只今、ダンジョン内を逃走中です。3
「なんだ!このふわふわモチモチのなのは!もしかしてパンなのか?!」
そうです。食パンと言う名のパンです。
「もしかして今まで食べてたのは石だったのか!?」
石は食べ物ではありません。
「柔け〜、アイーネちゃんの胸みて〜」
「本当だ!アイーネちゃんの胸みて!」
揉んでないで食べてください。
【魔道具】の『自動販売機』を数カ所に設置し、買い方を教えたら皆さん思い思いの品を購入している。
スープは大量にメイたちが作ってくれている。
運搬は子供姿のサポートパペット達にお願いし、配給はお頭達に頼んでいる。
下手にメイ達を目撃されると騒ぎになるからな。
食堂開始に2日ほど時間がかかりそうなので、その間の皆さんの食事は自販機が中心となる事を踏まえ、使い方を説明したから大丈夫。数台を各所に設置したのから混み合うことも少ないだろう。
新しい食堂ではセナルトさんがハウスで覚えたメニューなどを現調理長に教えている。
現調理長は、端麗な貴公子にしか見えない切り裂き魔の大罪人さんです。
ここに来て野菜を切り刻んでいたら料理に目覚め、セナルトさんを師と仰いでいる。
包丁で刻むことに生き甲斐を感じている人物だ。
「師匠!これこそ私の天命です!このメニューを授けてくれたユイル君!君は私を導いてくれた恩人です!」
と泣きながらハンバーグ用の挽肉を刻んでいる。フードチョッパーあるけど出さないでおこう、ここの平和の為に。
20階層に入り口を作る。これからは、ここから移動をしてもらう。
スタンプは一日限りに成っており、合鍵Cで『通行許可:必要』として、開きぱなしにおいても問題ない。
この階層までは軍もすぐには来られないが、念の為だ。
軍が到着する前だが、仲が良かった交換所にいる役人のにーちゃんが「お前が何階層まで攻略してるか調べてこいって言われたけど、何階層って伝えておく?」と、さらりと二重スパイをしてくれる。
「素材集めに一番多くいるのは植物系モンスター階層だから12ぐらいで」
「おっけ〜」
ささっと袖元に、自分につけても良し、プレゼントしても良しの大人気『ラマトル香水』を差し上げる。
「いや〜、お前のにーちゃんで良かった」
いや〜、俺の兄貴じゃないけどね。
「この剣、この価格で販売するのか!?マジか!」
「この品質でこの値段はありえんぞ!」
「何!防御の指輪と!それもクールタイム無し!売ってるのか!売ってんだよな、あるんだから」
商人さん達興奮してるけど、どの店舗の店員するか、ちゃんと決めてる?
「なんだ!この素晴らしい香りの石鹸は!すごい泡立ちだぞ!」
「この肌着も!貴族仕様か、王宮レベルの肌触りだぞ!」
「すごいぞ!本当に毛が生えた!!」
商品を勝手に使用しないでください!
「どの店屋の店員をするか決まりましたか?」
「「「まだじっくり検討中」」」
「…明日までに決めておいて下さいよ」
武器・防具を扱う店、衣服や日用品・寝具を扱う店、スキンケアー類を扱う店、それぞれお願いする予定だが一向に決まらないが大丈夫か?
翌日には決まっていたが、品質と価格のバランスがおかしいと指摘があり、監獄での金額設定に合わせる事になった。
ここから出たら時に、買い手側からの価格の苦情を考えれば、商人さん達の懸念も分かる。
それでも必要な品や消耗品には、かなり安い価格設定にし『楽園限定価格』という設定で販売してもう事にした。
「クラス様からご連絡が入りました。2階層にて軍の進行が始まりました。との事です」
快適生活ラグジュアリー仕様により追加された『バトラー』は、まるで『不思議な世界に登場する忙しないウサギ』の姿の時空魔法使いでとっても有能だ。
今はクラスさんとタッグを組んで、軍の進行状況を監視をしてくれている。
「バトはクラフさんに付いて移動と連絡のサポートを引き続きお願い」
「承知しました」
恭しく挨拶をし、空間の切れ目に入って行った。
時空魔法、マジかっこいい!
『ユイル様。アイゼル様が探索者様を発見されました。今、箱庭でお待ちです』
『今、行くよ』
【会話機能】【遠隔通話機能】のおかげでオートマタたちと会話が出来、伝達が可能になった事でスムーズに進行している。
「20階層で出会った。事情は話してある」
「では楽園に案内しましょう」
こうして1階層での出来事を聞き、軍への反対勢力への参加者は楽園へ。
「報奨金出されてる仲間なんかの言葉なんぞ信用なるか!それよりガキの隠れ家を教えろ!」
と襲ってくる者はお誘いなしで。
日和見の方々は次々と前線部隊に配置となっている模様、食事もマズ飯レベルしか配給されず、今は六の月だがこのまま進行する積もりだ。
流石に七の月、日本での9月頃の気候だがここは山間部、秋に入れば準備無しの野営はキツかろう。およそ2000人が前線で戦ってる。今はまだ浅瀬の階層だが…
「ぎゃー!!俺の腕が!」
「気を付けろ!まだ寒くねーから動きは鈍くねーぞ!」
「早く魔法ぶっ放してくれよ!」
「まだなのかよ!勇者様はよお!」
「なあ、本当にガキは12階層に居るんだろうな」
「知るかよそんなこと!」
「更に進んでいたらどうする」
「どうするって言われても知らねーよ」
「初めに立てこもってた奴ら結局どこに消えたんだ?」
「知るかよ!」
「進みが遅くなっているな」
「申し訳ございません。下層に行けばかなり広大となり、探知能力のある者に端の方にも探させてはいますが、未だ発見されない様です」
頭を下げる指揮官と部下たち。
「仕方あるまい。あやつはコソコソ逃げ回るのが得意な下世話な蛮民。なかなか見つからぬのも道理」
勇者の言葉を聞いて指揮官の周りの部下達は少し胸を撫で下ろす。
「転移水晶の見張は万全であろうな」
他の勇者の一人が口にする。
「はい。抜かりなく」
「ではなぜ、初日の立て篭もり犯達を未だに誰一人とも捕まえれぬのだ」
確かにおかしい500人以上は居たはずの建物から僅かな時間で忽然と姿を消し、一向に姿を表さない。移動した痕跡が全く見当たらないのだ。
「ディメンションルームというスキルがございます。そこに入りこんだかと」
「500人以上入る大きさなど聞いた事がない。可能性があるかと思いあの付近には監視をつけてあるが、まるで動きがない」
「後から来た罪人達によると20階層でユイルの仲間と思しき人物から、1階層の事を聞いたと話していましたが、当の本人らしき子どもは見当たらず、12階層付近に潜伏しており、未だだ20階層までは到達していない模様です。他の罪人からも見かけたのは12階層だったと報告がありました。消えた罪人達の一部も13、14階層付近で目撃された模様です」
「では、この階層の調査が終了次第、転移水晶の見張はそのままに一度1階層に帰還する。その後、罪人達には11階層から下層階で罪人の目撃情報をとらせろ。有力情報を提供したものには報奨としてこの地からの解放としよう」
そう話すと勇者たちは己がテントに戻っていく。
「ふん、たかだか魔力変換率が高いだけの小童が、粋がるなよ。大業出した後は回復まで時間が掛かると言っては仕事をせぬ上、飯は不味いわと騒ぎ立てるは、やれ風呂は無いのかと怒鳴り散らすは。全く、王も何を考えているのやら、あんな小僧など頼らずとも、わが国の総力を出せば魔人族の国など!」
周りの部下達もその通りだと頷く。
そんなくだらない会話を聞いている、一人とうさぎ。
一方、勇者のテントでは、誰も入れさせぬ室内で湯浴みをしている。
「早くヤツを見つけ、この刻印を消させねば…」
「捕まえれば助けてやるフリをすれば喜んで消すでしょう。その後、奴がどうなろうと」
腕にぐるりと引かれた一本の黒い線を忌々しく見つめる勇者達。
誰にも見られたくない黒い刻印。
「なるほど」
クラフさんの報告で勇者たちがやって来た理由がわかった。
ずっと放置していたステータスボードの一番下。
ユイル・モーニアへの殺害行為を許しますか?(現在の設定NO)
リオート・ビアヌス・ミアトレン YES
フェルナド・バナバ・デュラン YES
ハーデル・フォルバ・デンディ YES
アーデル・ファント・アイアル YES
デューガル・ルルデ・グロデナ YES
「ん〜、明日帰るんだよね1階層に」
「一時的にですが」
「じゃぁ、メッセージでも出しておこうかな」
「なんだこれは!大罪人が1階層にいるのか!!」
「いえ、確かに12階層付近で目撃されています」
紙の束を握り締め、顔を赤くして怒鳴り散らしている。
『ユイルです。消すから軍と一緒に帰って下さい。自分に関わらないで下さい。元の世界には帰りません。まずは証明として明日、デューガル・ルルデ・グロデナさんの消します。』
戻って来てみれば大罪人の名で1階層に紙がばら撒かれていた。これほど屈辱的な事は無い。
勇者達は驚いた表情をしていたが、デューガルだけはどこかホッとした表情が伺える。
「まずは本当に消すか明日まで様子をみよう」
リオートの小声に4人は頷く。
「当初の予定通り罪人達を準備次第送り出せ。兵は交代で休息をとっておけ、ここの管理の者に食糧の補充を命じておけ」
その頃、ディメンションエリアの楽園内では
「は〜ここは楽園だな〜」
「おめ〜そりゃここは『楽園』だからだろうが」
「飯はうまいしよ〜住居は快適だしよ〜ユイルの兄で良かったぜ」
「「「「「全くだ!」」」」」
「『アイーネちゃんのおっぱい』うまいよな〜」
「俺はやっぱ『あのこのプルルン』だな」
「お前達まだまだだな、新作の『極上のプルルン』と『バージンスイーツ』知らねぇのか」
「「「「「何!新作だと!!!」」」」」
誰だ!!下品な名前付けたのは!(怒り)幼気な少年の俺が付けたと思われるじゃないか!
ちゃんと商品名が書いてあるのに誰も覚えやしねぇ。子ども達の教育上、悪い。
アイーネちゃんのおっぱい=食パン一斤、
あのこのプルルン=プリン、
極上のプルルン=ババロア、
バージンスイーツ=ドーナツ
甘味が欲しい!と切望されたので追加したら、いつの間にか変なネーミングで呼ばれだし、終いにはケイルさんにまで
「『アイーネちゃんのおっぱい』以外ないのか?」
「食パンです。他のパンですか?量が足りませんでしたか?」
「いや『アイーネちゃんばっかりズルい』って他の女衆が執拗く言ってきてよ〜」
「…私がアイーネさんの名前を付けたわけじゃ無いですよ。食パンに誰かが勝手に名前を付けて呼んでるだけです」
「…分かってる、分かってるが全員分何とかならねぇか」
「全員って!もしやお姉様方の全員ですか!無理ですよ!ネーミングセンス無いし、皆さんの特徴知らないし!大体、全てのネーミングが卑猥過ぎる!」
しかし、「女性を敵に回すと恐ろしい」と語っていた祖父の言葉が頭を過ぎる。
仕方ないから考えた。
も・ち・ろ・ん・ケイルさんと部下さん達一堂も巻き込んでね。
この世界にきて一番頭をフル回転したかもしれない。
なんせ残り26人もいらっしゃるとは!そんなにいらっしゃったのですね。
「以前の監獄内じゃ全然足りてねぇ人数だ。毎日、順番待ちの喧嘩だったぜ。ここでもギリの供給人数だが順番待ちの喧嘩がねぇ分は助かってる」
流石!三大欲求。恐れ入ります。
ハ〜、そんな関心より名前付け、名前付け。パン系や甘味系、イメージに会う品というより、種類が足りない。
そして閃いた!
『定食メニューも名前にすれば!』
俺って天才!そして『アイーネちゃんのおっぱい』と命名した奴、出てこい!(怒)
メニュー名を間違わないようにメモっておこう。
こうして楽園名物『秘密の花園メニュー』が爆誕した。




