1 手紙
「くそ! なんでこんな事に!」
天界の王であるディーノは、思わず怒鳴る。
手にしていた手紙がぐしゃりと音を立てて縮んだ。
手紙を握りつぶしたことに、気がつかないほど、手紙の中の内容はディーノにとって衝撃的だった。
書かれていたのは、“末娘のシェリーシェが、人に悪さをしているから討伐をする”とのことだった。
天界の次期王であるため、仕事を見習い、手伝っていた長男がびっくりしたように見ているが、そんなことも気にしていられなかった。
「どうされたのです? 父上」
長男のレオンは思わずという風に聞く。それは自分の父がいつもと違っていたから。
神界の主であり、神々と一緒に世界を作った父は、創造の神として知られ、どんなことがあっても滅多に取り乱させない。それが、手紙を読んだだけでこの取り乱れる様はただならぬ状況を意味していた。
「……レオン、シェリーシェ以外の家族全員を呼んできてくれ」
「っ!? はい」
なんとか冷静に戻り、ディーノは言った。
年に一回会えるかほどに忙しい家族を呼ぶと言われ、レオンはすぐに駆け出す。
羽を使って、空を駆け巡る。
「レオン様!?」
「いったいどこへ?」
通り過ぎた者たちがびっくりしたようにざわめくが、レオンの耳には入ってこなかった。
(『シェリーシェ』私の妹……父上がわざとシェリーシェの名前を外したことを見ると、あの手紙にはシェリーシェのことが書いてあるに違いない……どうか、どうか無事でいてくれ……!)
飛びながらレオンは祈った。
◇◇◇◇◇◇
(シェリーシェ……家族の誰よりも人間が好きで、ちょくちょく天界を離れて人界に行き、手伝っていた……わたし娘。なにがあったのだ?)
最近は連絡が来ないから、心配して、一緒に行動していたシェリーシェの親友であるエミリアに報告で教えてもらっていたが……そんなことは一切なかったのに……。
レオンがいなくなった後の書斎では、いつもより部屋が冷たく、暗かった。
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