只今、監獄生活中です。8
明けましておめでとうございます。ユイルでございます。こちらの新年であります歳神月の「神の5の日」最終日でございます。
これで漸く春がきます。確かに寒さが少しだけ和らいできたと感じます。
先日、攻略途中で新たな食の木を発見。「ラマトル」と言う果実だそうで、この歳神月でしか実がならないく高値で取引されいてトール爺さんは勿論、私とオートマタ達以外みんな大喜びでした。
早速果実の収穫と苗木を『箱庭』で育てることに、と言ってもポーションや『レイズドベッド』があるから直ぐに最高級品の実がわんさか実りいつでも収穫です。
外見はパパイヤの様な大きさと形をしており皮は固め、甘〜い香りを漂わせている実で、新年には欠かせない食材だけど日持ちしない為、入手が難しいとされている果物です。
沢山あるので、換金所とお頭の所へ卸すとどちらも大興奮で喜んでました。子供みたいに大はしゃぎするおっさん達を観てて、ちょっとイタかったです。
私?私は良いんです。大はしゃぎしてもまだ本当に子供だから。
そこまで騒ぐものかと食べてみたら確かに美味しかった。『完熟マンゴー(?)』のような味わいでした。
甘味の少ない世界であの甘味はかなりの贅沢品だと理解できました。
だからみんな食後は必ずデザート食べるんだね。みんな並んでいちごパフェを頬張る絵面がなんとも…。頭で分かっていたつもりでしたが、理解はしていなかったようです。
香りも良かったので剥いた皮を使って香水を作ってみたら、ケイルさんに
「絶対商人には売るんじゃねーぞ」
とすごい顔で言われてしまいました。なぜ?と尋ねたら
「女衆の依頼だ」
なんか分かんないけど分かりました。ビシッ
まぁ新年を祝うと言っても所詮ここは監獄です。いつもと変わらない、いや、採掘休んで酒を飲み散らかしてるおっさんを量産してるだけでした。
ただ違ったことは…
「あら〜♡あなたがユイル君ね♡」
初、色街のお姉様方に遭遇!
何だ!あのナイスバディなスタイルは!ムフフ~ン♡なフェロモン放出状態の集団に出会ってしまった。
「このこがあの化粧水作ってる子なのね♡あれ凄くいいのよ♡これからも期待しちゃうわね♡」
「やだ〜♡小ちゃくて可愛い〜♡」
「こんな弟欲しかった♡」
キャッキャ♡ウフフ♡な、わがままボディでおわさられるお姉様方に取り囲まれハーレム状態!
嘘です。何か目がロックオン状態だ。
周りは羨ましそう、いや、悔しそうな目で睨んでくるオスたちより怖い、お姉様方のその視線。
「困ったことがあったらここに居る頼もしいお兄ちゃんに頼るといいわ♡」
「ダーリンは逞しくてすっごく頼りになるからね♡」
「弟を助けてるお兄ちゃんってとても素敵よね〜♡」
あれ?空気が変わった。周りにいたオスたちがいつの間にか『兄である俺に頼れ!』ムードに変わってる。
ケイルさんが言ってた『女衆を敵に回すな』、ではこれは『女衆が味方に付いた』って事か!
「はい!いつもお兄さん達にはよくしていただいてます。これ新作のクリームです。まだ少ししか作れませんが試してみてください」
『日用品』にあった保湿クリームを10つほど手渡す。
「「「「「「「♡♡♡♡♡♡♡♡」」」」」」」
後日、ケイルさんに肩を叩かれながら
「おめ〜すごいな〜」
と、どう言う意味か分からないが感心された、の?
一の月に入りしばらくした頃、今日は朝から外の広場が騒がしい。
覗きに行くと、そこには取りまとめ役のお頭グラドールが役人達ともめていた。
今年初の大量物資と大量囚人が到着したようだ。
(あ〜あれから一年たったんだ〜)としみじみ思っていると
「何でも小麦の量がかなり少ないらしい」
「食いもんの値が外じゃかなり上がってるらしいぜ」
「ここに入るヤツの数が今回は異常に多いって聞こえてきたぞ」
騒つく野次馬達で外が見えない。屈んで足元の隙間から覗き込む。
荷はマジックバッグに入っているので持ち込まれる量は定かではない。
『マジックバッグ』とはアイテムBOXを魔道具にしたものだ。大容量なモノは貴重品だが容量によっては、手に入りやすい品ではある。
確かに囚人数が異常に多い。ざっと見ただけでも200人以上いる、それも殆どが子どもだ。俺と同じ、いやもっと下の子もいる。
お頭も「流石にこれじゃ食料が足りな過ぎる」と役人に訴えたが、「食料欲しければもっと魔水晶を取ってこい」と話は平行線状態だ。
これは不味いな。この監獄内が上手く回ってたのは「頑張って採掘すれば飯が食える。酒も飲める。外より良いんじゃね〜」と荒くれ者たちが思っていたからだ。だが、この小さい世界の常識が崩れれば食堂や屋台の食料品の強奪が起きるだろう。
それにより危険を感じた商人達の出入りが無くなり更に食料事情の悪化、弱肉強食と言うよりまさに世紀末だ!強奪しまくるモヒカンさん達と「お前はもう死んでるよ〜」という人とが織りなす世界になってしまう。
なにせ逃げる事が叶わないここは牢獄だ。
それにしても、子ども達は皆んなガリガリで目は虚。どうしてここに?
丁度近くにいた手下リーダーことケイルさんに聞いてみた。
ケイルさんも詳しくは知らないがどうやら浮浪児のようで、もしかすると『浮浪児狩り』にあった子ども達と説明された。
(浮浪児狩り!)
とりあえずは、商人さん達が戻ってきたので顔馴染みの商人さん達を捕まえて注文することに。支払いはいつもの化粧水で。
湿布と手荒れ用クリームは部屋を荒らされたのでしばらく出荷できないと伝えると「なんてヤツだ!!」と、ものすごく怒っていた。注文品も来月には届けさせると高待遇だ。
余程、お外で売れたんだね〜。
以前、サテスさん達に売値予想をしてもらった。うん、大儲けだね。
金の卵を産む鵞鳥は大切にされてます。
お頭と役人との交渉は決裂だった。
相手から見ればただの罪人だ。温情で生かされている分際で文句をいうな!自分たちの食い扶持は商人を使って何とかしろと!
分かりました。自分たちで何とかしましょう!(ニヤリ)
「何こえー顔して笑てんだよ。ほら、お頭が注文しておいたポーション精製の道具だ」
「ありがとうございます。ケイルさん、ところで食材はどれぐらい足りないのです?」
渡された品をアイテムBOXにしまいながらケイルに質問してみた。
「お頭の話だと今回来た奴らは243名、食料が4000人分ほどしか無かった」
通常は1年で200人前後が投獄され、同時にダンジョン内で採掘時や冬が越せなく200人ほどは毎年お亡くなりになる。
監獄内の罪人の数は5300程らしいが動けなくて徴収金が未納になる者やいつの間にか死亡していたなど、役人も管理しきれない為、収容人数は5000人と決め、余剰金は持ち越しもしくは商人に足りない食料や物品購入分に当てていた。
それが一昨年、ヤク爺さんが行方不明になり、ポーションが深刻な品不足に陥る。結果、600人以上がお亡くなり「人口が4700を切った。4500人分までしか徴収できない」とお頭が役人に具申する。
採掘量を戻すため大勢の囚人がやってきたことで収容所の人口が5000人近くまで戻った。
だが今回、いつもと同じように5000人分の食費を払ったのに4000人分程しかなく、更に収監された殆どが子ども。それも10にも満たない幼子ばかり、そんな子にも一人毎月10000マール(100万円)の徴収金が課せられてる事になる。
「ケイルさん。買取の時に使う道具って購入できますかね」
「交換量りか?高くつくが可能だが。それをどうするつもりだ?」
「小さい子には流石に魔水晶の採掘は無理だろうから、薬草の買取に使いたいんです。浮いた時間はポーションなどの生産に手が回りますから」
「なるほど!使用するには役人の許可がいるが問題なく話は通るだろうよ」
そこそこ使用料が発生したがすんなり使用許可が降りた。
食事コインについては、俺が立て替えで同額払えば購入できる取り決めが採用された。
こうして俺は交換量りを所用していても怪しまれない『薬草換金所』という隠れ蓑をゲットした。
次に取り掛かったのは子ども達の部屋だ。
流石に243名も一気に入ってきたので空いているベットに無造作に押し込まれている。出来るだけ一緒の部屋にしてあげたい。
子どもの人数は152名。俺の部屋に続く通路の住人達に交渉して、部屋を子ども達の居る部屋と交換することが可能かと、お頭と交渉した。結論は勝手にしろ、だ。
早速ご近所さんに交渉開始。すんなりOKされた。
交渉材料として部屋替えしてくれたら高級酒を2つプレゼント!で即決、元々このエリアは薬草臭くて嫌だったってさ。
この噂が流れて、まだ交渉していない部屋の住人たちもこぞって希望を出してきた。
高級酒プレゼントが目当てだよね!そうだよね!そうだと言って!
部屋は大人6人用だが子どもだと一人用寝床に2人でも余裕で寝れるので一部屋10〜12人で使用予定。14か15部屋で足りるのだが、交換希望部屋が20部屋となった!
あわや仁義なき戦いが勃発!だったので全室、高級酒渡して部屋替え成立させた。
空いた部屋にはバラバラだった『ハウス』メンバーのトール爺さんやサテスさん達全員が引越してきた。
本格的な食糧難になる前に、お頭たちも一部計画に加担していただきましょう。
「なるほど、大したもんだ」
お頭ことグラドールが唸る。
今、食料問題解決のため、2階層裏側の『秘密の場所』にお頭達を連れてきた。
広大な土地に食の木が所狭しと植っており、全てが最高品質の実を付けている。
「トール爺さん達の苗木畑を壊滅状態にされましたし、隠さないと又何されるか分かりませんから。もっとも役人は当てになりませんからね」
今後も普通にお頭には商人に頼み食料調達してもらう。いちいち役人達は入って来る物の中身を細かく確認はしていない様だから、数量を誤魔化しここで採取された食材を混ぜても気づかれない。
「だがいいんか?お前らに利がねぇぞ」
「今のところはそうですね。でも商人さん達を通さずに食料調達が出来るって分かっちゃったら、国は魔水晶だけ徴収して食糧の配給をやめにしちゃいますよ。為政者にとったら生かさず殺さずが理想ですからね」
「おっおう」
「それに魔人族の国と戦争を始まれば、強制的にここの住人達全然を前線に投入する腹づもりですし、刃向かえなくするために食糧配給を中止という脅しをして来ます。なので、ここで食料が賄える事は絶対に隠し通さないといけませんからね」
「ユイル」
「はい」
「お前、人族の子どもだよな。エルフか何かの血が入ってんのか?」
「歴とした人族の13歳です!」
新年を迎え13歳になりました。ぱちぱち
お頭達には基本、これから起きることの情報漏洩防止と警護をお願いする。
またトール爺さん達の苗木畑の様にされるのは困るからね。
目的は多分俺の殺害だったのだろうが、念の為だ。
役人達もお頭達に手を出す事はしない。なぜなら、この安定した金額が入るシステムを構築したのはお頭だ。
前の取りまとめ役だったガナスの父親は魔水晶の採掘量と食べ物の物々交換としていた。なので基本必要最低限の魔水晶しか採掘して来ず。さらに配給量も僅かだった為、餓えと自暴自棄になった囚人が暴動を起こし、役人達を殺害。バイオレンス映画真っ青事態に。
そこでお頭が役人と交渉し、今のシステムにかえ徴収量も跳ね上がり、治安も安定した。
買取を役人がしているのは魔水晶の監獄内での横流しを防止する為の見張り番と形式的なだけで、回収量を一定として余剰分は自分たちで食料品の調達や不足時には補填しているので、役人達の手間が少ないから採用された。
そして今回の食糧不足は食品の値上げと最もらしい言い訳だが、役人が横領の金額を増やした結果であろう。
一人月10000マールつまり毎月100万円徴収されているのに食品が高騰して足りないは有りえない。それに食費は自分達で支払っている。
思うにトール爺さんの苗木が原因であろう。
横領品が出荷できなくなったのでの補填として、冬で収容者が多く亡くなったと報告し帳尻合わせをした結果であろう。おそらく収穫量も少なく報告されていると予想される。
国は国でそんなに少なくなったなら補充すればいいと言う目論見で、頭数合わせでどんどん人を送り込んだのだろう。
部下が部下なら上司も上司だ。
ちなみに食事コインこと「マズ飯」はお頭の考案で、徴収分が足りなくても食事だけには有りつけるシステムとなっている。
お頭に何かあれば元のバイオレンスに逆戻り、徴収金は10分の1下手をすれば100分の1に減少するだろう。
同じシステムを使えば誰でもできるのでは?と思えるだろうが、不足しないように食料が届き、また嗜好品も高額でも必ず届くシステムを構築するのはこの世界ではかなり難しいものだ。
それは、横領しない役人が全て管理し、必要以上に値を吹っ掛けない信用できる商人との繋がりがある人物か仕入担当をする。中々できない。
他にもう一組の協力者は、食堂のセナルト達だ。
流石に今までとの品質の違いに気づいてしまう可能性があり仲間入り。それも『お頭』の方では無く『ハウス』の方にだ。
たまたまハウスに入るとこ見られてしまったという事と、ハウス内での食事に料理魂に火が着いたようで、メイに「どうか弟子にして下さい」と懇願した。
「セナルトさん抜けたら食堂大変でしょう?」と尋ねたら「今回収容された中に料理人が5人もいたから問題なし」と、追加でセナルトさんの弟子二人も連れてやって来ることになった。
空いている部屋へお引越し、みんな部屋が近いから使わないと言っていたが、何があるか分からないので合鍵Bを渡しておく事にした。




