只今、ダンジョン内を逃走中です。5
昨日の話し合いの結果を子ども達にも報告する。
但し、真実は年長組のテール達だけに伝え、それ以外の子どもには俺が『遠い国の王様』だと伝える。
「まさかユイル、いえユイル様が勇者様だとは!」
「違います。正しくは「勇者召喚に巻き込まれた異世界人』です」
そこははっきりしておかねばならない。それが俺のアイデンティティー。
「なのでこれからは君たちの先祖は元々俺の国の国民って事でよろしく」
「あぁ分かった。ところで国の名前は?」
「まだ決めてない。細かな設定なんか決まったら伝えるよ。チビ達には頑張れば王様の家臣になれるぞ〜とでも言っといてくれ(笑)」
「ハハ、家臣かスゲーな!親無し家無しが王様の家臣!チビ達の前に俺達が頑張って家臣に成らないとな!」
「ああ、頑張ってくれたまえ!ただし今の俺はディメンションエリアしかない家無しの王様だけどな」
テール達とくだらない会話をひとしきりして、次の行動へと移す。
「〈変換吸収〉〈変換吸収〉〈変換吸収〉〈変換吸収〉〈変換吸収〉〈変換吸収〉」
テール達と別れて16階層でスキルの検証実験をしています。
【変換吸収】周囲の魔素を吸収しMとして一時保存できる(吸収範囲はレベルに準ずる)
このギフトは、本来HPを消費して作る魔素を使用しなくても周りに存在する魔素を利用し、魔法やスキルを発動される事ができる。そう、周りに魔素がある限り制限なく連発し続ける事ができるやも知れぬ恐ろしいギフトだ。
魔法やスキルはHPをMに変換して使用する。使用時に余ったMは体にしばらくの蓄積され、時間がたてば霧散していくのだが、この一定時間余剰分を保管される機能を利用しているのではないかとセルージュさんが解析した。
そして俺の場合は霧散ではなく『余剰貯蓄』に貯まっていくと推測され、早速試すことになった。
そこで魔素でてきたモンスターにも使えるのか試してみたら使えた。
レベルが低い事が原因なのか、初めは1体倒すのに数回の発動が必要だったがレベルが2になってからはオーク辺りなら1回で終了。そして素晴らしいことに魔力を吸収されたのに、モンスターの魔石にはちゃんとMが残っていた。
まだ手で触れないと発動できないのが難点だが、1日でレベルが上がったんだ少し頑張ってみよう。
こうして夕方近くまで頑張った事でレベルが3となった。
「『スキルの書生成』ですが、おそらく『魔法の書生成』や『付与魔法』と同じ条件かも知れません。」
「じゃぁ、アイテムBOX辺りから試してみよう」
夕食後に『スキルの書生成』を検証してみた。
付与魔法と同じなら付与する魔法やスキルのレベルが2以上の物が必要であり、付与魔法のレベルは成功率は比例している。
【付与魔法】は、付与されたモノは全てレベル1で、レベルアップはされない。つまりレベルが4でもされた物は全てレベル1しか付与されない。
だが俺の【スキルの書生成】と【魔法の書生成】はギフト扱いだ。本来、一般的に知られている【魔法の書生成】のスキルはエクストラスキルに当たるので、何が違うのか解明の必要がある。
エクストラスキルの【魔法の書生成】や【付与魔法】もなかなかの魔力量が必要なの上、己が所有している魔法やスキルしか付与出来ないという事もあり、他の魔法を取得していない者は大金を叩いて魔法の書で取得するか、商会や貴族のお抱えとなり支援を得る方法のどちらかだ。
そして、大雑把に言うとこのスキルに関しては、レベル2や3は一人前、4や5は一流と認知されている。
【魔法の書生成】で言えば、本を生成できるのはレベル2からだ。そして成功率は一割ほど。チャレンジ回数は1日平均2回、レベル2では効率が悪い。
なので殆どのスキル保持者はレベル4になるまではレベル1で取得した『魔法紙生成』を発動させ、ひたすらレベル上げに勤しんでいる。
魔法紙も需要も高いため、本が作れなくても食いっぱぐれることは無い当たりスキルだ。
だがレベル4以上になるにはかなりの時間がかかるり、その頃には「魔法の書」を作る体力も落ちておる為、制作個数が自然と減り、供給が追いつかなく高額な値が付けられている。
昼間、貯め込んだ「貯蓄M」がエグい数字なので丁度いい。
「〈スキルの書生成〉」「〈スキルの書生成〉」「〈スキルの書生成〉」「〈スキルの書生成〉」「〈スキルの書生成〉」……
「昨日、大量に作りました『アイテムBOX LV.3の書』です。欲しい方どうぞ。ちなみに時間経過が半分ほどです」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「今後作ったスキルの書などは倉庫に入れておきますのでメイ達に聞けば一覧がわかります。足りない魔法の書は言ってもらえればすぐに揃えます」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
検証の結果、レベルの成功率は同じ様だが、レベル7のアイテムBOXで試したら半分のレベル3になった。他のレベル6や5、4で試すと6ではレベル3が生成、5と4ではレベル2の書が生成された。ならばと『魔法の書生成』でも試すが結果は同じ、スキルの書に関しては『エクストラスキル』は生成出来なかった。レベルに依るのかは今後も検証していく。
「ユイルよ、そんなことより移動手段がLV.4になっておたじゃろう」
「おう、わしも見たぞ!なぜ黙っとったんじゃ!」
二人のドワーフが詰め寄ってくる。
「黙っとるんじゃなくて気が付かなかったの!」
嘘です。気が付いてたけど、また購入しろとうるさいから余裕が出るまで黙ってました。
「仕方ない、じゃーまず何があるか見しとくれ」
「楽しみじゃのお楽しみじゃのお」
ワクワクドワーフに責付かれ『移動手段 LV.4』を開く。ちょっと、顔が近いって。
「はいはい」
仕方なく開くと「小型高速船」となっていた。だが
「ん?『ステルス機能』?『水中遊泳』に『海底探索機能』?とりあえずはしばらくは使用用途がないので購入はしないよ」
船だと分かり少々テンションを落とす二人。
「うむ気になるが確かに…試せれんしのう」
「仕方ない、代わりに『つくるくん』貸しとくれ」
「え〜、分解は無しだよ」
「やりゃーせん、約束通り自律機能が備わった魔道具は分解せん。ちょっと手伝って欲しいんじゃ」
「ならいいけど、一応キンかギンに操作と通訳頼んでね」
「「分かった」」
以前、オートマタ達を分解しようとして危うくここから追い出されそうになった二人。その後は少しは大人しくなった。はず。
立ち去る二人を見送る。
「……………」
良かった気づかれてない。小型船なのに『飛行可能』って何なんだよ!偽装用ゴーレムで『ペガサス』に『グリフォン』、水中遊泳・海底探索用は『バハムート』!これ偽装の意味あるんか!?ってか何に対しての偽装だよ!
まあ、海を渡ってきた時の乗り物としては使えるからここを出る日が決まったら購入しよう。
今日の出没ポイントは17階層にしよう。最近、地図と探知スキルのレベルが上がった事で宝箱発見率が上がっり、ダンジョン内を楽しく散策中。本日も『変換吸収』使ってどんどん狩りまくるぞ!いざ出発!
「ドワーフの二人が入ったことで話がそれてしまったが。サラッと凄いモノ作ったな」
アイゼルさんが口を開く。
「ええ、セルージュさんの『海を渡った他国の王族』設定は良かったと思います」
としみじみと答えるサテスさん
「元々は異世界人ですからね、こちらの常識に疎く、色々な面でズレてます。王族辺りの方が納得されるでしょう」
セルージュさんの話に周りの一同が大きく頷く。
「ユイルさん、商品にちょっと注文というか依頼があったのですが」
「へ〜どんな内容?」
今日は出発前に久しぶりに『楽園』に顔を出した。
しばらく変換吸収の仕様確認を兼ねてM収集に明け暮れていたので様子見にやって来た。
「もっと性能が良い武器が欲しいがどれくらいの品質と金額になるかって」
「ん〜商会チームと検討してみて。とりあえず最高品質ならこんな感じ」
そう言って俺の使用している短剣を見せると直ぐ様サテスさん達が呼ばれた。
「何なんですかあの剣の品質は!あいえないでしょう!最高品質を超える品って…まさか魔剣!」
「実は…」
驚く商人達にサテスさん達が俺から離れてこそこそ販売計画の話を始める。
商人さん達、サテスさん達との会話で驚いたり、青ざめたり、ニッコニコの笑顔をしたり、商人なのに面白いぐらい顔に出ているが、大丈夫か!?
結果、店にはナイフでの全品質の見本とそれぞれ大剣や片手剣などの金額を提示された。
「おお!俺の夢だった魔剣持ちになれる日が来るなんて!」
「魔剣でも『幻の精霊級』だけじゃなくて『伝説の大精霊級』まであるぜ」
「落ち落ち酒飲んで居られねー。頑張って稼がんと」
「確かに!もしかして今後もなんかすげーもん出てくるかも知れねーな。しっかり稼いでおかんとマズイな」
「しっかしここは食事は美味〜し、寝床快適だし、外の生活に戻りたくねー、いやもう戻れねー」
「俺マジでユイルの兄ちゃんで良かったぜ」
「おい!俺がユイルの兄ちゃんだ!」
「喧嘩すんなよ!兄弟は沢山いる、兄ちゃんは一人だけじゃないぞ!」
「「「「「そっか!俺らみんなユイルの兄ちゃんだ!」」」」」
「じゃあワシわユイルの爺ちゃんだ!」
「じゃー俺ユイルの父ちゃんな!」
「爺ちゃんはまだしも父ちゃんはずりーぞ。1人しかいねーじゃん」
「ばか、母ちゃんが何回も再婚すれば父ちゃんいっぱいだろ!」
「「「「「なるほど!」」」」」
こうして新たに『ユイルのお兄ちゃんフィーバー』に加え『ユイルの父ちゃんフィーバー』&『ユイルの爺ちゃんフィーバー』が発生した。




