第16話 放弃(ファンチィー)
「しかしまぁ…こうもうまく行くとはな。」
「ホントだよ。罠と玄武君の技を上手く作戦に組み込んで成功するなんて。そうそう出来ないと思うよ。」
「いえ。偶然にも玄武殿の技と作戦の相性が良かっただけでございます。」
「まーとにかくよぉ。あのデカザルをぶっ倒したからいいじゃねぇか!猿も木から落ちるってわけか。」
「うまいね(笑)君からその言葉がでるとは思わなかったよ。」
トゥイの意外な言葉遊びにシュエンはからかった。
「なにを~?」
「コホンッ!ですが、なぜ青葉林に山魈が出現したのでしょうか?普通なら青市付近の生息ではなく黒区辺りの出現なはず。」
「そうだな。やっぱり呪妖魔が関係してんのか?」
「恐らく。山魈は肉体派だと知っていましたが、あそこまで剛腕ではないはずです。何かがおかしい。引き続き調査が必要かと。あとは…」
三人の視線の先には一斉にトゥイに向けられた。
「ん?なんか顔に付いてる?」
「とぼけてんじゃねェ!あと二日しかねーのにそんな調子で能力を解放できんのかってことしかねェだろうが!」
「そんな怒鳴んなくてもいいだろ!それは正直わかんねぇ。でも解放できなくても何か自分でもできることを今日はした。才能は関係ない。どんな不利な状況でも努力を探す。探すのをやめたら、それこそ何も掴めねェ。」
トゥイの堂々とした物言いに一同は驚愕する。
「フンッ!ホントに口だけは達者だな。」
四神は少しずつチームになっていく。はずだった。
「ハァ…ハァ…」
四神が新たに結成されてはや六日目。トゥイは満足に能力を解放できず、最早トゥイに残された期限はあと一日となってしまった。
(これまでか…。)
リーウは落胆の表情を浮かべていた。
「ハァ…大丈夫だ。みんな…ハァ…。まだ一日残ってる。大分背中に炎が回り出した所でもうちょいなんだ。」
「なにがもうちょいだよ。」
「?」
唐突に口を開いたのはハオだった。
「もう六日目だぞ?状況わかってんのこらぁ⁉明日お前が解放できなかったら四神は解団なんだぞ!解団‼」
「わかってら!だから明日までに解放してやるって…」
「无限…灵魂。」
すさまじい黒風がハオを包み、ハオはトゥイの首元を思いっきり掴んだ。
(っく…‼なんて力だ‼)
「落ち着きなさい!玄武殿!」
「オレはもう我慢できねェ。自己紹介のとき言ったろ。オレはこの世界で一番の強者になりたいと…。それがオレの野望だと…。なのにてめェみたいなやつがいると‼目障りなんだよ‼遊びは終わりだ。オレは元々暗杀〔暗殺〕が専門だ。てめェなんかに油うってる暇はねぇんだ。死ね。」
(まずい…‼)
緊急事態に能力を解放しようとするリーウであったが、微かな声でトゥイが呟く。
「…んなことで殺して…世界一の強者に…なれると思うなよ…」
「なんだと?」
「…強者になりたいんだったらよぉ…こんな所で…オレを殺すんじゃなくて…明日オレが力を解放すりゃあ…何体もの妖魔と戦って…今より何百倍も…何千倍も…強いやつに…なれんだろうがぁ‼」
そのときトゥイの怒りが力の解放へ導き、朱雀の片翼が現れ鋭い爪がハオの腕を掴む。
「…あっちぃ…‼」
怯んだハオは思わず手を放してしまう。
(今のが朱雀…⁉このオレ様が気圧されただと…⁉)
「ゴホッ‼ゴホッ‼だから言ったろ…もうちょいだって。」
トゥイもハオの絞首にたまらずせき込む。
そしてトゥイのブレない真っすぐな姿勢にハオは苛立ちをぶつけた。
「どうしてだ⁉どうしてお前はそんなに自分を信じられる⁉どうして何度も諦めないでいられる⁉」
「放弃〔諦める〕?へっ!そんな言葉…オレは知らねェ。明日みしてやるよ。今よりももっとでっけぇ…完全体の姿をな!」
「…ハッハッハッハッハッ‼どこまでも口がへらねーなトサカ野郎!……いいだろう…そこまで言うなら見せてもらうぜ。お前の完全体ってやつをよぉ…‼」
その孔雀のような鋭い眼差しに、心を打たれたハオは手を差し伸べた。
「トサカ野郎じゃねェ。オレは朱雀だ!」
その手をがっしりと握り、両者は契りを交わした。
リーウは解団の危機に冷や汗を垂らし、しかめづらでその光景を眺めていた。
しかしこうも思った。もしこの苦難を乗り越えられれば、歴史上最も強い四神になれるかもしれないと…。
果たして、トゥイはわずかに残されたあと一日という猶予で、無事能力を解放させ、使い熟すことができるのか?そして四神たちに新たな影が迫っているのを四人は知る由もなかった。




