第11話 神足(こうたり)
「うおおおおおおおお!!」
妖术を籠め、必死に能力を解放しようとするトゥイであったが、微塵も能力が解放される気配はなかった。
妖术とは四大国に伝わる人に流れ備わっている力の事を意味する。
四神一同は次の妖魔の出現まで薪をくべながら身体を休めていた。
「そんな気合いだけでどうにかなるようなもんじゃねェよ。」
ハオが気だるそうに口を開いた。
「…んー。じゃあお前らはどうなやって能力を解放してるっつーんだよ?」
「そりゃあ…」「それは…」「そうだね…」
『勘。』
「いや、三人揃ってなんちゅう解答してんだよ⁉もっと具体的なもんあっただろ⁉」
「ねぇよそんなもん。だいたいお前は俺らとは毛色が違ぇんだからよ。」
「確かに…私共が手取り足取り教えたところで朱雀殿が解放できる保証はどこにもありませぬ。」
「うん。皆バラバラだよね。」
「っへ!いいもんね~!お前らなんかに頼らなくたってな!解放してやりますよ~だ!」
「まぁ。今日はそれくらいにしとけ。明日も妖魔がでるからもう寝るぞ。」
「うるせー!いますぐにでも能力を解放してやりゃあ!うおおおおおおお!!」
「寝るっつてんだろうが!」
他愛のない会話をえ終え、四神一同は眠りにつき明日の妖魔討伐に備えることにした。
「ふぅぅぅぅぅぅうう…さみぃ…」
四神一行は北西にある氷張海に来ていた。氷張海はこの辺りでは最も気温が低いとされている海である。名前の通り辺り一帯は海氷。トゥイが寒がるのも無理はなかった。
「おい…。こんな寒いとこにホントに妖魔なんていんのかぁ?」
「居ますとも。でなければこのような極寒地帯に足を運ぶことはございません。」
「ならイイんだけどよォ…」
周辺を捜索していると、バシャンと氷を割り何者かが潜んでいることに一同は気づく。
「皆さん身構えて!!」
リーウの忠告で一気に緊張感が走る。だが全く妖魔の気配はしない。
「くっそ!どこに行きやがったあのや…」
「しっ!静かに。近いよ。」
(なんだコイツ…いつもと雰囲気が違ぇ…。)
シュエンは人差し指を自分の口元に近づけてトゥイを黙らせた。
そのときトゥイの背後の海氷にピキっとヒビが入る。その瞬間、水中から妖魔が飛び出しトゥイに襲い掛かる。
(やっべっ…!)
しかし、瞬きをする瞬間すらない速さでシュエンはトゥイを救った。キンッ!っと刀で弾く金属の鋭い音は響く。
「待ってましたっ♪」
(コイツ…いつの間に⁉)
シュエンは最大の特徴は誰よりも神足であること。そしてもう一つ、それに匹敵するほどの刀使いなのである。
青市は鍛冶がとても盛んな国であった。
その為、刀を使う者が非常に多く、長けている者も多い。四神の決闘の際には必ず刀が用意られる。
そして、選ばれた者には先祖代々伝わる歴代の青龍たちが使ってきた『苗刀』が与えられる。
苗刀は日本刀に近い形状ではあるが、使い熟せればそれよりも威力は高い。だが、全長1メートル40センチの長さゆえに非常に扱いが難しく『四神の中で一番馴染のが遅いのは青龍』と言われている。どれだけの刀使いであっても苦労するのは当然であった。それを短期間でものにしたシュエンは戦闘における天賦の才能を持っているのかもしれない。
「それっ!!」シュエンは苗刀を駆使して妖魔を吹き飛ばす。
「なんだあの妖魔…?」
「あれは蠱雕。見た目は鷲ににていますが厳密には鳥ではなく、頭の上に角があり水中と空中を行き来できる厄介な妖魔です。」
「なるほど。道理で見た目がきしょい訳だ。」
(しかし青龍殿は微かな蠱雕の気配を感じとり、まるで来るのが分かったかのように朱雀殿を救った…。)
「あなた…魚肌の能力を使いましたね?」
「へぇ。バレてたかぁ流石だねぇ。」
魚肌という言葉に聞き覚えがあったのか、トゥイは咄嗟に質問した。
「あ!なんか聞いたことあるぞその響き!俺を会場まで運んだやつが使ってたろ!」
「いえ、それはきっと亀肌でしょう。惜しいですが少々異なります。亀肌は四神や使いの者を運ぶ黒の人々で形成された部隊。それに対して魚肌は青の人々で形成された水中の探索に優れた部隊です。」
「ふーん。ちょっと違うみてーだな。でもなんでこのヒョロヤロウはそのぉ~……ウオハダ?ってのが使えるんだ??」
「実はいとこが魚肌にいてさ。コツとかいろいろ聞いて真似してたらいつの間にかできちゃったんだよね。それだけだよ。」
(…⁉そんな莫迦な⁉魚肌の能力はちょっとやそっとの真似事で出来る代物ではないはず…。それに…巨妖魔の戦闘の際も、扱いが困難な苗刀を軽々しく扱っていた…。熟練された青龍ならまだしも、成り立ての青龍が使い熟すなど聞いたことがない。この男…もしや天才か…)
蠱雕はまた水中に潜り込み潜伏した。
このままシュエンのジーニアス的な強さで妖魔を倒すことができるのか。
そして、驚くべき事実が判明するのであった。




