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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第6章 ハーゼ、フォッカー砂漠に向かう
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第41話 ミラクルシュガー

「うわー、これが王様の棺なのですか?」


 私は驚いた。なぜなら予想していたものと、まるっきり違うのだから。

 棺と言えば、人間が収まるくらいのものだと思った。キングシュガーを回収するから少しは大きめかと想像していたのだ。

 ところが目の前に広がるのは、学校のプールほどの広さがある棺だった。

 そこには真っ白い砂糖が並々入っているのである。


「……王様のミイラはどこにあるのでしょうか?」

「朕ならここにおるぞよ」


 また後ろから声がした。それはスフィンクスの声ではなく、男の声であった。

 振り向くと、そこには全身を包帯で巻いたミイラ男が立っている。顔は干からびた骸骨のようだ。


「!? あなた様が初代フォッカー王国国王、アヴドゥル一世陛下でありますか。私は料理ギルドのマスター、ハーゼと申します」

「うむ。朕の顔を見て驚かない者は少ないないからのう。気に入ったぞ」


 どうやら王様はご機嫌のようだ。もっとも死んでも立ち歩いて話すのだから、驚く人がいて当然だと言えよう。


「スフィンクスよ。おるか?」

「はい、ここに」

「お前の姉、アネンクスはどうしようもない奴だ。そもそもアントリンクがこの地で平和に暮らせるのは、朕のおかげであるぞ。その恩を忘れるとは、あきれ果てたものじゃ」

「申し訳ございません。姉の不始末はわたくしたちの不始末。いかようの罰も受け入れます」

「よいよい。悪いのはアネンクスであり、お前たちは関係ない。むしろ朕の不徳が致すところよ。謝るのは朕の方じゃ、許してくれスフィンクスよ」


 王の謝罪を聞いて、スフィンクスは首を垂れた。

 そして王様は私の方へ向いた。


「ところでそなたの格好はなんじゃ? まるで黒ウサギではないか。さては魔物除けに魔物のふりをしておるのじゃな?」

「いえ、これはバニーガールというものです。魔物ではありません」


 王様でもこれは魔物に見えるのか。すると王様は首を振った。


「冗談じゃ。朕もそれくらいは知っておる。朕は普段は棺の中で眠っておるが、その際に創造神さまの記憶が流れてくるのじゃよ。そこは不思議な場所でな、最初は白い部屋に柔らかそうなベッドの上で寝ている女の目の前におったのじゃ。その女はまるで石のように身動きしない。その後朕は移動するのじゃが、そこには山のようにそびえたつ石の塔に、鉄の箱がひとりでに動いておるのじゃ。さらにいかずちの力で人々は幸せに暮らしておる。そなたの衣装もてれびとやらで、仮装大賞という番組にも出ていたのを覚えておったのじゃよ」


 創造神の記憶か。白い部屋にベッド。おそらく創造神を生み出した女性の事だろう。

 病院のベッドの上で意識不明の状態だったのだ。そして彼女の記憶がこの世界の住人に影響を与えたのだろうな。


 そもそもまぼろしネズミの元ネタは、昔の漫画、まぼろし探偵がネタだしね。

 アネンクスも世紀末救世主伝説のネタを披露していた。

 私が提供した料理も違和感なく受け入れていたが、創造神の影響だろうね。

 

 小説家になろうでも、異世界の技術を受け入れない話があった。例え便利な道具でも全く広まらないというのがある。

 結局広がったのは、権力者が無理やり使わせたわけで、人間は変化に対応しにくいのだ。


 もっともこの世界は日本人女性が、自分の脳内で生み出した世界である。西洋の、それもグリム童話に近い世界観だが、日本の料理が受け入れられるのも、土台が日本人に近いからだろう。


「それはそうと、キングシュガーを回収したします」

「うむ、今回は迷惑をかけたからな。謎解きはなしでも問題はないぞ」


 王様に断って、私は砂糖の上にランプを置いた。そして蓋を開き、こう言った。


「ここにあるキングシュガーのみを回収せよ」


 すると砂糖は見る見るうちにランプの中へ吸い込まれていった。プールほどの広さがあるキングシュガーはすべて回収されてしまったのである。

 なんでもありのファンタジー世界だが、実際に目撃するとある種の感動を覚えるな。

 ここに来る前はコンドルはなたちの遺体を回収したけど、何度見てもすごいと思う。


「それとミラクルシュガーもほしいのですが」

「うむ、こちらは謎解きをしてもらわねばな。スフィンクスよ、問題を出せ」

「了解いたしました」


 スフィンクスは頭を下げると、私の方に向かう。


「では問題です。次の内仲間外れはどれでしょうか?

 A・赤胴鈴之助あかどう すずのすけ

 B・イガグリくん。

 C・少年ジェット」


「……Aの赤胴鈴之助です。どれも実写ドラマになりましたが、アニメになったのはAだけです」

「じっしゃどらまとか、あにめとか、よくはわかりませんが、正解です。すばらしいですね、わたしもよくわからない問題をさらりと解いてしまうなんて。あなたのような方こそ、この世にあだなす者たちを倒す七色の力を持つおばさんなのですね」


 やっぱ、問題の内容をよく理解してなかったのか。逆に王様は「ずいぶん詳しいなぁ、中身は相当な年齢なのだろうか」と感心していた。

 私はケーブルテレビで古い作品とかよく見ていたのだ。それをネットとかで調べて詳しくなったのである。

 ちなみに赤胴鈴之助はチャンバラもので、イガグリくんは柔道漫画だ。

 少年ジェットは少年探偵モノである。


 というかこの世界の人間では正解できないだろ!! 三択だからあてずっぽうでもあたるだろうが、この百年かすらなかったのだろうな。


「では約束通り、ミラクルシュガーを授けよう。えい!」


 そう言って王様は自分の頭を蓋のようにパカっと開いた。そこから手を入れて、ピンポン玉ほどの大きさの砂糖を十個取り出す。宝石のようにキラキラと輝いていた。

 王様の頭の中にあるのか! ちょいとびっくりした。


「これがミラクルシュガーじゃ。朕は自らの身体を利用して、この砂漠の砂を砂糖に精製しておる。一月も経てばこの棺いっぱいの砂糖が生まれるわけじゃ。しかし、ミラクルシュガーだけは違う。純粋な砂糖のみを吸収しており、ひとつ精製するのに十年かかるのじゃ。ここ百年は誰も手に入れておらぬ故、十個も溜まり、頭が重くて仕方なかったわい。では、受け取るがよい」


 そういって王様は私にミラクルシュガーをくれた。これをランプの中に入れる。

 これで私の仕事は終わったのだ。


「ハーゼさま、今回は我が姉が迷惑をかけ、申し訳ありませんでした。このお礼は必ず致します」


 スフィンクスが再び頭を下げる。悪いのはアネンクスなのだから、彼女があやまる必要はない。それでも本人は気が済まないようなので、受け入れる。


「では、朕は寝るとするか」


 そう言って王様はプール並に広い棺の中で、ごろんと寝そべった。そしてそのまま動かなくなる。

 すると口から、何やら吐き出していた。それは白い砂糖であった。


「でもなんでミイラから砂糖が生まれるんだ?」

「それはこのピラミッドは生きているからです。砂漠の砂糖を吸い取りどんどん成長しているのですよ。ですがまったくおいしくないのです。王様は死後その体に魔法をかけ、寝そべった側から砂糖を吸収し、ろ過する秘術をかけたのです。そのおかげでピラミッドは過度に成長することなく、今の状態をとどめているのですよ」


 なんとも不思議な話である。もちろん王様だけでは成長と止められないので、アントリンクたちが食事としてピラミッドの内部を削っているそうだ。

 おいしくはないが、食えないモノではないらしい。そうやって共存しているとのことである。

イガグリくんの作者、福井英一ふくい えいいち先生は1954年に33歳で死去しました。

少年ジェットと赤胴鈴之助の作者、武内つなよし先生は1987年に65歳で死去しました。

今回のクイズはちょっとマニアック過ぎましたね。


ちなみに赤胴鈴之助は最初福井先生が執筆してましたが、一話を掲載後、急逝しました。

当時新人であった武内先生が続きをかくことになったのです。

イガグリくんも連載中で、別の人が代筆したそうですね。


面白かったら、ブクマや感想をいただけると嬉しいです。

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