第20話 素手
「調子に乗るんもそこまでや…お前さん」
トゥイが思わず離してしまった赤霄剑が空を舞い、大地に突き刺さる。
砂埃が舞う中からトゥイは立ち上がり翼で掃う。だが謎の男に蹴られた際に離してしまった赤霄剑は立ち位置からかなり離れた位置に刺さっていた。
「翼で衝撃を和らげたか…やるやないか…」
「そりゃどうも。」
(さすがに今のは効いたな…おかげで剣を手放しちまった。)
トゥイはチラチラと赤霄剑を気にしながら謎の男の様子を伺っていた。
「ええんか?あの剣取りに行かんでも?」
謎の男に強がりをみせ、トゥイはファイティングポーズで言い返した。
「別にいいよ。お前も素手なんだ。素手で充分!剣なんか…いらねェ!」
「ほぉ…大した自信やな。」
男は余裕の素振りでスましていた。するとトゥイは四つん這いになり翼を羽ばたかせありったけの妖术を込める。
(さっきよりも…一歩…もう一歩…速く!)
「はぁぁあああ‼」
(なんや…⁉コイツ急に妖术がごっつあがりよった⁉)
台地がひび割れ、男に向かって猛スピードで襲いかかった。バチン‼と両者の腕が重なり合い激しく交錯した。
「……ん~っ…まだまだぁあ~!!」
翼を仰がせ更に勢いを増し、男を追い込む。
「っく…止められへん!」
「うりゃー!!」
トゥイは勢い殺さず、謎の男を宙に殴り上げた。
「ぐはっ!」
男は宙に舞いダメージを受けながらも体制を整え、技を繰り出した。
「黄帝…踢闪电‼」
黄色い稲妻がトゥイの方向目掛けて対になって襲い掛かる。
しかし、トゥイはその攻撃をヒラリヒラリと綺麗に躱す。
「なんやて⁉」攻撃を躱した後、宙に舞う男の正面に止まり戦闘態勢をとった。
「喰らえやぁぁあ!」
右足を横に振り切り、男の腹にぬめりこんだ。
「…ぐはっ‼」
男は攻撃をもろに喰らい、地面に叩きつけられる。
「さっきの…借りだ!」
砂埃の中、トゥイは地上に降りてドヤ顔で謎の男を指差した。
「…アイツ…押してねぇか?」
「ええ…間違いなく押しています。信じがたい力です。」
「確かにあの力があれば、巨妖魔を一人で倒せるかもね。」
三人はトゥイの戦いぶりをまじまじと眺めていた。それだけトゥイの戦いぶりには目を見張るものがあったのだ。強力な攻撃を受けた男はガレキをどかしご立腹な様子で姿を現した。
「…あったまキタわぁ~。ええやろ。お遊びは終わりや。ワイの本気。魅せたる。」
謎の男は首や手首、指をポキポキ鳴らしはじめ両手を前に突き出した。
『コラァ~ッ!あんたそげな所でなんしようと‼』
何処からか聞こえてきたその声にその場にいた五人が驚愕した。しかしすぐさま男だけがその状況を理解し、力を抜き残念な様子になった。
「っち…見つかってしもうたか…」
すると青天の霹靂のごと空間が生まれ、翼を生やした謎の女が姿を現した。女は地上に降りた後、呆れた様子で謎の男の隣に移動した。
「まぁ~たうろうろして…探すのに苦労したばい…」
「ええやないか別に!ワイの自由や!それに…親父の計画とやらを早めに実行しただけや!」
プイっとそっぽを向く男に対して女は頭の上からゲンコツをお見舞いした。
「…ッ痛ってェ~!何してんねん!痛いやないか⁉」
「しやーしか!応龍様が呼んどーばい。今直ぐに『老巢』に戻るくさ。」
「ええとこやのにぃ~…ま、親父が言うならしゃーないなぁ。」
頭をカリカリと掻きながら、不満げな様子で四神たちを背に謎の女が来た入口の方へ歩いて行った。トゥイは逃がすまいとすかさずその二人を追う。
「待ちやが…⁉痛っ!」
解放したばかりで黄信号を出していたのかトゥイの体にガタが来ておりその場で膝を崩してうずくまってしまう。
(解放したばっかで派手に動きすぎた…消耗がはえーや。)
「どうやらまだ力を完全に操れてはないようやな。」
「うるせェ。これからだ。」
「貴方方は…いったい何者なのです!告げなさい!」
リーウのその言葉に謎の男と女はニヤリとほくそ笑む。
いったい彼らの正体とは…!?




