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只今、マリトル王国に潜伏中です。マリアヌの街 2

「第二回、ガラポン大会はじめま〜す」

「「「「「「「「「「おおおおおおおおおっっ!!!!」」」」」」」」」」

 日本では12月頃である十一の月。真冬に入ったというのに相変わらず凄い熱気だ。

 役人さん達も楽しそうだけど見張は大丈夫なの?

「ああ、冬しか来ない商人が昨日来たから、もう春まで誰もこないからね」

 それで皆さん来てるのね。降伏者の食事当番の人だけが途中抜けするだけで、お仕事は春まで特に無いそうだ。

 俺の仕事は開始の挨拶と景品を卸すだけで、ガラポン管理はケイルさん達が行ってくれる。そして会場周辺に出ている屋台も運営している。

 商魂たくましいですね。


 そこに強面の方がやってきた。見慣れない人だがあっ!あの顔はお頭の弟さん!?

「お前さんがユイルさんかい?俺はグラドールの弟でグラデールってんだ。よろしく頼むぜ」

「はい、ユイル・モーニアです」

 そう言って出された大きな手と握手をした。

「お前さんの商品をウチでも扱わせて貰いたいんだが」

 早速、商談開始でのようだ。

「あ〜、条件付きで良いなら構いませんよ。ちょうど良いのでこの大会が終わったら、ここの商人さん達と一緒にお話しますので、夕方までお待ちください」

 怪訝そうな顔をするグラデール。

「他の商人って、そんなことしたら旨みが少なくなるんじゃねぇか?」

 普通に考えればごもっとも。だが、

「いや〜、逆に一人で抱えたら大変なことになりますよ」

 更に不機嫌そうな顔をするグラデールの肩を、兄のグラドールが軽く叩きながら

「言うこと聞いといた方がいいぞ。この成りだが下手したらジジババ達と張り合えレベルだ」

「「「まじか!!」」」

 なんか周りのメンバーも凄い反応で俺を見る。てかジジババ達って誰?



 無事?本日のガラポン大会は終了。

 楽園に入り、商人さん達3人も集まった所で今後の話をする。

「まず、これからお話する事はここだけの秘密厳守でお願いします」

「わかった。守ろう」

「我々も同じく」

 商人さん3人とも首を縦に降って頷く。

「この美容シリーズは間もなく、マリトル王国のマリアヌから発売を開始いたします」

 その言葉に皆んなが驚く!

「なぜ外で販売できるんだ!?それもかなり遠い街だぞマリトルは!」

「簡単に説明すれば、このディメンションエリアのような特殊なスキルのおかげですね。首輪を同じ理由で既に外れております」

 その言葉に妙に納得した模様だが、グラデールはグラドールの首輪をじっと見つめる。

「全ての商品は『アース』の名で世に出回り、いずれ貴族だろうが王族だろうが関係なく欲しがる品となるでしょう」

 すごい勢いで頷く、髪がフサフサになった商人さんとその仲間。

「その為、品を卸す場所が重要となります。今はマリアヌですが、特殊な移動手段でマリトル王国や近隣の国を席巻する予定です」

「どんな乗り物かも気になるが、それよりなんでそんなキャラバンみたいに移動するんだ?わざわざ移動なんかしなくても、腰を落ち着けて相手に来させる方が良いだろう」

 グラデールが納得がいかない顔をして質問してくる。

「勿論、本来はそうでしょうね。そのほうが良い事も有りますが、不利益もあります。例えば盗人やその仲間が入り込みやすくなったり、旨みを感じて貴族や大商会がしゃしゃり出て来るなど」

 経験があるのか皆が納得している。

「住所不定なので長期で仲間を商会に忍びこませ襲うことも、領主命令や国の命令も届きません。おかしな命令が来ても、その領から店ごと移動すれば済みますし、最悪、他国へ移動する事も可能です。もし、ウチの品を扱わない入荷しない!と脅されても、基本生活に必要性が少ない嗜好品ばかりです。平民はあまり困りませんが、困るのは金に物を言わせ、見栄を張りたいご本人様達です。特に化粧品が手に入らなくても生活に困りませんが、女性陣にかなり恨まれるでしょうね」

 どうやら納得してくれている。すでに化粧水などは、お姉様方で実証済みの品だ。

「ですので、この地が定期的に入手可能な場だとバレてしまうと注目が集まり、大変なことになります」

 全員が息を呑む。かなりの争奪戦となる予想が出来たのであろう。

「幸い、グラデールさんは他のお三方とは違う別ルートでこちらにお越しになっている非公式の商人ですのし、お三方も販売方法や国での独自ルートをお持ちの様ですので特定される可能性は少ないですが、品不足となった時はお気をつけてください」

 中には是が非でもと、探りを入れて来る者も居るだろう。

「商人さん達は既に仕入れ品目や数量を決定しているでしょうが、グラデールさんも交えて、もう一度検討してください。先ほどの話を踏まえ販売領域と品目につきては再度検討をお願いします。決まりましたら、こちらで一度確認いたします。で、一番の秘密事案は、私がここを自由に行き来できる事と、外の世界ではアース国の王でありアース商会の会長であるユート・アースだと言う事をです」

 俺はユート・アース時の姿を見せる。見たくれは今までと変わらずに黒目に黒髪に偽装。

 話の内容に皆んなが驚きながら頷く!

「そして今後やろうとしているのは、ここに放り込んだグリムモア王国に嫌がらせをする事です」

「ち、ちなみにどんな嫌がらせを…」

 商人さん達にしたら気になるだろう。国の状況が自分達の生活に大きく関わる事だけに。

「皆さんが広めてくれる、アースの化粧品が市民には入るのに、グリムモア王国の大商会だけには卸さレないので、金持ちや上級貴族ほど手に入りにくいとか。オークションで凄い品を出品する事で競わせて、大手商会からも借り入れが出来なくなるほど散財させるとか。アース本店がグリムモア王国だけ出店しないとか。まずは地味にチクリチクリと」

 (ほとん)どの特権階級の方々は体裁やら見栄で生きている。さぞや悔しがるだろう。

「確かに貴族達が切望しても手に入らないのは屈辱に感じるだろうな。特に庶民には手に入と知れば…」

 納得しながら腕を組んで考えている。

「マジで、これならジジババ達と張り合えるぜ」

 何度も話に出てきますがジジババさん達と張り合う気はございません。てか誰?

「でも移動するって言っても、見つかって捕まるんじゃ意味がないと思うんだが」

 ごもっとも、普通ならそうでしょうね。普通なら。

「はい、多分見つかりますね。でも私が招待しないかぎり、本店に尋ねて来る事が出来ませんから」

「「「「「?どう言うこことだ?」」」」」

「空を飛んでますから、うちの本店」

「「「「「?空?」」」」」

「すぐに噂が流れてきますよ」

 外の大陸からやって来た船、王族が乗った船、仲間を探しに来た船、商会本店の船、そして空を飛ぶ船の噂が。


 役人さん達は、もうすでに楽園内に住んでいる。既に懐柔済みだ。

 換金業務と外の役人村の定期的な見回り、後は降伏者達の管理が主な仕事でお給金も支払っている。

 この事で、家族の安全が脅かされる様なら、ここへの呼び寄せや他国への亡命手配というオマケ付きだ。


 降伏者達にも追加で厚手服と毛布を配っておく。

 風邪を引いたら、食事配給時に来ればポーションをその場で飲ませてもらえる。

 牢から出られないという『鞭』に対して『飴』をばら撒く。「今度、敵対したら次は助けてやらねぇ」と、ちょっぴりスパイスを追加して。


 商品の卸元はお頭だ。俺はガラポン大会時に品を卸す。

 以前の湿布薬と手荒れ用クリームは、俺の手作りなので製造が追いつかない事を理由に、卸し品からは除外した。

 アース商会からの卸値はこうなった。

 

 化粧水 銅貨20枚(原価1000pt) 

 保湿クリーム 銅貨40枚(原価2000pt)

 美容液 銀貨1枚(原価5000pt)

 ボディーミルク 銅貨20枚(原価1000pt)

 シャンプー 銅貨40枚(原価2000pt)

 トリートメント 銅貨40枚(原価2000pt)

 高級固形石鹸 銅貨4枚(原価200pt)

 洗顔クリーム 銅貨20枚(原価1000pt)

 ボディーソープ 銅貨20枚(原価1000pt)

 ふかふか大判タオル 銅貨20枚(原価1000pt)

 育毛剤 銀貨2枚(原価10000pt)

 ベッドマット 銀貨2枚〜 など


 銅貨1枚が100円程だ。原価の2倍の卸値は妥当だと思えたが、小売価格を知って、俺だけがビビった。

 価値としては正当な、いやリーズナブルな金額だと言われており、俺一人だけ心の中の『良心』がのたうち回っていた。


 商品は、無くても日常生活に支障が出ない品をラインナップ。

 ワンランク上の高級品もあるが、予定通り庶民使用品を中心としている。他に欲しいものはここで普通に買い物してもらう事にした。

 ただ、庶民向けではないが、育毛剤とベッドマットは商人さん達に切望されて採用した。

 ベッドマットだけは俺が直接の卸元になる事で同意されている。かなり嵩張る為、今回は同盟商人としてマジックバッグ大をプレゼント。レベル3の容量は1000㎥あり、倉庫一つは入る大きさだ。


 銅貨1枚=1ユイの換金は無料にした。商人さん達がここでの買い物や、役人さん達が家族の仕送りが可能になる。

 忘れないうちに『マーキュリー』も貨幣交換できるようにしておこう。


 

 作業を終えてハウスに帰ると…

「すみませんユートさん。少々困った事態が…」

 セルージュいや、セルジュオさんがやって来て話かけられた。


▶︎困った事その1

 商業ギルドで昨日卸した品をもっと大量に卸して欲しいと、ギルド長から詰め寄られたこと

▶︎困った事その2

 もう一度あの船を出してくれ!と街の住人から頼まれたこと

▶︎困った事その3

 子ども達がやたらと後を付いてきて、用事かと質問しようとすると逃げ出し、理由がわからなくどうしたら良いのか対応に困ってること

▶︎困った事その4

 ドワーフが作った馬車が高機能過ぎて、使用する前に確認して欲しいこと


 ハウスの会議室には皆様が集合していた。

「では、直ぐに解決できる事から。もう一度船を出して欲しい理由はなんと言ってますか?」

「はい、たまたま見損ねたり、同じように街に居なかった人物がどうしても見たいという事と、他にも危険が無いならもう一度しっかり見たいという街の住人達の要望です」

 問題無い。ただの娯楽の様だな。

「ならば、街の入り口近くに停泊許可が出たら出現させましょう。皆んなも街への移動距離も少なくて済みますから」

「承知しました。その様に交渉いたします」

 セルジュオさんのサポートとして、ハインさんとランドさんが付いている。流石は元家宰だけあって完璧だ!年長組の教育も任せて安心だ。

「次は子ども達の件ですが、ごめん。これは私が原因です。余りにも退屈そうだったので、自分たちに出来る商売があるか、船内でもじっくり観察してくる様にと言ったものだから、それで「製品の観察」がいつの間にか「大人達の観察」になったかも知れない」

「ああ、理由が分かれば問題ありません。ただ毎回、目が合うと逃げるんで問うことも出来ませんでしたので。わかりました。今度見てたら『自分で答えを見つけ出せないと、一人前の商人には慣れない』とでも言っておきますよ」

 笑って答えたサテスさん。他の大人達も苦笑い。

「馬車ですが、…直ぐに確認します」

 今更だ、隠す用途が少ないが一度確認しておこう。


「最後に商品の卸しについてですが。どのような要望でしょうか?」

「はい、昨日ギルドに卸した品が既に完売したようで、購入出来なかった者からの直接交渉を受けました。ギルドからも、購入した商会からの追加希望が出されたようで、ギルド長からは執拗(しつこ)く催促する商会の間をとるので出来るだけ多くの品を卸して欲しいと要望されました」

 まさか1日で完売とは。この世界には鑑定スキル持ちや交換量りってものがあるから、商品を使用しなくても効果がわかっちゃうのかも。

「当初の予定通り『ギルドに卸したのはこちらの貨幣を所持していなく直ぐに現金化したかっただけで、既定である食の木以外は全て、民を見つける為に出店するキャラバンで販売します』と伝えておいてください」

 セルジュオさんやサテスさん達が驚いた顔をする。

「よろしいのですか?こう言っては何ですが予想以上の反応で、サテスさんとも話し合いましたが、ギルドに卸せば繋がりが強くなりますし」

 確かにね〜。でも、

「ん〜まだですね。繋がるならもっとガッチリと、向こうが絶対に離れないぐらいにね。でないと海千山千の商業ギルドに、いつの間にか使われるだけの世間知らずの商会になり下がってしまいます。良いように使われるのと、良いように使われてる()()では雲泥の差がありますよ」

 大方、子供が商会長なんかしてるお飾りの商会だ。どんどん金の卵を産むチョロい鵞鳥(ガチョウ)が現れたとでも思ってるだろう。

 格下に見られるのが嫌だと思う人は多い。

 だが明らかに格下だと思う相手には、格上の余裕を見せ付けて本気では戦わない。(たまに子供相手に本気になる大人もいるが)甘く見て少しでも手を抜いてもらえれば、その分の勝率は上がる。

 そして、世間や周りの評価や期待値が低いほど、成功した時の評価は高くされる。(自論)

「どの道、馬車もすごい事になってるなら、初大陸でのアース商会開店です。派手に行きましょう。金の卵を産む鵞鳥を殺すような商人はいませんので」

「金の卵を産む鵞鳥ですか?」

「はい、金の卵を産む鵞鳥です」

次の更新日は、6月8日月曜日です。

更新時間は不規則です。

0時過ぎに出来なければ、17時〜22時になります。

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