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18 攻守逆転

―――――――――――――――

 9月12日 昼

  探索者組合受付

―――――――――――――――


「いない?」

「はい。組合側で調査を行いましたが、藤島様が予約していたダンジョンに入場した者はいませんでした」


 ダンジョンが消滅しても姿を見せない襲撃者。

 だが少なくとも入場はしているはずだった。

 

 だから俺達は組合に訴え出て、そいつを特定しようとしたのだが……。

 

「いや、でも確かに……」

「人型のモンスターと見間違えたのでは? 魔法らしきものも使ってきたとなると……ゴブリンシャーマン辺りが☆1ダンジョンでは出現しますね」


 あいつがゴブリン? だとしたら随分と鍛え直したな……。

 

「こちらの映像をご覧ください」


 そう言って通行人にモザイク処理のかけられたダンジョン入り口が表示される。

 

「藤島様達が入場、そして退場までの時間は外部で約一時間。その間侵入どころか近寄った人物さえいません」


 多少荒い画像だが、その程度は分かる。早送りされて、見ていても誰もダンジョン入り口に近寄ろうともしない。

 当たり前と言えば当たり前。

 

 探索者以外にとってはただただ危険な場所。好んで近づきたくも無いだろう。

 

「ダンジョン消失でも現れなかったという事は、やはりモンスターだったと考えるのが自然です。安心されて良いと思いますよ」

「ダンジョンマスターを倒した後に、ですか?」

「稀にですが、そのケースは確認されています。偶然モンスターが転移門を潜った時に発生するようですね」


 事実として、入場も退場も確認できないのならば別の探索者が入ってきたのは考えにくい。

 その結論は至極当然だし、理解もできる。

 

 だけど事実として、俺達は襲撃を受けた。あれがモンスターだったというのは……やはり考えられない。

 自分たちがそう確信していても、トリックが分からない。その状況下で強弁しても、向こうの心証が悪くなるだけだろう。

 

「あっ……」


 終わりかけた映像の最後。

 俺達が飛び出してきた直後だ。

 

「カラス……」

「ああ。偶にあるんですよ。犬とか猫とかがダンジョンに紛れ込むの。さっきの転移門と一緒ですね。偶然潜ってしまうみたいです」


 偶然……いや違う。

 あの時の感覚、カラスに誰かが融合しているのだとしたら。

 

 例えばカラスにブレスレットを持たせて、遠隔でモンスターを召喚する。

 出来るか……? 可能な気がする。

 

 だとしたら、融合したカラスがダンジョンに侵入して、モンスターを召喚した。そんなふざけたことが可能になる。

 

「ありがとうございました」

「いいえ。また何かあったらご相談ください」


 組合の受付嬢にお礼を言って俺は受付を後にする。

 

 相手の細かな手口はどうでもいい。

 問題は――これが出来るとなると俺達は相手の尻尾を掴む事さえできないという事だ。

 

 こんな風に遠隔で襲撃できるんじゃ、撃退したとしても捕まえられるのはカラスが精々。

 モンスターを倒し続ければ相手にも少なくない出費を強いられるけど……相手の資金が尽きるよりも俺達の神経が参ってしまう先じゃないか。

 

「どうする……?」


 組合に、この融合能力の事も全部ぶちまけてカラス越しに狙われていると訴え出るか?

 ……難しいな。現状俺の感覚的な話以外に証拠がない。

 せめて何か、形に残る物があれば。

 

「たくろー。どうだった?」


 駆け寄ってきた寝屋に手のひらを上に向けてさっぱりとジェスチャー。

 ある程度予想していたのか表情を曇らせる。

 

「ダンジョンの入り口以外から入場する方法があるのかな……?」

「そうか、その可能性もあったのか」


 だけど、違うだろうな……。今にして思えば、二体目のモンスターはいなかったのではなく、最初からいたのだ。

 マリオネット。あれと融合していれば俺が蛍火としていたようにスペルを使うこともできるだろう。


「たくろーは違う考え?」

「多分カラスだ」


 融合能力を使った遠隔召喚の可能性を告げると、寝屋は何か考え込んでいるようだった。

 

「……たくろー。例の魔力測定してモンスターの分布分かる奴。ちょっと今から組合に申請だしてくるー」

「急だな」

「ちょっと思いついたことがある。けど、それを実行するには組合に私が作った検知方法の性能を見てもらわないとダメー」


 現物と、前々から用意していたらしい論文を一度取りに戻り、組合にダンジョン関係の発明として申請の手続きを行い。

 諸々を終えて再度寝屋の部屋に。

 

 最近ここがすっかり作戦本部だな。

 

「たくろー。蛍火ちゃんに融合を使ってみて」


 予備の探知機を構えて寝屋がそういう。

 何をしようとしているのかはさっぱりだが……頭脳担当の言うとおりにしよう。

 

「……うん、やっぱりー」


 何か確信を得たのか。寝屋がうんうんと頷く。

 説明を求める俺と蛍火の視線に応じて、寝屋は指を一本立てる。

 

「人間にも魔力があるのは分かるー?」

「そりゃ当然」


 だからこそ緋鞠は魔力欠乏症なんてものになっている訳だし。

 

「モンスターの魔力が区別できるなら、人間の魔力も区別できると思わないー?」

「まあ、そうだろうな」

「で、今計ってみたんだけどーたくろーが融合を使ってるとき、蛍火ちゃんの魔力にたくろーの魔力が混ざってるー」

「ふむ……? あ、そういう事か?」

「え、どういうことですか?」


 寝屋の言いたいことが分かった俺は、分かっていない蛍火に説明してやる。

 

「つまり、襲撃者も融合を使っているなら襲撃者の魔力が分かるってことだ」


 例え本人がそこにいなくても関係ない。

 言ってしまえば指紋を取るような物。

 

「それが分かれば……襲撃者が誰かを特定できる」

「そういうことー。でも流石に私たちが探すのは現実的じゃないからそこは組合に任せることになるー」

「それで慌てて申請を出したのか」


 この探知方法の性能が理解された上でないと俺達が手に入れた相手の魔力の情報も信用されないからな。

 

「つまりー相手の魔力を取れればこっちの勝ちー」


 寝屋の誇らしげな言葉に、俺も笑みを浮かべる。

 漸く、終わらせるための道筋が見えてきた。

 

 問題は、だ。

 

「……カラスから魔力が取れればいいんだけどな」


 だがダンジョンを出てから、蛍火もカラスの気配を感じないらしい。

 俺も視線は感じない。

 

「やっぱり警戒されてるか?」


 そもそも今回の襲撃自体、俺が相手の存在に気付いたから仕掛けてきたのではないかという節がある。

 そう考えると、向こうもこっちを排除したいと考えている?

 

 だけどもう、迂闊には近寄ってこないだろう。

 次襲ってくるとしたらもっと、逃げ場のない状態にならないと来ないのではないか?

 

「……どうにか、誘き出さないとダメかもな」


 そしてそれが成功したとしても。


 ぎりぎりで逃げ出した対人戦をもう一度。

 考えるだけで胃が痛くなるが……今回の事件を解決するためには必要な事だ。

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カラスか……古よりの伝統的トラップ、ザルに棒を噛ませて紐を引っ張るやつどうかな?
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