第8話 不解放
「うっへぇえ~!!やっぱでっけぇ~なありゃあ~!」
辺り一面に広がる広大な砂漠に、討伐目標の巨妖魔がズシンズシンと地鳴りを響かせ歩いていた。
たどり着いた四神一行は、遠くからでも分かるその巨体の大きさに驚いていた。
「さて…あれを今からぶっ倒すってワケだが…どうする?」
玄武のハオが顎をさすりながら残る四神に問う。
「まずは巨妖魔の出方を伺いつつ、遠距離で攻撃致しましょう。前四神を倒した妖魔ですから慎重な戦略が必要かと思われます。」
白虎のリーウが説得力のある作戦に残る四神は黙って頷く。
だが、トゥイだけがその場にいないことにハオが一早く気づいた。
「ん?あのトサカのバカはどこ行った?」
ハオが辺りを見渡すと猛スピードで巨妖魔に向かってトゥイは走っていた。
「おい何してんだバカ!!戻ってこい!!」
「うるせェ!!こんなヤツオレ一人で充分だ!」
「……まったく…手がかかることこの上ない!!」
粋がるトゥイにリーウですら腹を立てた。残った四神たちは急いで後を追う。
巨妖魔に十分近づいたトゥイはその場で足を止める。
「よぉ…相変わらずデカい図体してんな…」
巨妖魔を見上げ、激しく睨んだ。そして勢いよく首飾りを突き出して叫ぶ。
『无限…灵魂』!!
掛け声と共に力を解放した。はずだった。だがしかし、トゥイの能力は解放されず、冷や汗が全身からポタポタと流れ落ちる。何かの間違いと思い、焦りながらもう一度叫ぶ。が、結果は変わらない。
「な…何でだよ…⁉何で解放できねェんだよおい⁉」
顔は引きつり、足は震え、恐怖という感情のみが体を支配した。
「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
(やべぇ…殺される…!!)
巨大な右手が襲い掛かり、トゥイは思わず目をつむる。
「黒帝…蛫盖子!」
しかし、すんでのところで何者かがトゥイを助けた。トゥイはゆっくりと目を開ける。
「お、お前⁉素手で⁉」
そこには物怖じしないハオが、巨妖魔の巨大な手を両の腕で押さえつけて立っていた。
「邪魔だ!!どけ!!」
トゥイですら敬意を払いたくなるほどピッタリなタイミングだった。
「うおおおりゃあ!!」
ハオの戦闘スタイルは素手である。玄武に選ばれた者は双剣を使うのが主流とされているが、彼は「武器は女々しい」というなんとも漢らしい理由で、生まれてこの方一度も武器を使用したことがない。
ハオはそれほどまでに圧倒的な強さを持っていた。
「…グオオオオオオ…!!」
「すげェ…おしてる。」
次から次に繰りだされる強力なハオの攻撃に巨妖魔はたまらずよろけてしまう。
更に追い打ちをかけるように|青龍せいりゅう》のシュエン、並びにリーウまでもが加勢。
トゥイの横を颯爽と過ぎ去っていく。
されど、巨妖魔も大人しくやられているばかりではない。
「グゥゥオオオオオオオオオオオオオ…!!」
口からとてつもない量の光線を吐き出した。
「呪開光線だと…!?」
ハオに繰り出された呪開光線は動物のような瞬発力で躱し、かすり傷だけに終わった。
「…っぶねぇ!!なんちゅう光線だ!喰らったらひとたまりもねーぞ!」
その後も巨妖魔は両手を素早く振り下ろし、残るシュエン、リーウに果敢に襲い掛かる。
「くっ…!凄まじい威力…!!」図体には似つかわしくない素早い動きに三人は苦戦していた。
「やはり呪妖魔のようですね。」
「うん。そうみたい。」
「だとしても。どうにもならないレベルじゃねェぜ。」
三人は少し距離をとった。
作戦通り巨妖魔の様子を伺うことにした、
トゥイはその光景を眺めることしかできなかった。
(くっそ!皆戦ってんのに…何もできずじまいかよ…!オレはどうすればいい?何しにここに来た?何の為に四神になった?どうすれば共闘る…⁉…あいつらはあんなにも立派に戦ってんのに。何も出来ないで終わりたくねェ!力が使えなくても何か出来ることを探すんだ…!!)
果たしてトゥイは力を解放できるのか!?そして四神は見事、巨妖魔を討伐し役儀を完遂できるのか!?四神の未来はいかに!




