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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第13章 マッケンゼン領の冒険
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第88話 ドレスデンドとの出会い

「なんですか、これは……」


 私は一瞬、唖然となった。ここはマッケンゼン領にある領主の住む町だ。海岸線にあり、四方は城壁で覆われている。以前ネットで見たフランスの城郭都市、エーグ=モルトに近いかもしれない。

 私たちは馬車で入ったが、街中は先ほどつぶやいた通りの状況だ。

 

 男たちの大半が首に首輪をはめられ、鎖で繋がれていた。粗末な衣服を着ており、麻袋を降ろしており、木材や石材などを運んでいるのだ。

 特に下水道工事に力を入れているらしく、男たちがのっそりとしながら働いていた。見張りの兵士たちは王都に比べると肩当てと胸当てだけの軽装だが、日焼けした肌に精悍な顔つきは、王都の兵士たちと比べてもそん色はなかった。


「なんか重々しい雰囲気がありますね。南方の気候と比べて、人々の表情は暗いです」


 ツァールトがつぶやいた。娘のゲッティンは初めて見る町を興味津々に眺めていた。ふわふわのまぼろしネズミは興味なさそうだが、ウサリーはゲッティンと一緒に物珍しそうに騒いでいる。


「……」


 アンヘンガーは無表情であった。初対面の時はスケベキャラを強調していたのに、ここ最近は落ち着いている。無理のない態度だ。これがこいつの本来の姿なのだろう。

 さて馬車は中央にある領主の家にたどり着いた。真っ白い屋敷であった。屋敷から執事服を着た数人の男が出てくる。お出迎えだろう。

 私たちは馬車から降りた。メイドたちは脇に立ち、かしずいている。


「ようこそいらっしゃいました、ハーゼ・ド・ヴァイスシュネー公爵様」


 執事のひとりが頭を下げた。金髪である。他の執事たちは全員茶髪であった。顔つきは全員双子かといいたくなるほど、そっくりであった。まるでゲームの汎性キャラのようである。


「わたくし執事のバトラーでございます。ただいま旦那様は応接間におられます」


 バトラーは頭を下げた。その一方でアンヘンガーにも目を向ける。


「アンヘンガー様、ご無沙汰しております」

「ああ、ひさしぶりだな。バトラーたちも変わりなく何よりだ」

「……すっかり元に戻られましたね。ここを出る前は異常なスケベでしたのに」

「もう兄さんが跡を継いだからね。ところで兄さんは元気かな?」


 アンヘンガーが訊ねると、バトラーは表情を曇らせた。


「……ドレスデンド様は最近女性と付き合うようになりました。四六時中家の中でいちゃいちゃしております。お仕事はきっちりこなしますが、あまりにも度が過ぎておりますね」

「なんだって!? 兄さんが女といちゃついているだと、そんな馬鹿な!!」


 アンヘンガーは驚きの声を上げた。そんなに自分の兄が女と付き合うのがおかしいのだろうか。それ以前に街中の状況は気にならないのだろうか?


「……とりあえずご案内いたします。自分の目でお確かめください」


 そう言って私たちは屋敷に案内された。まぼろしネズミとウサリーは魔物だが、メイドたちは特に文句は言わなかった。


 ☆


 案内された応接間は立派なものであった。赤いじゅうたんの上に、立派なソファーが備え付けられている。

 私はソファーに座り、アンヘンガーも隣に座る。ツァールトとゲッティンは後ろで控えていた。

 まぼろしネズミとウサリーは物珍しそうに部屋を見て回っている。私はそれを見て微笑ましくなった。


 しばらくするとバトラーがやってきた。そして銀髪の青年が入ってくる。立派な身なりをしており、彼がマッケンゼン領領主ドレスデンド・ド・マッケンゼンなのだろう。

 その後ろに茶髪のカールに白いドレスを着た妙齢の女性がついてきた。無邪気そうな雰囲気で、整った顔立ちだが、どこかちぐはぐな印象を受ける。


「ハーゼ・ド・ヴァイスシュネー公爵殿、お初にお目にかかります。私はマッケンゼン領領主ドレスデンド・ド・マッケンゼンでございます」

「そして私は愛人のママスでございますのよ」


 ママスという女性がドレスデンドに抱きついた。本人は照れている様子である。その様子をアンヘンガーは驚愕の表情を浮かべていた。何がそんなにおかしいのだろうか?


「……兄さん、その女性は誰かな?」

「おおアンヘンガーではないか。ずいぶんひさしぶりだな。前は母上にそっくりなお前を跡継ぎにしたがる家臣がいたが、今はもうすっかりいなくなっているぞ。あっはっは!!」


 ドレスデンドは質問に答えず呵々大笑いした。アンヘンガーは何も言わない。この兄弟はどこか複雑なものがあるようだ。


「ところでオガ、いいえ、ドレスデンド様。あの女は何なのですか? 魔物のバニーガールの格好をしているなんて異常ですわ。しかも領主であるあなたと訪問するのに、常識のあるとは思えませんわね。この女は地下牢に放り込む方がよいですわ!」


 ママスが叫ぶと、部屋から兵士たちがやってきた。手には剣を握られている。


「おかあ、いいやママス! 彼女は魔物ではない、バニーガールの格好をした人間です! 彼女はあくまで仕事で来ただけですから、あなたが心配することは一切ありません!!」


 ドレスデンドは注意するが、ママスは聞く耳持たなかった。まるで子供である。


「いいえ、私にはわかりますわ! この女からは泥棒猫の匂いがぷんぷんいたしますもの。かわいいドレスデンドちゃんを誘惑するなんて許せませんわ!!」


 なぜか様付けから、ちゃん付けに変わっていた。


「……この僕はどうなのでしょうか。かつて兄さんと跡継ぎの座を争った僕が帰ってきたのですよ。そちらは懸念を抱かないのですか?」

「はあ? あなたは何を言っているのかしら。わたくしがいる限り、ドレスデンドちゃんの地位は安泰ですわよ。大事なのはそこの女ですわ! 大きな胸にエロチックな空気を醸し出しているんですもの。そんな人を許せるわけがありませんわ!!」


 ママスは胸に手を当てて涙目になっている。すぐ気を取り直すと兵士たちに私たちを捕らえるよう命じた。

 私だけならあがいていただろうが、ここにはツァールトと、ゲッティンやウサリーもいる。まあ、まぼろしネズミはどうでもいいかな。


 こうして私たちは地下牢へ入れられたのだった。


 ☆


 地下牢は屋敷の地下にあった。むき出しの石壁に石の床は黴臭く、冷たかった。

 部屋は六部屋ほどあり、鉄格子がはめられていた。

 私たちは牢屋に閉じ込められてしまったのだ。


「わーい、ろうやだー! ゲッティンはじめてー!」

「あたちも初めてだわさ。人間を閉じ込める部屋だから、人間は変わっているだわさ」

「……お前らは現状をちっとも理解してないだろ」


 無邪気なゲッティンとウサリーを尻目に、まぼろしネズミは呆れていた。

 ツァールトは心配そうな顔になっている。突然の凶事に困っているようだ。


「……いったいどういうことでしょうか。マッケンゼン領に何が起きているのでしょうかね」

「ああ、街中でのことですか。実はあれ、前から決まっていたことなのですよ」


 アンヘンガーがあっさりネタバレをした。街中で強制労働を強いられた男たちはドレスデンドに逆らう領民とドクメント帝国の犯罪者であった。

 そいつらを奴隷として働かせていたが、これは母親のフレイヤと、宰相フローリアンも承諾しているという。

 なので街中での行為はまったく問題はないという。しかし大事なことがあった。


 それは兄ドレスデンドのことだ。彼は本来女性アレルギーだという。女性が近づくとじんましんが起きるのだと。なので世話役は男のバトラーだけで構成されていたのだ。

 そもそもツァールトの動向を願ったのは、彼女のサキュバス能力が目当てなのだ。

 現実では触れられない女性でも、夢の中なら交わることができる。それにある程度夢の中ならコントロールは可能だそうな。これは長年サキュバスの研究成果で、トラウマなどを解消することができるという。


「確かに私でもそれはできますね。ですがママスという人はどういうことでしょうか。普通にドレスデンド様に接しておられましたが」

「そうです、そこが解せません。兄さんの現状はバトラーがこまめに手紙をくれるので理解しております。少なくとも兄さんはつい最近まで女性アレルギーでした。それなのにあの状態は異常です」


 アンヘンガーは首を傾げていた。だが私はある考えに思いつく。

 

「女性アレルギーが治ったのではなく、別人になったのなら説明がつきますね」

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