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第41話、戦乙女乱入

とうとう大聖女とか言うファンタジーな存在を決めるイベントが始まり、

自分(ファルナ)も儀式に間に合うように神殿まで急ぐ事と成った。


皇都ファルナコルテから出発した一団はかなりのスピードを出して進んで行く。


高速で走る20頭ほどのラクダチョウ?の内、三頭は荷物担当だ。


「私達ですらギリギリの時間なのにさらに遠い国は間に合うのかな?」


「色々苦労しているようですね。多くは飛行タイプの魔獣などを利用します。

中には川を船で下って時間短縮したり海路を船で渡って来られる国も有りますよ」


自分(ファルナ)が暢気(のんき)に疑問を口にすると頭上から聖女アーレナが答えをくれる。


幼女なボディの私は一人でラクダチョウに乗れないので彼女と二人乗りだ。


私達の左手には執事のアルベルトが並走し、右手には護衛の変態騎士アデリーナが羨ましそうにこちらを見ながらも歩を乱さずに並走している。


アデリーナは「自分が乗せる」とだだこねていたが無視した。


彼女は皇国の騎士の中でも5本の指に入る強者なのでお爺ちゃんが派遣したのだ。



流れ行く景色にもそろそろ飽きて来た。


はぁ・・・望んでもいない旅と言うのはこの上なくメンドクサイ。


大聖女選定の儀式は広大な荒野の中に有る神殿にて行われる。


行われる・・・とは言うが誰かが決める訳では無いらしい。


「どうやって選ばれるかはお楽しみにしていてくださいね」


悪戯っぽく笑いながら質問をはぐらかす聖女アーレナ。


真面目で厳格な性格と思われがちの彼女だが歳相応のオチャメな面も有るらしい。



景色は穀倉地帯を越え、草原から森へと変化していく。


かなりのハイペースで進んでいながら時間に余裕が無いのは分かる


足止めされるようなトラブルだけは避けたいのが本音だ。


この速さと人数なら盗賊も敬遠するだろう。


だが魔物との遭遇戦だけは覚悟しなくてはならない。


商人達もその為に護衛を雇うほどにポピュラーなイベントだ。


・・・おかしい、ここまで それが一切無い。


普通ならゴブリンやツノウサギなら何度か遭遇しても不思議では無い。



「魔物が出ないね・・・」


「ロロネイアさんのお陰ですね。彼女は護衛の仕事だけで食べていけそうです」


「えっ!どゆこと?」


「あらっ、聞いておられませんでしたか?

彼女の聖眼は魔物を寄せ付けない守りの効力が有るそうですよ」


知らなかった・・・


ロロネイアの歌がインパクト強すぎて、聖眼の事は眼中になかったよ。


魔物除けの聖眼か・・・


それが有るなら魔物を呼び寄せる歌を歌ったとしても自分の身は守れる。


ある意味、ロロネイアの能力を生かす最適な組み合わせだ。


魔物除け(・・・・)の能力も聖女の能力としては正統派?だと思う。


良かった。


こんなに聖女らしい聖女候補がゴロゴロ居るなら間違っても自分(ファルナ)に白羽の矢は

当たらないだろうし・・・。




*******



その後も何事も無く進み国境線まで来たところで一休み。


ここで何故か騎士の一人が大きめの旗を用意している。


「何で旗?目立たずにサッサと移動した方が安全に思うんだけど」


ここはアルベルトに聞くのが早いだろう。


「あの旗は聖女候補が一団の中に居る事を示しているのですよ。

国際法で大聖女選定に向かう聖女の進路妨害する事は厳禁とされていますから、

何も知らない警備兵などが足止めをしないように立場を明記しているのです」


なるほど、天下御免の通行手形ってやつか。


しかし、おめでたい日本ならともかく、この世界でそんなルールが守れるのかな?


むしろ妨害したい相手に居場所を知らせる親切なシステムだろうに。


そして案の定・・・



バサッ、バッサバッサ、


「ぬっ!」


何やら頭上から重い羽音が聞こえ、皆が一斉に警戒する。


飛来したのは知らない生き物だった。


大型の飛行生物が団体で飛び交う姿には恐怖を感じる。


皆が剣を抜き警戒するが襲って来る様子は無い。


「ロロネイアさんの聖眼が働いて近寄って来れないのかも知れませんね」


アーレナの言葉で納得させられる。


上空から降下しようとしてもある高さからは下がれないように見えた。


接近を諦めたのか謎の飛行生物は国境線である小川の向こうに着地する。


その数50ほどだろうか?たぶん魔物なのだろう


翼は鳥の羽なのだが、顔はコウモリのそれに近い。コウの鳥?(笑





「こんな場所で聖女の旗を掲げていると言う事はリリセンティアの者か?」


なんと、下からは見えなかったが飛来した魔物には人が騎乗していた。


「いかにも、リリセンティア皇国大神殿参詣の正式なキャラバンである。

我らは急ぐ旅ゆえ、直ちに道を開けていただきたい」


「それは結構・・・だが、今この地は我が帝国軍が実戦演習の真っ最中だ。

通るのは良いが、流れ弾が当たって死んでも当方は一切の責任を持たんぞ」


「白々しい・・・進路妨害であろう。帝国は国際法を無視すると?」


「これはしたり、我らが先に行っている演習場に無理やり入り込むばかりか難癖を付けて批判されるとは、皇国は礼儀知らずでありますな」


などと言っているが戦闘訓練していたとはとても思えない。


明らかに私達を足止めする気なのが見え見えだ。


だが戦力的には相手の数が多すぎる。


速さですり抜けるのはほぼ不可能。


強行突破をするなら相手を皆殺しにする覚悟が要るだろう。



私は皆よりも少し前に出てから「がおおーーっ」とコロタンの特殊スキル

『咆哮』の劣化版を敵に向けて使う。


「あれっ?」


敵の魔獣は何事も無く平然としている。


前に使った時は馬が大混乱したのに・・・


≪ふははは、ちっこいのはまだ強さが足りぬから魔物をビビらすのは無理である≫


≪何だよコロタン、以前はうまくいったじゃん≫


≪魔物に通用するのは純粋なる強さ。魔物と普通の生き物は違うのである≫


借り物のハッタリは通用しないのか・・・



「姫様、ここはいったん引いて夜を待って通過するのが賢明でしょう」


「そうだね・・・試しにそうしようか」


すでに夕刻近くだし時間的ロスは少ないから問題は無いかも。


相手が本気で足止めする気なら夜も望み薄だけどね。



案の定、夜になっても通行不可。


いかにも夜間演習してるとばかりに魔法で火の玉が飛び交っている。


ただのパフォーマンスだろうけど、遅くまで残業ごくろうさんだね。



「ねぇアルベルト、日数的にどうなの?間に合うの」


「ギリギリです。明日も足止めされると厳しいですね」


はぁ、めんどくさ


自分は儀式に参加できなくても良いんだけどね、

聖女アーレナとロロちゃんが参加できないのは気の毒かな。


かと言って帝国とのトラブルは拙(まず)いだろうし・・・


またコロタンに直接手を貸してもらうしか無いかな。


≪我輩にあの程度の小者(こもの)の相手をさせようとするか?

一声吠えるのもアホらしいぞ≫


だよねー


≪お主が走って行って殴り飛ばせば良かろう≫


コロタン、人間の世界の面子ってメンドクサイものなんだよ。


正直、自分(ファルナ)も聖剣X狩場であの騎獣を切り飛ばして叩き落としたい。


その方が気分もスッキリして良いんだけどね・・・


でも被害者ヅラで帝国から宣戦布告されたら皇国が悪者になってしまう。



また憑依(ひょうい)して仲間割れさせる手も有るけど・・・


短時間でも私の姿が消えると味方が狂乱して動くから被害が大きいだろう。


アドバンテージの憑依(ひょうい)が使えないとは面倒な立場に成ったものだ


どのみち足止めされて自分(ファルナ)が不参加になれば皇王(お爺ちゃん)がブチ切れて「戦争する」とか言いそうだし本当に困ったよ。



どのみち騒ぎに成るなら開き直るのも良いかも・・・


今なら夜だし、誰も目撃者が居ないから問答無用で切り捨ててやろうか?


自分(ファルナ)の思考が物騒な方向に傾いた時、急に場が騒がしくなる。



クケェェェェッ


敵方の騎獣が急にアタフタと暴れ出した。


「貴様ら、ここで何をしている。返答によっては軍法会議ものだぞ」


大きな明かりの魔法を伴(ともな)って上空から一騎の騎獣が国境線に滞空する。


「っ、殿下、なぜこのような場所に・・・

わ、我々は上からの命令でこの地で軍事訓練を行っておりました」


終始強気だった騎獣兵達は急に言い訳を並べている。


「ほう、わたくしを相手に見え透いた言い訳をする気か?」



おおっ、かっこいい。


まさに颯爽と現れた正義の味方。


後ろ姿の騎手は声からして若い女性。


赤いマントを風に靡かせ、白いドレスが風でながれアニメのキャラみたいにバエる。



「大聖女選定を妨害するなど我が国の恥だ。貴様ら帝国の顔にドロを塗るつもりか!

即刻この場から立ち去れ」


「ははっ!」


通行止めをしていた騎獣兵達はすごすごと引き上げていく。


荒事に成らず問題解決出来て良かったよ。





「帝国第一王女シシリアだ。我が国のうつけどもが失礼した」


騎獣から降り立った少女は堂々と謝罪?した。


そこには何者にも従わない王族の威厳が感じられる。


世界も人種も違うから正確な年齢は分からないが、

日本の感覚から見れば中学生か高校生くらいの少女。


それもハイゲーマーがオンラインゲームで三日徹夜でキャラデザしたような完璧な作りの見惚れるほどの美少女だ。


その上装備はドレスの要所に金属のガードがなされたドレスアーマー仕様。


長いであろう髪の毛も戦いの弱点に成らないようにキッチリと纏め上げている。


その姿はアニメやゲームに出ていてもそん色の無い戦乙女のイメージそのもの。


美しい・・・我が前世の男心が呼び覚まされる。



えーっと・・・ここは立場的に自分(ファルナ)が応対する必要が有る、のか?


「帝国の姫君とは初めましてかな?自分はリリセンティア皇国皇女ファルナリーア。

進路妨害を排除していただいた事、一応は感謝しますね」


「ほう、皇族がおられたのか・・・しかも、その名前

・・・・・・・・・思った以上に国際問題の危険が有ったのだな」


「貴国の誠意は確認しました。

皇国がこの度のトラブルを問題にする事は無いでしょう」


「そうだな、両国にとってもその方が望ましい。

ファルナリーア皇女殿下に何か有れば皇国は全力で帝国に攻め入って来そうだ。

まったく、あの者達は傾国の姫君に手を出していたのか。怖い怖い」


美しいバラには・・・か、ずいぶんトゲの有る言い方をして来るものだ。


「私には傾国と言われるような年齢も美しさも有りませんよ。

むしろ傾国の美女にふさわしいのはシシリア姫ではありませんか?」


「ふっ、 皇国がフロステス王国に攻め入ったのは誰のせいだったか忘れたの?」


ちっ、確かに私が原因で皇王(お爺ちゃん)が開戦したんだった・・・


「・・・皇国は傾(かたむ)いてない」


「傾く一歩手前だっただろ。全力の戦争は国力を疲弊させる。

衰弱したその隙を突いて他国が攻め込むのは定石だぞ。

普通はそれを恐れて簡単に兵を動かさないものさ。

貴国は皇位継承権すら無い子供の為にその危険を冒した。

貴殿は立派な傾国の姫君だ」


きっと侮辱されているのだろうけど、ゲーム脳な自分にとっては誉め言葉だ。


「傾国の姫」の称号いただきました。(笑




「チャンスと思ったのに 戦争はあっさり終結して被害も殆ど無い。

弱った皇国に攻め込めると思ってたのに、ガッカリしましたよ。

まぁ・・・いずれは皇国とは戦うでしょうけど」


「傾国の姫に関わると帝国が傾きますよ」


「あはははは、それは楽しそうですね」


戦闘狂め、本当に楽しそうに笑う


「それではこれで失礼する。帝国の旅を楽しんでくれ」


楽しむ暇なんかねーよ。


「あの女っ、姫様に好き放題言いおってっ、無礼にも程が有る」


と、急にアデリーナが低い声で呪詛を吐く。


「ですが、あの無礼者は一つだけ正しい事を言ってます。

姫様はいずれ世界一美しく成長される事でしょう。

それはもぅ傾国の姫と呼ばれるにふさわしく」


アルベルトはキモイ事を言い出した。


二人とも立場的に口を出せなかったからストレス溜まってたんだね。


「二人とも、敵の挑発に乗せられてますよ」


さて、この小川の向こうは帝国の国土。


しばしの間、仮想敵国を見物させてもらいましょうか。



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