第3話 生い立ち
「てめェは…!」
扉を開くと四十代くらいの男が笑顔で現れた。
「やぁ!久しぶりじゃないかトゥイ!元気だったか~?また大きくなったな!」
本来なら父親がここで帰ってきて息子も一緒に喜ぶのが普通であるが、トゥイの表情は険しく、父親をにらんでいた。
「帰れ…。ここはお前の帰ってきていい場所じゃねェ…。」
「そんな冷たいこと言うなよー。中に子供たちもいるんだろ?会わせてくれよ!」
「帰れ…!何度も言わすな…!」
トゥイは表情を変えず一層強くいい放つ。
(まるで獣だな…。)
父親はそんな息子に完全にビビってしまい頬から冷や汗を流した。
「わ、分かった!分かった帰るよ!とりあえずこれ半月分な!あんま入ってないけどこれで少しは生活の足しに…」
父親はカバンの中から茶封筒を出してトゥイに差し出した。
が、トゥイは差し出してきたその手を「いらねェよ。こんなどこで稼いだか分からねェようなカネ…!!」封筒ごと思いっきりはらう。茶封筒は宙に舞い、中からジャラジャラとお金が飛び出してきた。
「ちょ…なにするんだよ…⁉」
父親が慌ててお金を拾う。その間にトゥイはドアをバタン!と強く閉めた。
「しまった…。」
父親は頭を抱え自分の情けなさに卑下していた。
「トゥイ…父さんもう行くから。お金はポストの中に入れとくからな…。子供たちによろしく…。じゃあ、またな…。」
寂しそうなその声にトゥイはドア越しで黙ったまま聞いていた。次第に足音が遠ざかっていくのが分かった。
後ろを振り返ると、ミンリンと兄弟たちが心配そうにトゥイを見つめていた。
「さぁ!食べようぜ!」
彼の作り笑いにミンリンはもちろん、兄弟たちですらその気持ちを察していた。ミンリンは胸に手を当てて、彼の苦労を改めて身に染みていたのであった。
皆食事を終えて、兄弟たちは疲れを知らず、兄弟たちは疲れを知らず部屋の中で遊ぶ中、トゥイとミンリンは食事の後片づけをしていた。
「わりーな。手伝わしちまって。」
「平気よ。このくらい。」
食器を洗う音が虚しく響く。
2人とも淡々と作業をこなしていた。
「昔はよぉ…家族みんなで仲良く暮らしてたんだぜ。」
思いが詰まったのか、トゥイは不意にミンリンに話しかけた。
「知ってるわよ。でもあなたのお母さんが様態崩して…」「違う。」
「え?」
「あいつの所為で母さんは体を壊した。」
「どういうこと?」
「アイツは俺が小さいときから仕事が安定せずに何度もクビになってやさぐれていった。だから学校に通う金なんてなかった。そんで兄弟が増えるたび生活が増える一方でアイツはとうとう家を出ていったんだ。 そして、 母さんは死んだ。」
「そんな。。。」
「だからオレは兄弟たちを守らなきゃいけねーんだ。育てなきゃいけねーんだ。どんな手を使ってでも。」
「トゥイ…。」
ミンリンはいままでずっと傍にいた彼のことを知っているようで何も知らなかった。そんな自分に対してとても空虚になっていた。
『ザッザッザッザッザッ…』
陰鬱な空気の中、外からいくつもの足音がこちらに近づいているのがわかった。
「え、いったい何?」
すると、突然ドアを突き破られぞろぞろと何人もの兵士たちが入ってきた。
「取り押さえろ!」
兵士たちはトゥイの身動きを取らせないように束縛した。
「ちょっとどういうこと⁉トゥイがなにしたっていうのよ⁉」
「いますぐ闘技を始める。悪いが速やかに投降して貰うぞ。」
「待って!闘技は三日後なはずよ!」
「強力な妖魔がこちらにむかっているとの連絡があった。」
「⁉なんですって⁉」
「最早、賽は投げられた。一刻も早く四神を決めなければならない。では失礼する。」
トゥイは抵抗することなく闘技場へと連れていかれる。
「兄ちゃん…!」
「心配すんな。お前らを見捨てたりなんか絶対にしねェから。」
意味深なすて台詞をはいて、トゥイと兵士たちはその場を去っていった。
「私たちも行くわよ!」
ミンリンは咄嗟に兄弟たちに声をかけ、急いで闘技場へと向かって行った。
ー時の奔流に流されるままにー




