第86話 カブリア強欲ゲテモノ商会開店と、黒ウロコ新装備の試運転
隣国最強の戦闘狂リザ(中身還暦おばあちゃん)が、大魔導師アリアちゃん(ミイラ姿)を強靭なチート腕力でガシッと鷲掴みにして村の外の薄暗い不気味な森の奥へと強制連行して去っていった、今日のお昼時のカフェのテラス席。
誰もいなくなったテラス席で俺(人間姿)は、運ばれてきたほかほか湯気の立つ特大パスタ2皿(アリアちゃんの分含む)を前に、「持ち帰り用のプラスチック容器とかジップロックみたいな便利な保存オブジェクト、異世界のカフェには絶対に存在しねぇよなぁァァァ!!!」と大号泣の血涙を流しながら、1人で特大パスタ2皿をフードファイターばりに涙目で完食する孤独なフードファイト戦を繰り広げていたのだった。
「ふぅ……。死なねぇけど、ガチでお腹が限界突破してクソ重てぇわ……」
何とかアリアちゃんの分のパスタまで胃袋にチャージし終えた俺は、たまには人間の村の市場の街道をぶらぶらと散歩して腹ごなしでもしようかと、パスタの質量で重たくなった腹をよっこらしょと持ち上げて歩きだした。
街道をのんびり歩き、人間の村の出入り口(境界線の門)からほど近い市場の一等地に差し掛かった瞬間のことだった。
俺の記憶では、昨日まで更地(ガレキの山)だったはずの場所に、見覚えのないピカピカに内装された真新しい突貫工事の【新店舗】が堂々と開店しているのを目撃した。
「あらマモル様♡ お待ちしておりましたわ♡ ぜひ、ミーアの新しいお店に寄っていってくださいまし♡」
ピカピカのトビラの前で、これ以上ないほど胡散臭い満面のビジネススマイル(猫かぶり)を浮かべてお上品な丁寧語口調で挨拶をしてきたのは、ミーアちゃんだった!
俺が「え、もうお店オープンさせたの!?」と目を丸くしながら中に一歩足を踏み入れ、何気なくウッド調の綺麗な陳列棚オブジェクトを覗き込んだその瞬間、俺はフリーズした。
(うわあああァァァーーーッ!!! 店内の陳列棚の商品、昨日俺の全身のウロコを逆立たせた、あの茶色く丁寧に燻製された巨大なジャイアントミルワームとか、ハチミツの中に幼虫がゴロゴロ漬け込まれた瓶詰めとか、ムカデの塩辛とか、人間の常識を完全パージした不衛生な【ゲテモノ系保存食】しか並んでねぇじゃねぇかァァァ!!!
ミーアちゃんは、これ以上ないほど華奢で可愛い緑髪の猫耳をヘナヘナとヘコませながら、新規開店したばかりのカウンターの奥で不思議そうな顔をして呟いた。
「おかしいですわね、マモル様……。せっかく一晩で突貫オープンさせましたのに、お客様があまり中に入ってきてくれませんの。何故かにゃあァァァ……?」
「い、いやぁ……あはは、中にいるお客さんを見るとさ……(※顔面完全に白目)」
俺が引きつった笑顔のまま店内を見渡すと、そこに群がって「フシュゥゥ♡美味そうっす!♡」と目をギラギラ輝かせている客たちは、全員が一律3時間の擬態リミットの縛りの中で人間の姿に変身した、お買い物大好きなトカゲ一族だけだった。
「だ、大丈夫、ミーアちゃん……っ!きっとすぐ噂が流れて、大人気がでるよ……っ!!(※滝のような冷や汗の大嘘正論)」
「そうですわよねマモル様! ミーアの故郷(獣人の国)では、この多足昆虫系モンスターは売り切れ御免の大人気間違いなしの極上ラインナップですもの♡」
(よし――俺、これから先のスローライフの旅を進める上で、ミーアちゃんの国(獣人の里)には絶対に死んでも1ミリも近寄らないぞと魂の底からガチ確定ロックで誓った。
ミーアちゃんは俺の右腕にギュッと密着すると、「ミーアはこれからいつでもこのお店のカウンターにいますから、マモル様、またベッドの上で素晴らしい漆黒の脱皮ウロコがポロポロと取れましたら、いつでも何枚でもここに持ってきてくださいましね♡」と、完璧なお上品お姉様の丁寧語のまま強欲マネー瞳をバキバキに輝かせた。
俺は、人間の村のど真ん中に、誰にも怪しまれずに『自分のウロコを1枚90万ゴールドで安全に換金できる最強の隠密拠点』が完成したことに、これ以上ないほど上機嫌に大歓喜したのだった。
「よし、ウロコ裏ルートも大勝利したし、できたての新しいドアの待つ大集落の我が家へ帰って、夜まで昼寝をキメるぞォォォ!!!♡」
俺がルンルン気分の最高にご機嫌な笑顔ステップのままトカゲ村へと帰ろうと、村の出入り口の境界線である薄暗い森の中へ入った、まさにその瞬間のことだった。
ドゴォォォォォォンッ!!!
ドカカカカカカカカッッッ!!!
「ひ、ひぃぃぃーーーッ!!! 助けてぇぇぇマモル様ァァァ!!!(アリアの悲鳴)」
「アハハハハ!!! 良いねぇアリア!! その新調ローブ、私の漆黒連撃の衝撃を地味にカチカチに相殺してやがるじゃないのォォォ!!!(リザの笑い声)」
森の奥の木々を更地大破にするレベルの、凄まじい国家壊滅級の魔力大爆発音と地響きが、俺の網膜と鼓膜をバチバチに直撃した。
(……あ、あかん。新装備を手に入れて『リザさんにだって勝てる気がするよ!♡』って調子に乗って拉致されていったアリアちゃんが、案の定サンドバッグにされて爆心地のゴミにされかけてんじゃねぇか!!!
――よし、大賢者アリアちゃんの骨(包帯の燃え殻)くらいは、後で一族の伝統に則って丁寧に拾って我が家のガレキの山に埋めてやるかな……)
俺が不憫な敗走お通夜お葬式モードを脳内にロックしながら音のする大爆発の中心へと恐る恐る近づいてみると――そこでは、俺の想像を上書きする驚異のバトルが開催されていた。
「これでも喰らえバカァァァッ!!! ボクの新調した漆黒の魔導杖の最大出力魔法じゃァァァーーーッ!!!涙(※ボロボロの大号泣の血涙を流しながら、新ローブのチート魔力でリザさんの暗黒連撃を完璧に防御して大賢者としてガチで善戦しているアリア)
「おぉぉっ!? 防いだねぇアリアァァァ!!! 最高に試運転し甲斐があって私も大興奮だよォォォ!!! アハハハハ!!!(※大爆笑しながらさらに拳の速度をインフレさせる戦闘狂おばあちゃん)」
アリアちゃんは泣き叫びながらも、黒ウロコ3点セットのチートスペックを全開大点火させて、あの隣国最強の還暦おばあちゃんを相手に驚異的な粘りでガチの大善戦をキメていたのである!だが、森の草むらの陰から人間の姿のまま冷や汗を流して覗き込んでいた俺の姿をアリアちゃんが網膜にキャッチした。
「た、た、助けてくださいマモル様ぁぁぁ!!! 善戦してるけど魔力が空っぽになって、本当に今から物理的に殺されるぅぅぅ!!!(※最大出力の恐怖で俺のズボンに抱きついてくるアリア)」
「おっと、魔王の坊やも見学に来たことだし、私も新調ローブの性能に大満足したからさ、今日のところはこの辺で試運転はお終いにするかねぇ。んじゃまたねー、アハハ!」
リザさんはフシュゥゥと暗殺拳の構えを解くと、これ以上ないほど爽快な笑顔のまま、森の奥の闇へとマッハの速度で退散していってしまったのだった。
「…………(※恐怖と、一晩中カンカンキンキン寝ずに装備を加工していた過労と、リザさんとの試運転により、俺の足元で白目を剥いて完全に気絶するアリア)
俺はトカゲ村の境界線の森のど真ん中で全霊で気絶したミイラ姿の大賢者を前に、(この満身創痍の共犯者をこのまま不衛生な森の中に放置しておくわけにもいかねぇからな……トホホ)と、世界最強の王としてのチート腕力を使ってアリアちゃんの軽い身体をひょいと両手で抱きかかえるなり、そのまま大集落のトカゲ村の治療院のベッドの上へと優しく搬送してあげたのだった。
そして――。
朝から『重婚全裸繰り上げ天丼大騒ぎ』で5頭を大穴から廊下のガレキへブン投げまくり、お昼は持ち帰り容器のないカフェのテラス席でパスタ2皿のフードファイトをキメ、森の奥では新装備ミイラの過労死タイマン試運転に巻き込まれるという、怒涛のタイムラインを乗り越えた俺は、ついに我が家の自室へと帰ってきた。
トビラの前へと立つと、そこには大工のトカゲたちが朝一番に直してくれた、傷一つないピカピカできたて新品トビラが、そこにカチッとロックされていた。
俺は人間の姿のまま、その直りたてのトビラを「ついに……ついに毎朝服を脱ぎ捨てて『交尾サバト残業ですわ♡』って大穴から不法侵入してくるヤンデレ怪獣どもを完全防御できる、俺のプライベートの防衛線が完全大復活したんだなッ!!!」と愛おしそうにバチッと両手で開けて部屋へと入ると、ベッドへダイブし、毛布に頭まで深く深くくるまって、夜の闇が訪れるその瞬間まで、至高の幸せに満ちた特大の昼寝を満喫しに、心地よい闇の彼方へと二度寝をきめこむのだった。
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(次回更新:明日18時40分!)




