間そのものが――
一枚一枚剥がれるように、砕け始めた。
高次元存在から直接叩きつけられる威圧を前に。
墨三の膝から力が抜けた。
そのまま、ほとんど地面へ膝をつきかける。
晏清も低く呻いた。
護身の気場が一瞬で大きく押し潰され、口元から一筋の鮮血が流れる。
しかし――
終夜は違った。
彼は背筋を伸ばしたまま、微動だにしない。
一歩も退かなかった。
むしろ――
手にした刃のない鉄剣を、ゆっくりと掲げる。
その視線は、正面から高次元の影を射抜いていた。
そして。
その口元に、狂気すら感じさせるほど決然とした笑みが浮かぶ。
「神だと?」
「ただ、少し長く生きているだけの――」
「太古のコードにすぎない」
終夜の声が、静かに響いた。
「今日、俺が――」
「お前たちを……フォーマットしてやる」
言葉が落ちる。
その瞬間。
終夜は体内に残されたすべての因果の残片を、一気に叩き込んだ。
同時に――
墨三の手にあった「論理鍵」も。
巨大な光網の最底層にある核心へと、同時に打ち込まれた。




