第90話 火のギャルの不意打ち口づけと、手のひらの赤いお返し
防衛隊の薄暗い隔離執務室から何とか命からがら解放され、自分用にテイクアウトしたサンドイッチを人間の両手に抱えながら、夜の大集落(トカゲ村)へと直帰してきた、その日の夜のことだ。
(ふぅ……。あの書類地獄はマジで精神構造がショック死するかと思ったわ……だけど! これからは大工のトカゲたちが直してくれた新品の美しいドアが、俺のプライベート密室を完璧にガードしてくれるからな、今夜こそ至高の昼寝ならぬ極上の睡眠を満喫してやるぜ……♡)
俺が人間姿のまま、愛おしそうにピカピカの新調ドアの前に立ったその時、ドアの真横の薄暗い影から、嬉しそうに美少女が、ぬっと現れたのだった。
「あ、マモル! おかえりなさいっす!!!♡」
そこにはまだ人間の姿に変身して衣服を綺麗に着こなしたままの、火の部族の脳筋ギャル・ガルダが待ち伏せていた。
(ひえええええええッ!? ドアは直ったのに、なんで部屋に入る前の外の通路の段階で、人間の姿のままのガルダがストーキング待機してやがるんだ!!!)
俺が人間の姿のまま顔面から滝のような冷や汗を流してフリーズしていると、ガルダちゃんはルビーの瞳を熱く大点火させて俺の顔に詰め寄ってきた。
「マモル様、さっき人間の村のカフェのど真んで、ウチに『ウロコならやるから帰れ!』って約束してくれたっすよね!?その黒ウロコが、今すぐ欲しくてここでずっとお留守番してたっすゥゥゥ!!!♡」
「あ、あぁ……ちょっと待っててね(顔面滝の汗)」
俺は直りたてのトビラを開けて部屋の中へと入ると、ベッドの上にポロポロと剥がれ落ちていた漆黒の脱皮ウロコを1枚手に取り、外で待っていたガルダの手のひらの上へと手渡してやったのだった。
「う、うわあああァァァーーーッ!!! マモルのウロコ、ガチでゲットっすゥゥゥ!!! 最高に大興奮の大勝利っすゥゥゥ!!!♡……あ、代わりにこれを、マモルにプレゼントするっす!!!」
ガルダちゃんは貰った黒ウロコをポケットに秒速で格納すると、自分の身体(トカゲ姿の時)から剥がれ落ちたという、ピカピカと不気味な光沢を放つ真っ赤な脱皮ウロコを、これ以上ないほど満面の笑顔でお返しとして差し出してきたのである。
「いや、ごめん、本当に大丈夫、いらないよ……(※前世18歳の常識人高校生としてのガチの拒絶)」
「嫌っす!!! 受け取ってほしいっすゥゥゥ!!! ウチの初めてのお返しっすよ!? 受け取ってくれないと、悲しくて今すぐここで大号泣の地鳴りを起こすっすゥゥゥ!!!」
「わ、わかったよ、貰っとくから……」
俺がその赤いウロコを渋々受け取った、その油断をした瞬間のことだった。
「――マモル、ウチ、マモルのことがマジで世界一、大好きっすゥゥゥ!!!♡」
ガルダちゃんはルビーの瞳を乙女のハイライトで最大出力に輝かせるなり、俺のゼロ距離まで神速で大進撃し、俺の人間の唇に向けて、真っ真っ正面から不意打ちの情熱的な『愛の口づけ』を豪快にブッ放してきたのである!!!
んむっ♡♡(※人間の姿のマモルへの、ガルダからの全力の不意打ち強奪キス)
「こらァァァッッッ!!! お前、いきなり何しやがるんだバカヤローッ!!!(※俺の人間姿の特大の赤面ブチ切れ絶叫)」
俺が顔面を真っ赤にさせて大慌てで人間の手で自分の唇を押さえて怒ると、ガルダは頬をこれ以上ないほど大赤面させて「えへへ♡ マモル、最高のおやすみバフチャージありがとうございましたっす! おやすみっすゥゥゥーーーッ!!!♡」と、トロンとした悶絶笑顔の最高ステップを踏みながら、夜の大集落の自分の部屋へとマッハの速度でダッシュで直帰退散していってしまったのだった。
(くっそォォォ!!! 油断したわチクショーッ!!!俺のピュアなチェリーの不意打ち唇が、キアラちゃん以外のトカゲ人外美少女に不法侵入で強奪されちまったじゃねぇかァァァ!!!)
俺は直りたての新品ドアをバチッと閉めて部屋へ入ると、ベッドの上で毛布を頭まで深く深くくるんで、悔しさのあまり魂の大大号泣の不貞寝をきめこむのだった。
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(次回更新:来週土曜日18時40分!)




