表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第8章 まぼろしネズミはとっても不幸
52/114

第50話 あげじゃがといももち

「へえ~、ここがハーゼの住む家なんだね」


 日も暮れて真っ暗な町の中、雲魔人のヴォルケが私の屋敷を見上げている。彼女は徒歩でエアツェールング王国まで来たのだ。

 馬車に乗せてもよかったが、自分で歩くからいいと断ったのである。

 事実、ヴォルケは徒歩を苦痛に思っておらず、けろっとした表情であった。


 むしろまぼろしネズミと別れることに駄々をこねていたが、ちょうどこっそり忍び込んでいた彼を捕まえ、王都にも会いに来ることを約束させた。

 私ににらまれてぶるぶる震えていたね。ちなみにグレーテルには会わせていない。あまりはしゃぎすぎるのも、問題だと思ったからだ。

 

 さてヴォルケの様子をグレーテルは感心していた。彼女はしきりにヴォルケに話しかける。もっともヴォルケは難しい言い回しは苦手で、幼児のようにわかりやすく答える必要があった。

 グレーテルはすぐに気づいて、彼女に対して丁寧に話をするようになったのだ。


 彼女は王族で、お姫さまだ。高慢で尊大な態度であるが、庶民に対しては王族の義務として、話を聞くことが多いらしい。

 もともと兄であり、現国王のヘンゼル・ド・エアツェールング三世の補佐のために、面倒な仕事を率先して片づけていたが、ここ最近はすべてひとりでやるようになり、グレーテルを部屋に閉じ込めているそうである。


「そうですよ。ヴォルケ用に家を改良しましたから、寒い外にいる必要はありません」

「う~ん、オイラは家の中より、外がいいな~。閉じ込められるのは気持ち悪くてやだな~」

「そうですか。それなら仕方ないですね。でも絶対家の中に入りたくないわけではないのでしょう? 私がおいしい料理をこしらえてあげますからね」


 そう言うとヴォルケは巨大な顔に笑顔を浮かべた。まるで映画の巨大なスクリーンに映し出されたような迫力がある。

 ちなみにミルドレッドは帰宅した。マギーに報告を終えたからだ。


「ふふふ、噂では雲魔人の胃袋は普通の人と同じと聞きますが、本当でしょうか?」

「本当ですよ。大人の分、一人前でお腹いっぱいになるのです。これは彼女が魔人であり、雲の身体を持つからでしょうね」


 グレーテルの質問を答える。ヴォルケは一見三メートルほど大きい寸胴な幼女だが、その体のつくりは違う。アフリカゾウ並みに巨大だが、本人は平然と二足歩行ができるのだ。

 身体が大きければ大きいほど、その体重が身体にのしかかる。なので漫画みたいな巨人は直立歩行ができないそうだ。

 それに彼女の皮膚は特別で、植物がよく育つという。私と彼女が出会った頃、ヴォルケの身体はコケや蔓に覆われていたからだ。

 本人はまったく平気であり、話を聞けば、大人たちも身体に野菜とか生えていたという。

 中には頭部にリンゴの木が成っている者もいたそうだ。この辺はご都合主義のファンタジーと言えるだろう。


「そういえばマギーが言ってましたね。ヴァイスシュネーの家督を得るには、ヴォルケの力が必要だと。いったいどういう意味でしょうか?」


 私が呟くと、ヴォルケが反応した。


「ヴァイスシュネー? どこかで聞いたね、それ。どこだったかな~?」


 彼女は首を傾げる。しかし思い出せないようだ。私も無理して訊ねるつもりはないので、やめさせる。

 しかし、ヴォルケが聞き覚えがあるといった以上、雲魔人と関わることだろうな。

 そもそもヴァイスシュネーの事はあまりよく知らない。マギーに訊ねるとしよう。


「ねえ、ハーゼ。オイラおなかがすいちゃったよ。ゴハンまだ~?」


 ヴォルケが食事をねだる。もう夜だ。屋敷のメイドには食事を用意するよう命じてある。

 彼女用に肉と魚を使用しない食事を作らせたのだ。


 ☆


 食堂には大きなテーブルの上に、皿に盛られた料理が並んでいた。

 それは拳ほどの大きな揚げ物に、何か平べったいもっちりしたものであった。

 その後ろにマギーを筆頭に、屋敷のメイドたちが並んでいる。私がレシピを教え、マギーが指示したのだ。

 マギーはバニースーツを着ているが、メイドはメイド服である。代わりにうさ耳を付けていたが。


「ん~、これは何~?」


 ヴォルケが揚げ物に指を差した。グレーテルも興味津々だ。


「これはあげじゃがといいます。ホットケーキの材料にじゃがいもを包んで、油で揚げた食べ物ですよ」


 これは北海道に伝わる伝統料理だ。皮をむいたじゃがいもに、ホットケーキの材料で包み、それを油で揚げるのだ。

 皮はフランクフルトのようなものである。中山峠なかやまとうげの茶屋や、北海道各地にジャンクフードとして売られているのだ。


 ヴォルケはそれをひょいとつまんで食べた。


「うん、おいしいね。まるごとじゃがいもが入ってて、ふかしいもとは違う味わいだね~」

「まったくですわね。この揚げた皮もなかなかですわ。揚げ物だから体重が気になりますけど、美味ですわね」


 ふたりとも満足そうである。メイドたちも自分たちの作った物が、問題なく食べられることに安堵していた。

 まあ、何度も練習させたと思うけどね。失敗作は無料で町の人に配布されてます。


「次にこれは何かしら? 白っぽいのと、黄色いのも混じっておりますが」

「これはいももちと、かぼちゃもちです。じゃがいもとかぼちゃを潰して、でんぷん粉で練り上げたものですよ」


 これも北海道の料理だ。いももちはお吸い物にも相性が抜群である。もちもちした食感がたまらないのだ。

 かぼちゃもちも同じである。こちらは独特の甘みがくせになるのだ。

 ただのイモの塩煮では飽きてしまうので、手間をかけて食感を変えるのである。

 私の母親が子供の頃は、コンビニなんてない、おやつはイモの塩煮か、いももちの時代だった。

 

 学校の運動会で、バナナとゆで卵が最高のごちそうだったそうである。私が小学生の頃、好き嫌いが激しく、よく担任教師に無理やり食わされていたな。今思えば、迷惑をかけて申し訳なかった。

 

「うん、もちもちしておいしいね~。かぼちゃもちも甘くておいしい~」

「まったくですわね。地味ながらも深い味わいですわ。さすがは料理ギルドのマスターですわね」


 ふたりとも感心してくれている。実際は先人の知識をもらっただけなんだけどね。

 実はメイドたちが実家に戻った際に、いももちを広めているが、これは問題ない。

 家庭で作るのと、店で出されるのは別物だからね。むしろ競争しあい、独自の進化をとげることを期待している。


 事実、ギルドの使用人であるツァールトからは、自分の住んでいたズンブフ村では独自のハンバーグが生まれているという。

 料理ギルドマスター、ハーゼが直に教えた元祖の店と売り出し、チーズや目玉焼きを乗せたハンバーグを売り出しているそうだ。

 

 こちらは私の世界でもよくあるものだが、彼らに教えてはいない。自分たちでチーズなどを載せるようにしたのである。

 私はそれを聞いて感動した。彼らは無知であるが、馬鹿ではない。教えられたものを、自分たちの知恵で昇華しているのだ。


 あげじゃがといももちを頬張りながら、私はそう思うのだった。

 あげじゃがといももちは北海道の名物料理です。

 もっともいももちは他県だとまったく別物なので、注意が必要ですね。


和歌山県、高知県の場合はさつまいもを使います。

 岐阜県の場合は里芋とうるち米を使っているそうです。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ