第二十二章 風雪の中の必殺、そして網を引く
轟――!
祭壇の前方に広がる虚空が、二つの凄まじい力の衝突によって激しく歪んだ。
荒れ狂う真元の奔流が、まるで津波のように四方へと広がり、周囲に残されていた石柱を一瞬で粉々に砕いていく。
晏清は境界において、上宗の因果監察使である韓無咎との間に無視できない差がある。
それでも彼女は、重甲と重剣が持つ絶対的な重量を頼りに、傷を負うことすら厭わず正面からぶつかった。
そして、韓無咎が渾身の力を込めて放った黄金の戦槍を、力ずくで三寸ほど弾き逸らした。
「身の程知らずの狂女め!」
韓無咎の顔色がわずかに変わる。
次の瞬間、彼は晏清の肩へ向けて掌を叩き込んだ。
元嬰初期の真元に凄まじい殺意が絡みつく。
今の晏清がまともに受ければ、死ぬか、重傷を負うか。
だが――
その瞬間。
冷たい剣先が、何の前触れもなく空間を突き破った。
「お前の相手は、俺だ」
終夜の声が、韓無咎の耳元で響いた。
その手に握られた刃のない鉄剣には、華麗な剣気など一切ない。
ただ、極限まで研ぎ澄まされた精度と、因果そのものを押さえ込むような力だけがあった。
鉄剣は寸分の狂いもなく、韓無咎の真元の流れが最も薄くなっている肘関節の一点へ叩き込まれた。
――バキッ!
乾いた骨の砕ける音が、風雪の中に異様なほど鮮明に響いた。
「ぐっ……!」
韓無咎が呻く。
真元の流れが一瞬で滞り、振り下ろしかけていた掌風を途中で引き戻さざるを得なくなる。
そのまま数歩、後方へとよろめいた。
そこで初めて、韓無咎は気づいた。
神枢の逆流。
そして、因果逆流。
その二重の反噬によって、もともと円滑に巡っていた自分の元嬰の力が、今ではまるで穴だらけの器から水が漏れ出すように、至るところから流れ出している。
そして終夜の剣は、そのたびに自分の真元が崩れて生じた裂け目を、寸分違わず突いてくる。
「お前……一体、俺の霊脈に何をした?!」
韓無咎は歯を食いしばった。
その目にはついに、本物の恐怖が浮かんでいた。
「何もしていない」
終夜はゆっくりと鉄剣を引いた。
その表情は、水面のように静かだった。
「俺はただ――」
「お前たちが高みに立ち、他人の因果を好き勝手に奪ってきた、その法則を……」
「そのまま、お前たちに返しただけだ」
言葉が途切れるより早く。
晏清は一息たりとも休むことなく、重剣を両手で高々と掲げた。
体内の真元が、燃え尽きる寸前まで燃え上がる。
そして、一歩も退かぬ決意をその身にまとい――
上段から、重剣を一気に振り下ろした!
「やめろ――!」
韓無咎が凄まじい声で叫び、最後に残された金丹本源を燃やして抵抗しようとする。
だが――
もう遅かった。
周囲の虚空に残されていた因果の鎖が、一斉に締め上げられる。
韓無咎の身体は、その場から一歩も動けないほど完全に拘束された。
次の瞬間。
天地を揺るがす轟音が響き渡った。
重剣が護体罡気を容赦なく叩き砕き――
高みに立っていた因果監察使の身体を、真っ二つに断ち割った。
鮮血が、白い雪を赤く染める。
あまりにも鮮烈な、深紅だった。
韓無咎が陨落した瞬間。
彼に付き従っていた暗金色の長袍をまとった護法たちは、たちまち混乱に陥った。
晏清の冷たい殺意。
そして終夜が何気なく弾き出した因果の銅銭。
その二つに押さえ込まれ、彼らはもはや隊列を維持することすらできない。
たちまち散り散りになり、我先にと逃げ出していった。
……
しばらくして。
祭壇の前には、束の間の静寂が戻っていた。
風雪は依然として激しく吹き荒れている。
だが、遠くの夜空では、天枢城の灯火が少しずつ消えていた。
その代わりに広がっていくのは――
嵐の前触れを思わせる、異様な静寂だった。
いつの間にか。
聞風者が盲杖を手に、暗闇の中からゆっくりと姿を現した。
彼女は、次第に静まりつつある因果の法則を感じ取り、口元に驚嘆の笑みを浮かべる。
「韓無咎が死んだことで、上宗連盟が北境で何十年もかけて築いてきた因果の網は……これで完全に断ち切られた」
「今日から天枢城は、名実ともに――無序の地になるでしょうね」
終夜は血に染まった鉄剣を、再び腰へ差し戻した。
だが、その視線はさらに遠く――北の彼方へ向けられていた。
そこには、より高く、より深い雲がかすかに見えている。
まるで、この世界の最も核心にある秘密を、その奥深くに隠しているかのようだった。
「これは、始まりにすぎない」
終夜は淡々と言った。
「天枢城は、あいつらの網にある一つの節点にすぎない」
「行こう」
「次は――本当の棋手がどんな奴なのか、見に行く」
晏清は重剣を収めた。
そして、何も言わず終夜の隣に並ぶ。
二人は振り返らなかった。
漫天の風雪を正面から受けながら――
再び、北境の果てへ続く旅路を歩き始めた。




