只今、監獄生活中です。3
十の月になり、冬越えの支度が整って一安心のユイルです。
マジ寒い。色々商人さんからラストスパートで買いまくった事で、かなり充実した穴部屋になりました。
まず、子供用の冬服や防寒用品をしっかり確保!でなければ着る服がありません。
次に、入り口の布を厚手のタペストリーに替え、外からの冷気を遮断し、外の騒音がかなり軽減されました。
頑張って冬籠り用として薬草を目一杯、部屋中の天井にぶら下げてたら、手下さん達に「くせー!!外まで匂ってくる!」と文句を言われてましたが、これで匂いも外に漏れないでしょう。えっ自分はって?ヨモギのような薬草独特な香りなので、どちらかと言えば好きですよ。
特に今回は初めての冬でもあり、商人さん達との物々交換用の製作もあった事で、かなりの量の薬草がぶら下がっていましたからね。まるで天井一面が薬草畑に、おかげ様でかなりの金額になった事もあり【カタログ通販】では購入できなかった鎌や鍬やピッケルとこの世界での布製品も購入できました。
【カタログつ通販】『武具Ⅰ(高品質)』で護身用の「短剣(2万pt)」と「ナイフ(1万pt)」を追加で購入しました。
今更ながら、武器は貰ったピッケルと採取用のナイフ1本しか持ってないことに気が付いて慌てて購入しました。こんな世界、いやこんな場所なのに平和ボケしてましたよ。
高品質を品質が気になり鑑定したらランク9の判定でした。確認のため一般的な短剣とナイフを購入して鑑定したところ判定はランク5。
もしやぼったくられた!?と思ったら手下リーダーのケイルに「いい短剣買えたな!」と褒められました。カタログ通販製が品質が良過ぎるのか、もしくはケイルに揶揄われただけかは分かりませんが。
『防具Ⅰ(高品質)』では「自動防御の指輪(3万pt)」「防御の指輪(5万pt)」を購入しました。
『自動防御の指輪』のクールタイムは1分で1回で20Mを消費、『防御の指輪』クールタイム無しで1秒2Mで使用でき、ゴブリンやウルフ程度ならこれだけで充分対応出来そうです。
サテスさん達に何気なくこういった品について尋ねてみたら、出回っている品は全て高額品ばかりで性能は『防御の指輪』は1秒で5M消費だそうです。
やはり通販製は品質が良いようです。
魔法対策も考慮していますが所詮4階層程度では、まだ必要としない上に沢山装備すると目立ちますし、
「パリピみたい…」
心の衛生状態にはよろしくないので必要なものだけを装備する事にしました。もしかして『偽装』スキル辺りがレベルUPして透明化が実現できれば、沢山身につけても心の安寧を得る事ができるはずです。
しばらくは、はめた指輪を布で巻いておけば気がつかれないですし、「寒いから」と言って誤魔化します。
只今の『偽装』レベルは2。髪の毛や瞳、肌の色の偽装とほぼ同質量の品の外見だけをコピーすることが出来ます。外見だけをコピーなので鑑定や持った時の違和感でバレてしまいますが、ぱっと見た目では気づかれないので色々と活用中です。
「短剣とナイフは商人から買った品の外見をコピーしておけば問題なし」
他にも【カタログ通販】で購入し毛布の外見をボロ毛布に、防寒用上着も厚手の長袖に見た目を変えておけば一安心です。
「お前が作ったポーションやたら利くなぁ」
「そっそお?材料とれたてだしここに来て『薬師』のスキル生えたからじゃないかなぁ」
いつも酔い覚ましやエナジードリンクとして、涙や微笑みの下級ポーションを飲みに来るケイルの言葉をはぐらかす。(やっぱり薬箱の品は効果が違うんだ)手下さんたちで内緒の治験中。
「そうなのかもな、色街の奴らもお前が作ったクリームだか何だかが気に入ったようで、これ以上商人達に搾取されないようにしろってうるせーんだよ」
「そうなんですか…どの道、冬の間は商人さんいらっしゃらないので卸しますけど、どこに卸せば?」
「おうそうだ!冬の間は商人達の替わりに、一部を俺らが買い取ることになってんだ。場所はいつも俺達がいる場所のすぐ横だ」
「通常ポーションもですか?」
「あ〜全部は買えんから、換金所へ多めに回してくれ」
「わかりました」
冬の間の販路ができた。
ちなみに色街のお姉様方は下山しないそうだ。理由は「食には不満があるが外より稼げる」。たくましい。
「カタログ通販の品を売るためには下層階を目指さないとダメか」
【カタログ通販】の品は、初めのⅠやⅡは「この世界のもにより品質がいい」ぐらいの認識でいけそうだったが、Ⅲから「これ世に出して大丈夫?」系になり、Ⅳ・Ⅴは「明らかにヤバいっしょ」系になる。
【カタログ通販】で購入したものが売れればランクやレベルも上がるし、在庫を抱えなくて済む。
冬の間は下層を目指せれるように鍛えてみよう。
だってここは『頑張れば実になる』が眼に見える世界、おまけにステータスボードで自分を客観的に視る事が出来る。
そんなこんなで頑張ってたら、スキルに『暗殺LV.1』が生えてる事を発見!
しまった!『隠密』使ってゴブリン倒し過ぎたせいだな。反省、反省、でも「影」って感じでグッとくる。
今は一人で4階層を攻略中。
『探知』と『地図』、『隠密』を駆使して進んでいる。
1日半ほどかかると予測してたが、日暮前には5階層入り口に到着した。
「忘れず転移水晶に登録してっと、今日はここまで、少し早いけど攻略終了するかな」
穴部屋に戻ると知らない人物がそこに居た。
「おい!微笑みポーションをすぐにだせ!」
えっ!ガナス2号!?
「ポーション店かお頭のところでお買い求めください」
「下民の癖に口答えするきか!この犯罪者め!」
ええ、下民かもしれんけどココにいる人達全員が一応犯罪者ですよ〜(あなたもね)
しばらく「ポーション出せ!」「いやです!販売店でお買い上げを!」の問答を繰り返してると
「おいどうした!」入り口外から声がした。
今日の見回りは手下NO.3グリムことグリさんだ。すかさずhelp!
「この人が執拗く微笑みポーションよこせって」
「おいおいここじゃなくポーション店かお頭んとこで買いなよぼっちゃん」
グリさんが言って気が付いたが、彼の服装は明らかに俺らと違って良いものだ。
「チッ賤しい盗賊が口を挟むな!」
思わず(確かに見えるな)と思ってしまった。グリさんごめん。
「んだと!ココにいるやつはみんな犯罪者だ。庶民でも盗賊でも貴族サマだろうがみんなだ!そう言うアンタもな!」
ニヤリと笑うグリム。
言っちゃいましたよ!チキンな俺には思っても口に出せない!グリさんカッコいいす!
「ええい、うるさい!お前はこい」
俺の腕を掴み連れ去ろうと引っ張られる。
(いやぁぁぁ!!)
「この野郎、待ちやがれ!」
ガナス2号(仮名)はグリさんの目眩しに、スキルなのか魔法なのか知らないが、白い煙を通路に発生させた。その所為で住人達は「火事だ!」とパニックに!
(グリさん助けてぇぇぇぇ!)
パニックの所為か声がうまく出せない!
グリさんが俺を捕まえようとしたが、パニックになった住人達に阻まれてしまった。
新地区の入り口前の広場に手下リーダーことケイルがやって来た。
「何だ!この煙は!」
「ゴホゴホッ兄貴!そこの野郎がこの煙を出しやがった!ポーション寄越せと無理矢理ガキを連れて行こうとしてる!」
ケイルの声が聞こえたのか、煙の奥の方からグリムが大声で叫んだ。
「ん!お前はチェンストア家のガキだな」
「ふん、分かっているならそこを退け」
「何言ってんだよお前は、貴族でも罪人は罪人だ。ここで更に問題を起こせばお前の上司が更に責任取らされるぞ。まぁ、お前自身は家の力ですぐに監獄をおさらば出来るし、役人に『お前が監獄でやらかして、命が危ない』って伝えれば明日にでもこっから出られるが、さあどうする!これ以上騒ぎを大きくすれば、すぐにでも釈放だ。」
何がどういう意味での交渉なのか皆目見当が付かないが、ケイルの言葉に反応し俺の腕をケイルの方へ投げつけ去って行く。
一件落着のようだ。何が何だか?
「お前、ポーションやら化粧水やらで大人気だな(笑)」
いや〜嬉しくないっす。
二人にお礼を言って本日見つけた酒の木新種として『ハウス』にあるウイスキーを数個渡し、穴部屋に帰っていく。
余談だが、ハウスにあった瓶製やペットボトル製も中身が空になると自然に消えてしまうので、ダンジョン産と言い切れる事が判明した。
「疲れた〜こういう日は美味しいもの食べて風呂入って寝よう」うん、そうしよう。
『ハウス』でお風呂と食事を済ませ、穴部屋に戻って布団に潜る。
「遅くに済まない。ここはポーションを生成している者の部屋か?」
誰だよ〜と思いながら恐る恐る入り口のタペストリードア(俺命名)を捲ると大きな獣人さんが立っていた。
ザ・獣人!顔も体も全てが虎の御姿で二本足で立っていた!
「済まないがポーション生成している方を呼んでもらえぬか?」
虎の獣人さんが尋ねてきた。
「あ〜9ヶ月ほど前からは私ですが?」
「9ヶ月前?前任者殿は?」
「分かりません。私が来たひと月ほど前から行方不明になったようです」
「そうか」
耳もしっぽもしょんぼりして、凄く大きいけどちょっと可哀想に見えて撫でたくなってしまう。撫でないけど。
「お知り合いでしたか?」
「いや、腕が良いと聴いてた故、調合を頼もうと…」
「調合?」
新たなフレーズだ。ヤク爺さんもしかして凄い人だったのかも。
理由を訊いてみた。
「親友のエルフが種族特有の病に罹り高熱を発症してしまい、持ち合わせの微笑み上級では一時的に回復したが完治には至らず。都市では種族特有の病に効く薬が調合されているが、監獄では扱ってないという。最上級ならかなり改善するとポーション屋から聞いたが微笑み最上級も扱っていなく、どちらのポーションも取り寄せるには春まで待たねばならない。最上級だと50万マールかかると言われたが正直、金額よりも時間がかかり過ぎる。特有の薬を調合出来ないかと思い来てみたのだが…」
50万マール!って5千万円!!ぼったくり!?いや、山頂の監獄価格になるのか?
「少々お待ちください」
部屋の奥に行きポーションの在庫を確認しているフリをして【薬箱】からアイテムBOXに送られたポーションを確認してみる。
『種族特有ポーション:エルフ用』
あった!一応鑑定で確認したが『種族特有ポーションはその種族であればどんな病も治す万能薬。だが多種族には下級ポーションほどの効能しかない。』との鑑定結果。
なるほど、ポーションって奥が深い。
「一応、薬師のスキルを持ってますので、宜しければ容態を確認したいのですが。私の持ち合わせで調合可能かもしれませんし、どの程度効果が見込めるか分かりませんが、上級の微笑みなら少し持ち合わせがあります」
初エルフさん見てみたい!という邪な思いがあるが、治す気はあるよ!上級とは言ったがダメなら最上級品を使用すればいい。
「誠か!助かる。直ぐに向かうが良いか」
「直ぐに準備します」
こうして虎さんと一緒にエルフさんの部屋にGO!
天罰ってあるんですね〜「人助け」の為じゃなく「エルフさん見たい」なんて邪な思いがいけないのか、訪れた穴部屋の同室者が「ガナス」と「ガナス2号(仮名)」とは……とほほ
「何だガキ!ようやくポーション渡す気になったのか!」ガナス
「貴様!今更何しに来た!下賎な下民め!ポーションがあるなら、さっさと置いて立ち去れ!」ガナス2号(仮名)
「……帰って良いですか」俺
思わず本音が口から出た。
「済まぬ。この少年はセルージュの応診に来てくれた。一切、手を出すな」
まだ名前聞いてないけど、虎さん(仮名)良い人だ。
「往診だと!穢らわしい下民が、セルージュ様に触れるなど許されぬ!さっさとポーションを置いて立ち去れ!」
「……分かりました『上級の微笑み』2本置いときますね。これ以上は有りませのでお渡し出来ません。先にお伝えしときますが『上級の微笑み』は材料が足りないため直ぐに作れません。頑張って作って規定通りの販路に卸します。お買い求めはポーション屋でお願いします。ではお大事に」
「待ってくれ少年!」
止めないでください虎さん。一刻も早くここから逃げ出したいのです。
「わざわざセルージュを治しに来た者を拒むと言うのか!今は冬だ、外からの支援は春までまともに入らぬことぐらい分かっているだろう。今、注文した品はいつ届く!それまでセルージュの体力が保つはずがない!」
そうだよね。3ヶ月以上待たないと入荷しないもんね。それにこれから先、一層寒さが厳しくなるんだから。
「…さっさと往診しろ!もし治らなければお前の命を持って償え!」
「命をって……やっぱり帰ります。お大事に」
もう嫌だ。逃げたい!逃げたい!この場から一刻も早く立ち去りたい!
そりゃあ病で苦しんでる人を治そうという思いはあるが、命を掛けてなんて嫌です。実際に種族特有ポーションのエルフ用は持ってるけど、正直どのくらいで効果が出るのかなんて知らないし、エルフさん知らない人だし、メロスの友セリヌンティウスみたいに、命かれる程の信頼を築いている訳でもないのに掛けられません。紛争地帯で救護活動している方々、本当に尊敬します。
『ピンポン』『ピンポン』とお知らせの音が2回ほど鳴った。
「まっ待ってくれ!頼む!友を助けてくれ!君の命は俺が保証する。だがら頼む!」
通路からも部下の方々なのか、「セルージュ様を助けてください!」「お願いだ!」と、いつの間にか集まってきた人たちが、心配そうに覗きながら懇願してくる。
仕方ない、ガナス2号(仮名)から守ってくれるなら、
「分かりました」
不愉快そうに睨みつけてくるガナス2号(仮名)と、横取りを計画してるのか本家ガナスの横を通りセルージュさん近くへ、うわ〜男の人だよね?綺麗な顔してんな〜。いかんいかんまずは、【薬師】のスキルを使って
「〈往診〉」
『往診』は病名や状況、効果的な治療方法が表示される優れ機能だ。
やはり種族特有の病で『種族特有ポーション:エルフ用』で完治できそうだ。
「これを飲ませー」って喋りながらアイテムBOXからポーションを出した瞬間、ガナス2号(仮名)に強奪された。
もう終わったし帰って良いよね…
「済まん」
虎さん謝らなくて良いよ。
ガナス2号(仮名)がセルージュさんに飲ませると、びっくり!セルージュさんが光ってます。みんな驚き俺を見る、俺もびっくり。
「貴様何をした!!」
怒り狂うカイゼリウスは剣を抜き、ユイルに切り掛かかった。
「うわっ!」
思わず尻もちをつく。(殺される!)ドナドナタイム以外で死を感じた瞬間だった。
(逃げないと!)と思った瞬間、虎さんが剣を弾いてくれた!
「よさぬか!カイゼリウス!」
「貴様!セルージュ様に何を飲ませた!」
「特効薬です。エルフに効く特効薬です」
(それでもって、飲ませたのはあなたです!)
「殺してやる!」
動けない!体が動かない!このまま死ぬのか!?…何で、何で殺されんといかんのじゃ!血の気が引いたはずなのに、理不尽すぎて今度は頭に血が昇ってきた。
抵抗できる力がない!悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!
『ピンポン』『ピンポン』『ピンポン』『ピンポン』
「おやめなさい!カイゼリウス!」
美しい声が響いた。
「セルージュ様!お身体の方は!ご無理をされてはいけません。まだお休みになられていなければ」
「問題ありません。ポーションが効いた様です。貴方ですね。あの薬を授けてくれたのは、心より感謝いたします」
と言いながら、腰が抜けて動けないでいる俺に近づき屈みながら俺に頭を下げる。
「おやめ下さい。セルージュ様!そのような下民、いえ罪人などに頭を下げる必要はございません!」
とカイゼ…もういいやガナス2号で。(俺の中での命名決定)
「おやめなさいカイゼリウス!貴方達の会話は全て聞こえておりました。助けてくださる方に対しての無礼な態度。この地に身を置いたというのにも関わらず、今だに下民だと蔑む発言。更には助けようとご尽力いただいた方に対して、お礼を言うこともなく命を奪おうなどいう愚行を犯すとは。上司として、いえ人として恥ずかしく思います。やはり、貴方と私とでは歩む道が違った様です。遅くはありません。父上で有らせられるチェンストア卿に頼み、この地から出て行くべきです。卿としても叛逆行為に加担したとしても息子には甘いでしょうから」
なんか分からんが上司エルフさんに三行半を突き付けられたぞガナス2号!ざま〜って、いかんいかん、人を呪わば穴二つ。(南無南無)
「貴方様のお名前をお聞かせいただけますか?」
「えっあっユイルです」
バックには無いはずの華が咲き乱れる。エルフスマイル!パネーす!
「私セルージュ・アイスレストは、ユイル様に心から感謝の意を込めて」
言葉と同時にユイルの手を持ち上げ甲をキスをした。
(わー何これ何これ!よくわかんないが、美形王子様のワンシーン的な?美し過ぎる!女性達がこういうシーンでキャーキャー言うの分かるわ!男の俺でもドキドキものだ!)
下世話な感想しか出来ない残念なユイル少年である。
「セルージュ様!!」
静寂した空間にカイゼリウスの怒りに満ちた声が響く。
「ここではゆっくりお話できませんので、まずはユイル様のお部屋に向かいましょう」
セルージュさんがそう言うと虎さんがひょいっと、腰が抜けた俺を持ち上げ『お姫様抱っこ』状態に。
恥ずかしい。
恥ずかしいが、一刻もココから離れたい俺だが動けないから背に腹はかえられぬ、この状態を甘んじて受けよう。




