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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第7章 ヘンゼル国王との出会い
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第49話 ヴォルケを迎えに行きました

「まあ、ここがレオパルド領ですのね」


 青い短髪の鬘を身に付けたグレーテルが楽しそうに答えた。周りは畑に囲まれており、農夫たちが牛や馬を連れて、作業をしている。遠くには青い山が連なっていた。

 おもちゃ箱のような王都より、かなり寂しい風景であるが、お姫さまには十分刺激的であるようだ。

 水車小屋を見ては、物珍しそうにけらけら笑い、農家の前に干してある果実を見ては、好奇心旺盛に農夫たちに質問していた。


 ちなみに私とグレーテル、職員のミルドレッドの三人で来ていた。ギルドが用意した馬車に乗っている。

 私ひとりなら日帰りで往復可能だが、今回はレオパルド子爵に預かっていたヴォルケを引き取ることになったのだ。礼儀を欠かせてはいけない。

 もっとも身に付けている衣装はバニーガールなのはご愛敬だ。グレーテルはわくわくしているが、ミルドレッドは恥ずかしさのあまりうつむいている。涙目であった。

 

 うむ。こういう恥じらいこそがバニーの魅力を引き立てるのである。ミルドレッドはバニーの鏡だ、他の職員もぜひ見習ってほしい。


 さて目的地に着き、私は馬車から降りた。すると周囲の人間が驚愕の目で私を見る。


「ばっ、バニーガールだ! 魔物が馬車に乗ってきたぞ!!」

「本当だ! 毛は薄いけど、まぎれもないバニーガールだ!!」

「この馬車は料理ギルドのものだぞ。まさかマスターのハーゼさまはバニーガールに喰われたのか!?」


 ……こいつら、私を魔物と勘違いしていますね。そもそも以前顔を見せている人もいるのに、なんで気づかないのか?

 ふたりは何某のように素顔を晒しても、本人と認識できないのと同じだろうか。

 彼らは慌てて槍や剣を持ち出そうとしている。これは本気のようだな。

 背後でグレーテルがクスクスと笑っている。ミルドレッドは泣き出しそうだった。


「みなさん、私です! 料理ギルドのマスター、ハーゼです!!」


 私はうさ耳バンドを外した。すると彼らは目を丸くする。


「―――!? ハーゼさまだ! いきなりハーゼさまが現れたぞ!!」

「なんでハーゼさまをバニーガールと勘違いしたんだ!? まったくわからん!!」

「彼女は魔物の生まれ変わりなのか!?」


 騒ぎはまったく収まらなかった。というかバニーガールという魔物がいることに驚きだよ。王都では誰もツッコミを入れなかったけどね。

 そこにミルドレッドが私の耳元でささやいた。


「バニーガールとはこの地方に伝わる魔物の名前です。以前襲ってきたうさ耳魔女の上位版なのですよ。ちょうどマスターのように人間に近い体系で、うさ耳と胸部と腹部が毛に覆われているのです。数年に一度村に降りてきては男を誘って、それを元に夫婦喧嘩を起こして楽しむ悪質な魔物なのです」


 彼女の説明に納得した。王都でもすべての魔物を把握しているわけではないようだ。

 それにしても男を誘う、か。まさにバニーガールの鏡だな。私は神の知識のおかげで衣装や料理を作り出すことができる。

 だが頭でっかちで肝心なことを忘れてしまっていたのだ。

 バニーガールの魅力は恥じらいだ。水着のように露出度は少ないが、その非現実的な衣装は独特である。

 

 むき出しの胸に、すらりと網タイツで包んだ脚。だが最大の魅力はうさ耳としっぽなのだ。

 あれがなければバニーとは言えない。九十年代のAVは網タイツを破らず、全部脱ぐのが欠点だった。しかもうさ耳まで邪魔だと言わんばかりに外すから、頭に来たね。


「あれ? でも私は以前からこの格好で、ここに来ていたはずですよ? それなのにいきなり初遭遇みたいに扱われるなど、ありえないのでは?」


 そうなのだ。私は週に一度、ヴォルケに会いに行く。その際にレオパルド子爵と面会し、城の使用人たちとともに料理を作るのだ。

 ちなみにビールを保存するビア樽は大好評である。いつでも泡立つビールが飲めることに、領民は感動しており、子爵も喜んでいた。

 ビールの湧き出る泉は、周囲に麦畑が存在する限り、枯渇することはないという。

 今までは領民だけが楽しんでいたビールが、王都でも飲めるようになったのだ。


 話はそれたが、子爵にもこの衣装は見せている。彼が私を見てどう思うかが見ものだな。


「お前たちは何をしているのだ。今日はハーゼ殿が訪問する日なのだぞ……」


 レオパルド子爵がやってきた。あいかわらずステレオタイプの貴族だな。巻き毛にひげ、片眼鏡をかけた中年男性だ。

 私はすばやくうさ耳バンドを頭に着ける。


「―――!! なんだこいつは!! なぜバニーガールが我が屋敷に闖入しておるのだ! 者共、さっさと捕らえるがいい!!」


 私はすぐうさ耳バンドを外す。すると子爵は呆気にとられた表情になった。


「なっ、ハーゼ殿ではないか!! なぜ私はあなたをバニーガールと思い込んだのだろうか……」


 彼は自分が錯覚したことに疑問を抱いていた。週に一度出会っている子爵でさえこうだった。これは彼らの意識が変化したということだろうか?


「ぼんやりとですが、わたくしも耳にしたことがございますわよ。バニーガールという魔物の話を。もっとも悪質なものではなく、いたずらするたぐいのものだと聞いておりますわ」

「グレーテル、それは誰に聞いたのですか?」

「誰かは忘れましたわ。ですが噂話で聞いたことがある程度ですわね」


 彼女ははっきりと答えられないようだ。まるで記憶を上書きされたようである。私が再びうさ耳バンドをつければ、子爵を始め、他の人もハーゼと認識できるようになっていた。


「ところで背後の方々はどうですか? 彼女らも私と同じ格好なのですが」

「そうですねぇ、正直ハーゼさま以外、バニーガールと思えませんでした。確かにハーゼさまの後ろにいるふたりも目に入ってましたが、魔物と思えませんでした」


 使用人たちが声をそろえて言った。うむ、私だけバニーガールに見えたのか。

 気になるが、今は保留にしておこう。今はヴォルケを迎えに行くのが優先だ。


「レーンスヘル・ド・レオパルド子爵さま。今回ヴォルケを迎えに来ました。長い間お世話していただき、ありがとうございます」

「うむ、こちらもハーゼ殿にはお世話になりましたからな。ヴォルケ殿の力もさながら、料理ギルドの協力によって、我が領地も豊かになりました。礼を言っても足りません」


 レオパルド子爵は嬉しそうだ。

 さて数分後、ヴォルケがやってきた。白い髪の毛をボブカットにしており、赤い目が際立っている。5メートルほどの巨体だが、5歳ほどの幼女の姿にギャップを感じた。


「お~、ハーゼだ~。おじちゃんから聞いたけど、今日からオイラと一緒に暮らせるっていうけど、本当かい?」


 おじちゃんとはレオパルド子爵の事である。


「本当ですよ。今日からあなたと私は一緒に暮らせます。ですが、今すぐではありません、今日一日ここに泊まって、お世話になった人々にお礼をするのです」

「うん~、わかった~。親分にもきちんと説明しないとね~」


 彼女の言う親分とはまぼろしネズミのことだ。話を聞く限りよほどのことがない限り、毎日来ているそうだ。

 まあ、彼なら私の屋敷に来れるだろうし、問題はないな。


「……ところでハーゼ殿、背後にいる青髪の女性ですが、お知り合いでしょうか?」

「えっ、あっはい。ギルドの新人で、アリアーヌといいます」

「そうですか……。実は以前城に上がった際に、拝見したグレーテルさまに似ていたので、驚きましたよ」


 そう子爵がいうと、グレーテルは乾いた笑みを浮かべていた。彼もまさかグレーテルが丸刈りになっているとは思うまい。

グレーテルの偽名、アリアーヌはポール・デュカスのオペラ『アリアーヌと青髭』から取りました。

単純に彼女の鬘が青髪なので、青髭に結び付けたのです。

もともと青髭の妻の名前はオリジナルにはなかったのです。


青髭はシャルル・ペロー版とグリム童話があります。

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