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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第6章 ハーゼ、フォッカー砂漠に向かう
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第42話 伝説の技

「ひゃっひゃっひゃ~。お待ちしておりましたじょ、ハーゼ殿~」


 私がアインデッカー領に戻ってくると、入り口にひとりの老人が立っていた。

 もっともよろよろと風が吹けば吹き飛びそうな、枯れ木のような風貌である。

 着ている服は立派なもので、どこかの貴族のようだが、手にしている杖はぷるぷると震えていた。


「どなたでございましょうか。私は記憶力がいいほうですが、ご老体とは初めてだと思います」

「もちゅろん! わしもあにゃたとは初対面でごじゃりますよ。わしの名はマンフリート・ド・アインデッカー。武具ギルドのマスターでごじゃります」


 そう言って老人、マンフリート氏はぺこりと頭を下げた。

 すると、ごきっと嫌な音が響く。それは老人の腰の音であった。

 彼は額から脂汗をだらだらと流れている。


「ぐごごごご……。ぎっくり腰になっちゃいまちた。ちょいとおまちしてくだしゃれ」


 マンフリートは舌足らずな口調である。年齢は60くらいだが、見た目以上に年老いているようだ。

 マンフリートは息を吸うと、背を伸ばし、ぺきっと腰を直す。どうやら彼にとって日常茶飯事のようである。


「アインデッカー……。もしかしてアルブレヒトさまの御父上でございますか?」

「そにょとおり! わしは二年前に息子に跡をちゅがせて、今の地位になったにょである!!」


 マンフリートは胸をパンと叩いた。するとばきっと骨の折れる音がする。

 今度はあばら骨が折れたようだ。ぶくぶくと口から泡を吹いた。


「ぐごごごご……。またあばらにひびがはいっちったでしゅな。もうちっと待ってくりぇ……」


 なんとも面倒な人だな。この人はどうして武具ギルドのマスターなんかしているんだろうか?

 すると、遠くから地鳴りが聴こえてくる。それは巨大なサボテンうしだ。群れから外れ、がむしゃらにこちらに向かってきている。

 このままでは町に被害が及ぶので、倒そうと思ったら、マンフリート氏がすっと横に入ってきた。


「ここはまかちぇて。にゃんでわしが武具ギルドをおしゃめているか、その理由をみちぇておこう」


 そう言って私に離れるよう命じた。ろれつの回らない口調だが、目付きだけは鋭い。私は素直に従うことにする。


 さてよろよろと杖を突き、入り口から少し離れていく。

 サボテンうしは獲物と判断したのか、枯れ木のような老人目がけて突進してきた。

 もう走らなければ死んでしまいそうな勢いである。


 マンフリート氏は杖を手に取ると、柄の部分を引っ張った。するときらりと鈍く光る刃物が出てきたのだ。

 それは仕込み杖であった。もっとも某映画の主人公みたいに、居合切りではないが。


 サボテンうしは巨大な角をマンフリート氏目がけて、突き刺そうとしていた。

 しかし老人は柳の枝のように、ふわりと身をかわし、手にした仕込み杖を水平にする。

 刃はサボテンうしの口を切り裂き、さらには胴体を水平に切り裂いたのだ。

 実際はサボテンうしの突進のせいだが、マンフリート氏はただ刃を横に向けただけである。

 

 身体を切り裂かれたサボテンうしは老人を通り過ぎた後、数歩よろよろと進み、ばったりと倒れてしまった。

 非力な老人が自分より巨大な魔物を倒したのである。


「……こいちゅは、あんたが獲ったニードルボアの針でつくりゃれたもんにゃ。弱い女子供でも、気軽にちゅかえる、しゅばらしい武器じゃ。けどね、しゅるどすぎるので、非常時以外に、ちゅかわないように指導しちょるけどな」


 マンフリート氏は柄を拾い、収めた。なんとも鮮やかな勝利である。


「なるほど、あなたのような貧弱な老人でも、扱えることを訴えているわけですね。これは説得力がありますよ」


 私の答えにマンフリート氏は優しい笑顔を浮かべていた。


「ルドルフが料理ギルドのマスターをゆじゅったと聞いたときはおどりょいたよ。けど、その後のあんたの活動をきいて、にゃるほどなと思ったわい。あんたが魔物どもを300匹、まとみぇて倒したときは、びっくらこきまろじゃよ」


 あれ? 私が砂漠で魔物を倒したことは知られているのか?


「うむ。王都で大空にハーゼ殿が戦っている、しゅがたが映されたぞい。まあ、あれは大魔女のしわざじゃよ。なんのためにやったのかは、不明じゃがね」


 なんと私の戦う姿が暴露されていたのか。しかも大魔女のしわざだという。いったい何のためにやったのかわからない。

 それにしても王都で観たというなら、他にも不特定多数に見られたということだ。

 しかし、マンフリート氏は王都にいたのに、どうしてアインデッカー領にいるのだろう?


 次の瞬間、マンフリート氏はスケベそうな顔になった。


「ひゃっひゃっひゃ。王都からは魔法の箱舟で、空をとんできたんじゃよ。なぜならわしはしょなたの、その豊満なおっぱいを、にゃがめにきたんじゃからな!!」


 鼻息が荒い。私の胸を見ながら明らかに興奮している。

 なんか安心した。この世界ではバニーガールは魔物の格好と思われており、全然性的な興奮をしてくれる人がいなかったのだ。まあ、回収人のアンヘンガーだけは別だけどね。

 私はなぜか涙が一筋こぼれるのであった。


「なんだか、嬉しいです。みんなこの衣装を魔物の格好と言っていたので、私の身体などどうでもいいと思われていました」

「……うむ。確かにきばちゅな恰好ではあるが、しょなたの胸を無視しゃれるとは、さてはそいちゅらは不能じゃな」

「アルブレヒト氏は私よりも踊り子の衣装の方が好みでしたね」

「まったく、あのバカ息子は、きょの衣装のしゅばらしさを理解しちょらんな。しゅばらしい胸をもっちょるのに……」


 マンフリート氏は息子の不甲斐なさを口にすると、瞬時に私に詰め寄った。

 そういえばギルドマスターであり、アルブレヒト氏の父親である彼は何故ひとりで来たのだろうか。


「にょほほ。人がいてはできにゃいことがある。それはしょなたにぱふぱふしてもらいたいきゃらじゃ!!」


 ぱふぱふ! 某人気漫画に出てきた伝説の遊戯!! ぱふぱふをした女性もバニーガールの格好をしていたっけ。これは運命としか思えないな。


「ふふふ。今は誰も見ておりません。すぐに済ませましょう」


 私は自分の胸を持ち上げた。マギーにもしたことがないが、私の胸に興味を持つ老人の期待を応えてやりたくなったのである。

 

「おお! 善は急げじゃ! ではさっそく!!」


 ぱふぱふ、ぱふぱふ、ぱふぱふ。


 ぱふぱふ、ぱふぱふ、ぱふぱふ。


 ぱふぱふ、ぱふぱふ、ぱふぱふ。


「やーやー! ハーゼ殿、出迎えが遅れましたぞ!!」


 遠くでアルブレヒト氏がやってきた。複数の兵士と使用人たちを引き連れ、ラクダに乗っている。

 

「父上から聞きました! なんでも王都ではあなたの活躍が万人の目に触れたそうですね! もっとも父上がわざわざ魔法の箱舟を使うとは、少々解せませんが。ところで父上はどこにいらっしゃいますか?」


 私は左の方を向いた。アルブレヒト氏も釣られてそちらに目を向ける。

 マンフリート氏は仰向けになって倒れていた。鼻血をだらだらとたれながしている。

 アルブレヒト氏はすぐに父親の方へ駆け寄った。


「父上! いったいどうしたのですか!!」

「うひょ、うひょ、うひょひょ……。生きててよかったわい……」


 血が大量に出て、弱り切っている。しかしその表情は恍惚であった。

 アルブレヒト氏はわけがわからず、使用人に命じて父親を救護させた。

 その後の話は簡単だ。回収したキングシュガーとミラクルシュガーは領主の元に渡した。

 キングシュガーの一割はこちらがもらうことになり、ミラクルシュガーは3個贈られたのだ。


 エアツェールング王国に納めなくてよいのかと思ったが、ストックは魔法のランプにあり、十年に一度回収できなくても、前のものを贈ればよいとのことである。

 さて私が倒した魔物は300匹ほどで、半分はこちらに提供することにした。


 コンドルはなの花はすばらしいドレスが作れるという。さらに蜜も美味だそうだ。それに陶器のうわぐすりに使えるらしい。

 サボテンうしの皮も丈夫な防具ができあがるし、肉も牛に近い触感があるという。

 さばくキノコは食感が魚肉に近いそうだ。粘液はセメント代わりになり、大工ギルドにも使えるそうである。


 アインデッカー領でもこれほどの量は手に入らず、領民たちは大喜びであった。

 それと同時に新しい料理ギルドのマスターの実力も知れ渡り、上々である。

 

 私はアインデッカー領にある料理ギルドの支部で、コロッケを作った。レシピなどは各支部に送られているが、実際に私に作ってほしいと頼まれたのだ。

 特にコロッケ人気が高く、コロッケ女王自らの手作りを望まれていたのである。


 こうして私はアインデッカー領で用事を済ませ、王都へ帰還するのであった。

マンフリート氏の名前は、マンフレート・アルブレヒト・フライヘア(男爵)・フォン・リヒトホーフェンがモデルです。

 第一次世界大戦で活躍したドイツの陸上軍人で、レッドバロンと呼ばれたエースパイロットです。

 息子のアルブレヒトも同じですね。


 フォッカーアインデッカーは第一次世界大戦時のドイツの単座単葉戦闘機です。

 なんで砂漠の国で戦闘機に関わる名前にしたか、自分でもわかりません。

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