表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第14章 ハーゼはついに王国を乗っ取ります
97/114

第94話 フットナー司令官の出会い

「わしが、エアツェールング王国海軍司令官、エムデンド・ド・フットナーであーる!!」


 雷のような大声で自己紹介するのは、フットナー男爵である。私たちはすでに海軍本部に来ていた。

 本部と言っても少し頑丈そうな屋敷のように見える。もっとも武器庫などが隣接しており、普通の屋敷でないことはわかるだろう。

 私たちは軍港にいるフォットナー司令官に会っていた。マギーの姉、ラプンツェルの夫でもある。

 彼は筋肉ムキムキでルドルフ・ド・マッケンゼンと比べると、横に広がっている感じである。頭は禿げあがっており、口ひげを生やしていた。

 肌は日焼けしている。身に付けているのは白いふんどしだけで、右手には大根が握られていた。


「……お初にお目にかかります。料理ギルドマスター、ハーゼ・ド・ヴァイスシュネー公爵でございます」


 私はどう突っ込めばいいかわからなかった。バニースーツを着ていないだけマシと思えたのは、私が毒されている証拠だろうな。


「フットナー司令官、ご無沙汰しております。アンヘンガー・ド・マッケンゼンでございます」


 横にいるアンヘンガーは頭を下げる。フットナーは満足げにうなづいていた。どこか優し気な目である。しかし私を見る目は厳しかった。


「なんか頭悪そうなおっさんだな」

「全くだわさ。魔物の方がマシだわさ」


 まぼろしネズミとウサリーは後方でひそひそ話をしていた。全くその通りである。


「聴こえているぞ、そこの魔物の子供たちよ。これは人間が悪いのではない、わし個人の問題なのであーる!!」

「どこかルドルフ殿に口調が似ていますね」

「うむ! ルドルフがわしの真似をしたのであーる!!」


 なるほど、なんとなくだが、こちらの方が堂に入っている気がするな。元ネタが某塾の塾長ぽい。ただしふんどしに大根は、某RPGの4コマ漫画が元ネタだな。


「それはそうと船を借りたいそうだな。しかーし、船を貸すわけにはいかーん!」

「私の偽物のせいでしょうか?」

「ちがーう! そもそも国王陛下の許可なく船を貸すなどありえないのであーる! ところが件の女は部下を操り、あと一歩で軍艦を乗っ取ろうとしたのであーる! わしが魔除け人形を持って来なければ、手遅れになっていたのであーる!!」


 フットナー司令官は興奮していた。そりゃ軍艦を貸してくれるわけないわな。ヘンゼル陛下の許可なしではどうにもならない。

 というかマギーならその手の準備を事前にするはずなのに、なぜ私には何も言わなかったのだろうか?


「それ以前に陛下が乗船の許可を出すわけがありません。マスターが船に乗ることは、イカロスに会いに行くことの同意語ですからね」


 それもそうか。私は以前裁縫ギルドのマスターから、ヘンゼル陛下と結婚するには3つの贈り物が必要と言われたのだ。

 一つ目はフォッカー砂漠のピラミッドにあるミラクルシュガー。

 2つ目はシュピーゲル領の天空城にある雲魔人の背中で育った天空野菜。

 そして最後が荒磯の魔女イカロスの所持する闇アワビだという。


 どれも手に入れるには最強の魔人に認められなければならない。

 ミラクルシュガーは冥王アヴドゥル・フォッカー一世。

 天空野菜は天空の魔女、ゲルダ・ヴァイスシュネー。

 イカロスで終わりなのだ。


 ヘンゼル陛下は性同一性障害で、男でありながら心は女だ。いくら私が元男の転生者でも女性は女性なので受け付けないのである。

 最初は特に何とも思わなかったが、さすがに2つの贈り物をそろえてしまったので、危機感を覚えたのだろう。

 船の許可を出さないのは当然と言える。


「なんだよ、別に邪魔しなくても、船には乗れなかったじゃないか。まったくバーニーの奴は何言っているんだか」

「何を言っているだわさ。前口上は必要だわさ。一流の悪役になるには、悪態をつくことも大切だわさ」

「俺様は別に興味ないんだけどな。やりたい奴にやらせろよ」


 まぼろしネズミはぶつくさ言っている。妨害がなくても船には乗れなかった。おそらく私に化けたママスが嫌がらせのために、変身したのだろうな。あいつは根に持つタイプと見た。


「だが!! わしは司令官として魔女を退治しに行かなくてはならん、ならんのだ!! よってお主がわしに力を見せつければ、乗船を許可してもよいのであーる!!」

「いいのですか?」

「うむ!! ヘンゼル陛下は今苦しまれておられる!! その苦痛はここアンファングにも届いておるぞ!! 臣下として陛下をお救いしたいのだ!! 我妻ラプンツェルはまったく気づいておらんがな。がっはっは!!」


 あー、ありそうだ。南方にいる夫が、王都にいる夫人より耳がいいのはどうかと思うが。


「それで私はどうすればよいのでしょうか?」

「決まっておーる!! 港町でやる勝負と言えば、釣りに決まっているのであーる!!」


 そういってフットナー司令官はふんどしから釣竿を二本取り出した。まるで某漫画の刑事みたいだな。


「そして餌はこれであーる!!」


 兵士が数人、鉄の檻を運んできた。中にはうさ耳セイバーたちが数匹入っている。うさ耳セイバーとは耳がハサミのように鋭い魔物だ。普通のウサギに比べて、大型犬並みに大きいのである。

白や黒、茶色と様々だ。彼らは柔らかそうな手で目を抑えて泣いている。


「……は? 魔物を餌にするのですか?」

「その通り!! こいつらを生餌にして巨大な魚を釣るのであーる!! 釣っている最中に海に潜るから大抵はおぼれ死ぬのであーる!! うまくいけば巨大魚にゴリゴリとかじられ、首が採れることがあるのであーる!! がっはっは!!」


 フットナー司令官は豪快に笑っているが、兵士たちの表情は暗い。なんというか後ろ暗さを感じているようだ。


「たちゅけて! たちゅけてくだちゃい!!」


 うさ耳セイバーがいきなりしゃべりだした。彼らはネームドモンスターなのか!?


「ちにたくない、ちにたくないでしゅ!!」

「いきたまま、えさにされるのはいやでちゅ!!」

「まぼろしネズミしゃん、たちゅけてくだちゃい!!」


 うさ耳セイバーたちは泣き叫んでいる。舌足らずな口調が、悲壮感を高めているな。兵士たちは目を背け、耳をふさごうとしていた。彼らもこの状況をよく思っていないようだ。

 私はウサリーの方を見た。すると彼女は目をまんまるくしている。


「おかしいだわさ。あたちはこいつらを知らないだわさ。大魔女さまが名付けた魔物なら大抵知っているだわさ!!」

「知らなくて当然であーる! こいつらはわしが名付けたのであーる!! よってこいつらを自由に扱ってもよいのであーる!!」


 フットナー司令官の目が怪しくなった。先ほどの竹を割ったような性格から一変し、どこか得体のしれない何かへと変わっていく。

 命乞いをするうさ耳セイバーたちの檻を乱暴に蹴った。一掃に怯えている。泣きじゃくり、頭を掻くむしっている。

 その様子を見て、げらげら笑っていた。不快になる笑い声である。


「ありえないだわさ……。魔物に名前を付けられるのは、大魔女エヴァンジェリンさまだけだわさ! 普通の人間が名前を付けられるわけがないだわさ!!」


 ウサリーは叫んでいる。よほどありえないことのようだ。

 そこにアンヘンガーが耳打ちをする。


「……フットナー司令官は、あのような非道を行う人ではありません。ですが、偽物というわけでもないようです。ジルコニア・アイの瞳を見ても、変化はなしでしたから。ですが、あの方の身体から紫色の魔力がにじみ出ています」

「それはどういった状態なのかしら?」

「ドクメント帝国に在住している、エアツェールング王国の大使からの情報ですが、魔物に変化する人間によくある特徴だそうです。特に魔物をよく倒す人になりやすいとか。大抵はストレス解消することで、抑えております」


 フットナー司令官は海軍司令官で、魔物を多く倒してきた。その際にストレス解消しなかったので、魔力が滞っているようである。その結果がこれというわけか。

 以前ラプンツェルも帝国の若者たちが魔物に変化したのを見たという。彼は悪人ではないが、魔物の呪いを受けてしまった被害者なのだ。


「ぐぐぅ、許せん!!」


 まぼろしネズミが怒鳴った。声は裏返っているが、真剣なのがわかる。


「いくらこいつらが魔物でもやっていいことと悪いことがあるぞ! そこにいるハーゼは魔物を殺すがそれらを素材にして、世のため人のために活用している。それなのにお前は何だ! 魔物をいたぶった挙句殺して楽しむなど言語道断!! お前みたい派腐れ外道は地獄へ落ちろ!!」


 彼は怒っていた。バーニーに操られたわけではない、心の底から怒りを爆発させたのだ。

 もっともフットナー司令官はどこ吹く風である。


「ふふん。人は人、わしはわしだ。魔物の戯言など聞く耳持たんわ、がっはっは!!」


 切れることなく、しれっと流すのはさすがである。血の気の多い若者とは格が違うのは感心した。

 しかしまぼろしネズミはいきり立っている。それを見て私はほっこりした。

 ウサリーもその様子を見て、うっとりと見惚れている。これは惚れ直したかな?


「まぼろしネズミさん、そんなに許せないのなら、ぜひ生餌になってくださいな」

「おう! って、ええ!?」


 うっかり返事をして、まぼろしネズミは目を丸くし、後ろを振り向くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ