只今、マリトル王国に潜伏中です。マリアヌの街 3
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どしてこうなったのか理解できない。
『風が吹けば桶屋が儲かる』並の連想ゲームの末がここにある。
「ぱっと見た目、普通のキャラバン仕様の馬車を作って」が「ぱっと見た目、魔道具を駆使した最新鋭の浮遊した箱(?)と偽装用ゴーレム:スレイプニル付きが出来た」
この二つの間に何を入れれば繋がるんだ!
「ぱっと見た目」以外「馬車」すら残ってない。
「…偽装用で車輪を付けてくれる」
車輪を付ければ…と淡い期待。
「せっかく船を見せてるんじゃ、浮いてるなら『アースの店か』と直ぐわかるじゃろうて」
浮いてんのがアースなんかい!…ん?あれ?もしかして。
「街用はこれ良いけど、他の村を回る時は世間から浮きすぎてダメでしょう。少なくともこの国で乗っても誰もアースだとわからない、見た目だけはこの国の普通の馬車にしか見えないものを追加で作ってよ」
「ふむ、この国の普通の馬車に見える様にか?」
「そう、絶対に外見だけはこの国の普通の馬車に見える様にね」
「普通」の言葉のフレーズが「アースの普通」に勝手に自動変換されてたようだ。
それだとアースが『おかしい』の枕詞になってしまう。
初めはその路線で行こうとは思ったが、周りから俺があの二人と同じ穴の狢だと思われてると気付き、急ぎ一部を軌道修正した。
あの二人の基準がおかしいように思われているが、あの二人の中では、カタログ通販などを基準に考えているのだろうと予想がつく。
ってことはやっぱり俺がおかしいのか!?
〈ユートの回想〉
「暗くなったら家に帰って来なさい」と子供に言いって遊びに出す。だが暗くなっても帰って来ない。
心配になり探しに出ると、家の近くの街路灯の下で遊んでいた。なぜ、暗くなったのに家に帰って来ないのかと子供を叱ったら「ここはまだ明るい」と言い返されたと同僚が苦笑していた。
その出来事が衝撃的だったのか記憶が蘇った。勿論、その同僚の名も顔も思い出せないが、仲が良かったことは思い出した。
ってか、このおっさん達の発想は子供か!当時、その子供はまだ幼稚園児だった気がする。
よし、皆んなへの通達案件ができた。
こうして「注文した魔道具がなぜこうなった?」事件は概ね解決し、今後の注文に対しての注意点が設けられた。
一人の女性が上機嫌に同僚の女性の元にやって来た。その女性の肌を見るなり、同僚女性達の目の色を変える。
「どうしたのよ!その肌!ぷるんぷるんじゃない!」
「ちょっと教えなさいよ!」
姦しい声が聞こえる。
「ふふ♡良いでしょう!このハリとツヤ!おかげで朝から幸せよ!」
悦にしたりながら、頬を触る女性。
「何やったの!いいから早く教えなさいよ!」
凄い勢いで質問してくる。
「え〜仕方ないわね。『アース』ってキャラバンが出してる化粧水よ。ほら、例の浮いてる船の店よ。少しお高いけど、もう手放せないわ」
「どこで買えるの!店の場所をお願い教えて!」
「朝市に出店してるわよ」
「「「「「朝市ね」」」」」
マリトル王国第三都市マリアヌ朝市。
銅貨25枚支払えば、誰でも出店できる朝市だ。
2の鐘から8の鐘まで毎日開催されており、街の生活を支えている。
そこに2の鐘前から突如現れた、異常な熱気を放つ人物たちの長蛇の列。
男達は商談の番号札を勝ち取るために、女達は購入用の番号札を射止める為に日の出前から列んでいる。
「今から番号札を配布します。そのまま並んでお待ちください。まずは通常買のお客様から配布します」
番号が書かれた札を順番に配って行く。
「では商談用の番号札をお配りします。今日中に商談の番号が呼ばれなかったお客様は、翌日以降の商談となりますことをご容赦ください」
「何!俺はライテル商会の者だぞ!こんな朝から列ばしておいて、今日中に商談できないとはどういう事だ!」
凄い剣幕で、身なりの良い中年の男が怒り出す。
「申し訳ございません。ここの皆様もご理解の上で列ばれております。一時の現象だと思われますので、もう暫くしましたら落ち着くと思われますので、それまでご容赦願います」
「ふん、仕方ない。今日は様子見がてら並んでいただけだ。後日商談をしてやろう」
そう言うと部下らしき人物と一緒に帰って行った。
他の商人達は彼を横目で見送る。
「なぁ、坊主。本当に直ぐに商談できるようになるのか?」
中年の男が寒さを堪えながら番号札を受け取りながら質問する。
「皆様の興味が無くなりましたら、そうなりますね」
笑顔で答える黒髪の少年に、皆が思った。
((((((((((ならね〜な))))))))))
そこに謎の浮いた馬車?がやって来た。周りの人物達の熱い視線が一気にが集中する。
「番号札の配布ありがとうございます。ユートさん」
「いいえ、ただ商談番号札が2894番までいきましたよ」
「仕方ありません。一度、商談番号札は終了しましょう。あとで立札に『3000番で商談受付は一時終了』と掲げておきます」
「じゃ、私はセナルトさんの手伝いに向かいます」
「セナルトさん手伝いますね」
「助かるぜ。まさか毎回こんなに列ぶとは思っていなかったぜ」
嬉しそうに開店準備を始める4人。セナルトさんと双子のゼイナスさんとバルナスさん、そしてロイトさんだ。
双子は元々セナルトさんが営んでいた食堂で食い逃げしようとして、セナルトさんに捕まった元浮浪児である。
セナルトさんが「働いたら飯を食わしてやる」と言われ、それからずっと住み込みで働いていたが、人気があった食堂が目障りだった大手が、セナルトさん達の食堂を潰す為、罪をでっち上げられ、3人まとめて監獄送りとなった。
ロイトさんは、子ども達と一緒にやって来た後発組だが、こちらも同じような理由で獄送りとなった人物だ。
今、販売しているのは中華まん、コロッケ、唐揚げだ。
実は楽園内でもこの3つが大人気で『ハウス』の2部屋分を潰して、『揚げ物調理工場』と『中華まんの生地製造工場』を創設した。
生地は小麦粉にイースト、ベーキングパウダー、砂糖、塩、ドライイーストを加えて発酵一次発酵に二次発酵と、なかなか手間がかかり、とても楽園内の販売数には追いつかない。
なので、生地作りをマスターした4人は生地は工場で製造し、具の考案と改良に乗り出した。
パン以外で熱々でモチモチした中華まんは、どこの誰かが名付けやがった所為で、既に『アツアツおっぱい』と呼ばれるようになっていた。
材料の分析と作り方はメイドさん達にお任せ。
食べたものを分析して再現できるスキルはまさに神です。
快適人生様ありがとうございます。
屋台でのコロッケと唐揚げは、工場の出来立てを俺のアイテムBOXに入って置くので、いつでも出来立てのアツアツ提供。
4人は中華まんの具を包みセイロで蒸し、俺が会計をする。
朝の6時なのに人だかりが出来ているのでなるべく早く準備開始。
「唐揚げとコロッケのみのお買い物でお待ちのお客様は、横にある小窓へお進みください」
そう言うと半分ほど此方に進んできた。
「ご注文をどうぞ」
俺は先に唐揚げとコロッケのみのお客様を捌いていく。
しばらくすると、あったかい湯気が立ち上り中華まんが出来上がると唐揚げとコロッケのみのお客は減った。
名前だが『中華』とは何かと説明を求められても困るので『アースパン』と新名した。
唐揚げとコロッケのみご購入予定のお客様が途切れたところで、小窓販売終了。
通常のアースパンと唐揚げとコロッケの販売に移行した。
「アースパン、唐揚げ、コロッケの販売の最後尾はこちらです」
プレートを掲げて最後尾に立っているのは、ハンターギルドに所属している孤児院の子だ。
実は、化粧水一般販売の列に、ちらほら子どもが並んでおり、気になって聞いてみたら。ハンターギルドで順番待ちの依頼がでており、なかなかの人気の仕事らしく張り切って列に並んでいる。
ならばと、最後尾プラカード係の募集を出したら、これまたすごい争奪戦が繰り広げらと聞き、他にメニューの説明&列の誘導係2名、一般販売番号&商談番号の呼び出し係3名の計6名を毎日雇う。
「この金額でですか?」
「安いですか?」
「逆です。高額過ぎです。Gランクですと、赤ん坊の子守や手紙の配送、買い物の代理辺りが人気ですが、それでも銅貨10枚〜20枚です。銀貨1枚なんて揉める元です」
「でも2の鐘から8の鐘までの長時間の拘束ですので銅貨50枚です。これ以上は引けません」
「…初めてですよ。依頼者と支払額の値引き交渉したのは。分かりました。銅貨50枚で依頼をお受けします。日数はどの程度の予定でしょうか?」
「とりあえずは明日から毎日お願いします。一ヶ月以上は継続予定ですが、休業日など決まりましたら前もってご連絡いらします。出来るだけ偏りなく分配してあげてください。あと簡単なお釣りの計算が出来る子がいたら別口で依頼を出します」
「子ども達が大喜びするでしょうね」
最後は依頼の受付窓口の人も笑顔での仕事依頼を受理してくれた。ちなみに窓口は中年のおっちゃんでした。
別にいいけど。
6名+別口採用の子2名のお昼は、俺が用意したサンド系とあったかスープを交代で食事を取ってもらう。
別口の子二人に簡単な計算テストをしたがスピード的に少々難しかった。ゆっくり店番なら問題ないレベルだったが回転率で勝負のものでは少々厳しそうだ。
本人達も採用されないかもと思い、しょげているが問題ない。
セットメニューとして『初めてアースセット』は銅貨10枚と『揚げ物セット』銅貨5枚を看板に掲げる。
『初めてアースセット』はアースパン1つ銅貨5枚、唐揚げ3個で銅貨4枚、コロッケ1個銅貨2枚でセット価格は、銅貨10枚。
『揚げ物セット』は唐揚げ3個で銅貨4枚、コロッケ1個銅貨2枚、セット価格で銅貨5枚。
どちらも通常より銅貨1枚分安いセットだ。
多くのお客さんは、このお得な組み合わせでの購入が多く、単品での注文者はほとんどいない。
これなら計算も簡単に出来ると喜んだ。
化粧品販売にも問題があったので、お試しセットを作っみた。こちらの理由はかなり違う。
「女性達の品選びの滞在時間が長くて困ってる」と、回転が悪いと報告があった。どれにしようかと真剣に悩んでるようで、確かに安くはないから気持ちはわかる。なのでそっと背中を押してあげる。
セットの中にはタオルハンカチもしくはガーゼハンカチをランダムに入っている『限定セット』販売にしてみた。
ほとんどのお客様が限定商品が目当てなので回転が早く、スムーズに流れていく。
ハンカチはマーキュリー内の店に3つで1000エンで販売されており、同じく船内で販売されているプリント生地で作られた巾着袋1つ100エンでラッピング。飛びつかない理由がない。
既にウチのハンカチと巾着袋を持っているのが、ちょっとしたステータスになっていると噂でも聞いてる。
売っといて何だけど、セット価格が銀貨4枚にもなるのによく買うよな〜。
依頼した子供達のおかげで少し時間が出来たので、待ってるお姉様方に色々聞いてみた。
Q:高く感じませんか?
A:そりゃー高いわよ!でも2ヶ月間は持つから、月に銀貨2枚であの肌が得られるならお安いものよ!限定セットってお得感あるし!でもあのハンカチ、一体何種類あるのよ!揃えたくなっちゃうじゃない!
と言ったご感想が多かったです。乙女心は野郎集団には難しいです。
〈ユートの回想〉
「なんで大量にクッキーを買ってきたの?」
「だってこのクッキー缶可愛いじゃない!つい欲しくなっちゃったのよね」
「でも1つだけで良かったじゃないのか?」
「可愛いから、つい揃えたくなっちゃうのよ!だから中身は皆んなで食べてね」
「「「え〜」」」
蘇る、女性の同僚が買ってきたクッキーを、他の男性達と共に食べさせられた甘い記憶(?)。
「どうして、セットにしただけで、あんなにもスムーズに選んでもらえたのでしょう。2回目のお客様もいらっしゃいましたが、余り迷いなく選んでいました。確かに物は良いのですが、以前はずっと悩み続けていたお客様のお一人です。いくらオマケがあったとしても余りにも悩まないでの購入です。何か理由でもお有りなんですか?」
サテスさん達、商会チームが尋ねてきた。
俺がちょこっと携わっただけで、スムーズに流れが変わった事が気になったらしい。
「あ〜、人間は選択肢が多いと悩んじゃう生き物だからね。これで良いのかとか、本当にこれって正解なの?ってね。だからたくさんの商品の中に一つ『これは正解』と思わせたら買ってもらえると思ったわけ。特に高額品なのにお得感があっるならまずは手に取るんじゃないかなって。そして魅力的なハンカチのおまけ付き、幸福感が足されて次もって購入したんだと思うよ。今回は色々な種類のハンカチを集めたいっていう思いと、限定という特別感が刺激になって再度購入しようと情熱が続いている人も多いみたい。でも、そろそろ第1弾の限定品は終了かな。人間は幸福を感じるピークは買う前や最初に購入した時で、それ以降は徐々に薄まっていくから、余り続けると限定の価値が下がっちゃうからね。あと、他の品も選択種は少ないく同系列の品は多くても5ぐらいまでで揃えた方が、お客様の回転が早いと思うよ」
ジャムの法則:選択肢が多すぎると迷いやストレスが生じ、逆に何も選べなくなってしまうという心理現象 別名「決定回避の法則」
「分かりました。一度販売メンバーたちと話し合ってみます」
サテス達は思った。
13歳の子供に何気なくした質問に返ってきた答えが、練達した商人と思わせる内容だった。
『勇者達の世界とは、品質も子供の教育もここまで進んでいる世界なのか』と驚愕した。
次の更新日は、6月10日水曜日です。
更新時間は不規則です。
0時過ぎに更新出来なければ、17時〜22時になります。




