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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第14章 ハーゼはついに王国を乗っ取ります
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第95話 吐き気のする邪悪

今回はかなり胸糞展開なので注意してください。

「うう、なんで俺様がこんな目に……」


 まぼろしネズミは自分の不運を嘆いていた。誕生日にカラスの糞が頭に当たったくらいの不幸であった。腰にベルトを巻いて、浮き輪を付けている。

 アンヘンガーとウサリーは主のために背後に控えていた。

 そしてフットナー司令官は部下に厳しく命じて、茶色のうさ耳セイバーを無理やり檻から引きずり出した。そして4本のベルトで固定する。

 ちなみにうさ耳セイバーは耳をハサミの如く鋭くなるが、ストレスがたまると切れ味が鈍るという。檻の中に入れられたら、怯えて耳の鋭さはなまくらとなるそうだ。

 それにうさ耳セイバーは雑魚に当たり、一般人でもこんぼうと布の服さえあれば勝てるという。


「いやだー! おさかなのエサなんて、やだよー!」


 うさ耳セイバーが泣き叫ぶと、他の白と黒のうさ耳セイバーももらい泣きし始めた。

 なまじ見た目がふわふわしてかわいらしく、人間の子供と同じくしゃべるのだから、悲壮感を誘う。

 フットナー司令官は二匹が入った思いっきり檻を蹴った。ごろんごろんと檻は吹っ飛ばされる。中のうさ耳セイバーたちは転倒し、頭を打ったのか、目を回していた。


「黙れ! 魔物風情が一丁前に助命嘆願など、生意気であーる! お前たち魔物はなるべく苦しめて殺すのであーる! なぜなら、庶民たちの憂さが晴れるのであーる!!」


 フットナー司令官は高笑いをしていた。確かに狂暴な魔物を相手にするなら、まだいいだろう。しかしか弱そうなウサギ型の魔物をいじめて、喜ぶ人間などいるわけがない。いたらそいつは精神異常者だ。


「安心するのであーる! お前が死んでも、わしはお前を生き返らせることが、できるのであーる! その罪の重さをかみしめ、生まれてきたことを後悔するのであーる!!」


 フットナー司令官はひょいとうさ耳セイバーの首をつまむと、乱暴に海の方へ投げた。

 私も負けじとまぼろしネズミを海に放り投げる。見る見るうちに海の向こうへ消えていった。

 

「ううぅ、今回ばかりはまぼろしネズミになんとかしてほしいだわさ。大魔女さまとは関係ないけど、同じウサギの魔物として、助けてあげたいだわさ」


 ウサリーは柔らかそうな手を合わせている。祈っているのだろうか。

 そうこうするうちに、フットナー司令官の竿が動いた。ぐいぐいと竿がしなる。

 フットナー司令官はリールを巻いた。何度も引っ張られるも、リールを緩めたりと、余裕である。

 私の方はまだピクリとも来ない。もっとも遠くでまぼろしネズミが嘆いている声は、私のうさ耳バンドでばっちり聴こえていた。


 さて数分後、フットナー司令官は魚を釣り上げた。昔見た映画に出てくる人食いざめのような大きさだ。

 鎧のような鱗で、アーマーシャークというサメの仲間だという。

 フットナー司令官が口を開くと、中からボロボロのうさ耳セイバーが目をむき出しで、ぐったりとしていた。

 腹部を乱暴に蹴り上げると、げほげほと飲んでいた水を吐き出した。体中傷だらけだが、命に別状はない様子である。しかし、それが幸福だと思えなかった。


「うぅぅ、いたいよ、いたいよぉ……。どうして、ぼくをこんなめにあわせるんだよぉ……」

「ふん、それはお前が魔物だからであーる。魔物のくせに愛らしいウサギの姿をしているのが悪いのであーる! それはそうと今回は死ななかったであるな。前は身体をかじられ、ぼろぼろになっていたである。普通なら溺死するのが先であるが、今回は運がいいようであるな!! すぐ生餌にできるのであーる!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


 茶色いうさ耳セイバーは耳が倒れ、手で抑え込んだ。そして発狂したように泣き叫ぶ。

 さすがの私も怒りで震えていた。中学生の頃、カエルを拾っては壁に叩き付けたり、踏みつぶして殺して遊んでいたことがあった。今思うと自分のしでかしたことが、いかに恥知らずで残虐な行為か理解できる。

 それでも私はあれほど大きな、意志がはっきりわかる生き物を殺したいと思ったことはなかった。


 アンヘンガーは静かに怒っており、ウサリーは両手で目を抑え、泣き出している。アンヘンガーが優しくウサリーの背中を撫でていた。いい男は気遣いができることだと思う。


「うむ、こいつを再び生餌にしてもつまらないのであーる! 代わりにそこの白い魔物を使うのであーる!」


 フットナー司令官に言われて、白いうさ耳セイバーは目をまんまるくした。そして絶望に震えだす。


「いやでちゅ、いやでちゅ!! あたちしにたくありまちぇん!!」

「死なないから安心するのであーる! いや、お前は今日一日中生餌になってもらうのであーる!!」


 がっはっはと豪快に笑うが、その声は不快感しか生まれなかった。後方で見ている兵士たちもげっそりとしている。

 そこに黒いうさ耳セイバーが叫んだ。


「だめだ! このこはぼくのたいせつなひとなんだ!! かわりにぼくがなるから、そのひとはゆるしてよ!!」


 すると無言で檻を強く蹴り上げた。中にいる二匹はあまりの衝撃に目を回している。

 白いうさ耳セイバーの耳を乱暴につかみ、ベルトで固定した。気を取り戻したうさ耳セイバーは現状を認識し、暴れ出す。


「いやー、いや――――!! たちゅけてー、たちゅけてー!!」


 フットナー司令官は、うさ耳セイバーを地面にたたきつけた。げほっとせきこむと、今度は素足をその頭部に踏みつけた。

 ぐしゃっと嫌な音がする。顔を踏みつけられ、顔中から血が垂れていた。それを何度も腹部を蹴り上げる。


「魔物のくせに、人呼ばわりとは何事であるか!! そのような曲がりくねった根性はわしが叩き直すのであーる!!」


 蹴るたびにげほっげほっと苦しそうに吐き出す。そしてぐったりとしているところを、両手で持ち上げて、地面に何度も叩き付けた。ぷちんぷちんと空気が漏れた音がする。


 白いうさ耳セイバーは土まみれ血まみれになり、ぼろ雑巾のように動かなくなった。

 目をむき出しにし、口から血が垂れ、鉄の臭いが充満する。

 そこにフットナー司令官が呪文を唱える。


「おお、うさこよ。死んでしまうとは何事だ!!」


 するとうさ耳セイバーの身体が光り出す。光が収まるとうさこの身体はきれいになっていた。

 うさこは目を覚ますと、ぶるぶると真っ青になり、きょろきょろと周りを見回す。喉から抑えていたものが吹き出しそうになるが、フットナー司令官は腰を曲げ、にやりとつぶやく。


「んん? また泣き叫ぶであるか? もう一度殺されたいのであるかな?」


 うさこは両手で口をふさいでいる。泣き出したい気持ちを必死に抑えているのだ。泣けばさっきのように痛めつけられて殺されるからである。


 これを見た私の顔はどうなっているだろうか。額に血管が浮き出て、目は怒りで鋭くなっていたことだろう。

 アンヘンガーは私の顔を見て、はっとなったが、すぐ取り直した。ウサリーは完全に手で目を覆っている。惨状を見たくないという意思表示だ。


 黒いうさ耳セイバーは格子を掴んで、ぐったりと泣きじゃくっていた。自分たちの不運を嘆いているのだろう。先ほどの行為で愛する人が惨事にあったため、自分の行為を後悔しているのだろう。

 茶色の方もぶるぶると震えていた。気が狂わないのが不思議なくらいだ。


 早く終わらせなくてはならない。実はフットナー司令官は特に規定を決めていなかった。

 どのように決着をつけるか、決めていないのである。おそらくはうさ耳セイバーたちをいたぶって楽しみたいので、具体的な勝敗をきめなかったと思われた。

 きちんと取り決めをしない自分のうかつさに、怒りが込み上げてきたな。

 

 だが私には勝算があった。そのカギはまぼろしネズミである。彼はこの世界における小悪党な魔物だ。

 絵本で言えば、菓子パン頭のヒーローと敵対する、ばい菌の怪人と同じである。声は女性声優が少年役を演じるような感じだけどね。

 いくら悪さをしても殺されることはない。そして、無関係な人々にいたずらや食べ物を盗むことはあっても、死ぬことはないのだ。


 そして今回の件を解決する方法はたったひとつ! 私の目的を達成できればいいのだ。そもそもこの釣り勝負は、目的地に行くための手段である船がほしいのである。

 船がなければ到達できない。マッケンゼン領領主にかけられた呪いも解けないのだ。ツァールトとゲッティンの呪いもだ。


 私の望みは荒磯あらいその魔女イカロスに出会う事。彼女から闇アワビをもらうためである。

 そう! まぼろしネズミがいればすべて問題なしなのだ!! 根拠はないけどな。


 そう思った瞬間、竿に強い力を感じた。私はすぐにリールを巻く。

 相当強い力だ。私の身体ごと、海に飲み込まれてしまいかねない勢いである。

 しかし、私にはバニースーツがある。網タイツとハイヒールは大地から水のように魔力を吸い上げ、バニースーツで魔力へ変換するのだ。

 そしてカフスに魔力を集中させる。一気に引き上げると天高く獲物が舞った。

 港には巨大な何かが大地に叩き付けられる。

 

 それは巨大なイカの魔物であった。十本の巨大なイカの脚に、上半身はでっぷりとフグのように太った中年女性の身体があった。

肌はトラフグのような模様があり、頭は大きなサザエの被り物に、ワカメの髪の毛が肩まで伸びていた。

 丸い目にたらこ唇。胸はホタテ貝二枚で隠され、下半身は昆布のドレスで覆われている。


 右腕にはまぼろしネズミを抱きかかえていた。何とも言えない表情を浮かべている。そりゃそうだろう、目的の人とあっさり出会ったのだ。拍子抜けもいいところである。


「わたくし、イカロス、でございま~す」


 そう彼女は荒磯の魔女イカロスであった。

イカロスの口調は、アニメのサザエさんをイメージしました。声は声優の久川綾さんを連想してください。

 いくら死なないといっても、可愛いウサギが痛めつけられるのは、邪悪だと思います。

 ひさしぶりにバニースーツのすごさを認識できる話になりました。

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