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20 釣りを始めましょう

 何でこれがここにある!?

 

 最初の蛍火の契約石もよく分からない出現の仕方をしていた。

 だけど、これは流石に想定外が過ぎるぞ。

 

「緋鞠、それどこに……」

「お父さんの金庫。昔、私にだけ開け方教えてくれてたから」


 義父さんの? って事は母さんの物じゃなくて。

 

「お母さんが付けてたのかな?」


 緋鞠の生母の物か。


「うーん、これも取っておこうかな……お母さんの物って殆どないし」

「そうなのか?」

「うん。お父さんが処分しちゃったみたいで。顔も知らない」


 それは、何というか徹底している。

 母さんはあんまり写真を残していなかったと少し悔いるように言っていたのとは対照的。

 

「さ、続き続き。今日である程度目途を付けちゃいたいし」

「そうだな」


 そう言いながら俺はその契約石らしきものに触れる。

 ……嘗て感じたような熱は無い。

 冷え切った、ただの石だった。

 

 偶々似ている石だったのかそれとも。

 ――契約が切れてしまったのか。

 

「拓郎?」

「何でもない」


 探索者だって明かしたら、このアクセについても調べさせてもらおう。

 今優先すべきは、あの襲撃者の件だ。

 

 一仕事終えた後、寝屋にメッセージを送る。

 

 さっき見つけた第三研究所の概要。

 これを上手く使えばつり出せるのではないかと。

 

『丁度良い』


 続けてのメッセージ。

 

『今度のフォーラムで作った探知機の発表をする。そこでこの話をすればそこそこ広まるはず』


 なるほど。

 フォロワー数一桁の俺のSNSで拡散するよりは効果がありそうだ。

 

『いつ?』

『来週末』


 ……普通こういうのってもっと事前に準備するものでは?

 

『欠席者が出たから、その穴埋め』


 欠席者……このタイミングでとなるとどうしても以前に聞いた行方不明の話が頭を過る。

 寝屋以外も狙われている人たちは少なくない。

 

 この釣りが効果を発揮できればいいんだけど……。

 

「戦力が問題だ」


 監視が無い今のうちにダンジョンを探索して少しでも戦力を整えたい。

 となると明日はダンジョンに籠るか。

 

 後3つ☆1ダンジョンを攻略出来ればEランクへの昇格条件を満たせる。

 寝屋の探知機でユニークモンスターを避ける事がある程度現実的になった。

 それを踏まえれば昇格を前提に蛍火のレベルアップをするのもアリか……?

 

 緋鞠の分を残して後は全部蛍火に注ぎ込む。

 

 確実に一番伸びしろと成長率が高いのは蛍火だ。

 

 ジャイアントビートルも足を引っ張らない程度に強化して……昇格したら☆2ダンジョンの探索を本格化させる。

 

 そうすればより戦力を強化できるはずだ。

 

「よし」


 寝屋にメッセージを一つ。

 

『明日はダンジョンに潜ろう。向こうが監視を緩めているうちに戦力を整える』

『りょ』


 しかし、ダンジョンの探索でドロップ任せなのはちょっとリスキーだな。

 

『寝屋は組合のショップ使ったことある?』


 召喚石やらスペルリングやら。

 探索者から買い取った品々を販売しているコーナーがあるみたいだけど俺は使ったことないんだよな……。

 

 精々がユニークモンスターと遭遇したあの時の準備で買い物した位。

 

 何せ、売る程余裕が無く。買うほどの余裕も無い。

 

 結果として縁が無い。

 

『ある。がーちゃんはショップで買った』

『ちなみに幾ら?』

『ランク2だから百万ちょい』


 どこからそんな金出てきたんだと思えば、懸賞論文で稼いだらしい。

 こいつ、マジで頭いいんだな……。

 

「百万か……」


 召喚石はやっぱ高いな……ランク1のマリオネットでもいい値段したし……。

 せめてスペルリングくらいは十個揃えたい。

 

 俺達と襲撃者で唯一と言っていいアドバンテージは手数の違いだ。

 今回みたいに遠隔で襲ってくるなら、その時点でモンスターの枠が一つ潰れる。

 

 対してこちらは10層以前であっても召喚できるのは四体のモンスター。

 数だけなら四倍だ。

 

 そして俺と寝屋でスペルリングの数も最大で倍。

 

 こちらが二人というのを活かさない手はない。

 

 その意味で言うと寝屋にも後八個リングを用意してもらいたいけど……。

 

『後さスペルリングの練習しない?』

『言わんとすることは分かる』


 無理とゆるきゃらが両手を交差させたスタンプを連打してきやがった。

 

『どんくさいから全然当たらない』


 説得力があるな……。

 

 だがサンドストームみたいな広範囲のスペルなら狙いが適当でもいけるんじゃないか?

 

 そうして一週間。戦力を整え、襲撃者に対抗する準備をする。

 

「……ねえ拓郎」

「んあ?」


 ちょっとうつらうつらしていたところに緋鞠から声をかけられて意識が覚醒する。

 

「寝屋ちゃんとの噂なんだけどさ」

「収まって来たか?」


 75日にはまだ早いけどな。

 

「二人して最近眠そうにしているから、毎晩毎晩夜のプロレスしてることになってる」

「おう……」


 そういう緋鞠の眼のげんなりしていた。

 身内のそんなうわさ話を聞かされていたらそんな顔にもなろう。

 

 言うまでも無く、緋鞠は俺が毎晩家にいるのをわかっている。

 

「……暇なのか、うちの学校」

「っていうか多分誰かが悪意を持って広めてる感じ。寝屋ちゃん可愛いのに頭良くてちょっと嫉妬されてたし」

「その二つって、別に相反する属性じゃないだろ……」


 女子の仲は良く分かんねえな……。

 

「兎に角、あんまり噂に燃料投下しないで欲しい。私がいくら否定しても信じてくれないんだよ……あと、重度のブラコンと見られ始めたのがちょっと腹立つ」


 この件で緋鞠も相当ストレス溜めてるな……。

 

「大丈夫だ。近いうちに片が付きそうだから」

「ほんとぉ?」


 緋鞠の中ではストーカー事件だから、そんな簡単に解決するかという疑念の眼差し。

 

「少なくとも寝屋の寝不足は解消されるな。明日論文の発表するからちょっと追い込んでるんだと」

「はー、ほんと頭いいんだね寝屋ちゃん」

「マジで将来的にノーベル賞とか取るかもしれん……」


 ノーベルダンジョン賞なんてものが出来たらの話だけど。

 

「で、何で拓郎は寝不足なの?」

「寝不足っていうかちょっと今週バイト入れすぎて疲れたんだよ」


 二日で1ダンジョン攻略みたいなペースでやってたからな。

 ダンジョンの中を全力で駆け抜け、フロアマスターを倒し。

 興味深い物を見つけた寝屋を引っ張り、データを取ろうとする寝屋を担ぎ。

 ユニークモンスターがいないことを確認し、念のため襲撃者を警戒しながらダンジョンマスターを倒し。

 

 おかげで、トータル3ダンジョンの攻略。

 余剰魔石は80グラムになったしスペルリングもいくつか増えた。

 

 後は寝屋とどういう風に使うかの作戦を立てたりしていたからちょっと睡眠時間が犠牲になった。

 

 だが何より大きいのはEランクへの昇格条件を満たした。

 後は申請して試験を受ければ昇級だけど……流石にそこまでは時間が無かったな。

 

 来週昇格試験を受けられたら……いや、ダメだ。予定がある。

 

「来週緋鞠の検診だろ? その頃には少し暇になってるはずだから。今度は置いていくなよ?」

「分かってるってば」


 前回の検診で置いて行ったことを擦るとすねたように緋鞠は唇を尖らせた。

 もー心配性なんだからとぶつぶつ言いながら自分の部屋へと戻っていく。

 

 そう、明日だ。

 明日を乗り越えれば……きっとこの一件も解決しているはず。

 

 さあ。

 いい加減にこの騒ぎの黒幕を釣り上げてやろう。

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