第79話 キアラちゃんの神話級特注装備発注と、大賢者アリアのパワーバランス崩壊ホラー
キアラちゃんの凄まじいヤンデレ覇気と絶叫の悲鳴が街道の向こうへ消え去り、嵐の後のようにしんと静まり返ったお昼時のカフェのテラス席。
「――あ、そうだ。アリアちゃん」
俺はキアラちゃんが去って安全が確保された空間の中で、ズボンのポケットの中に、あらかじめ大集落のベッドの上でポロポロと剥がれ落ちていた【国宝級の漆黒の脱皮ウロコ】を忍ばせてあったことを思い出し、それを取り出した。
ジャラララッ!!!と、上品な魔導の金属音のような音を立ててテーブルの上に差し出されたのは、光沢を放つ見事な漆黒の黒ウロコが、たっぷり【5枚】だった。
「これ、昨日の夜、カフェで命がけで目隠しステルス魔法をフル展開して俺をサポートしてくれたお礼ね!24時間いつでも人間の姿でいられるようになったのはアリアちゃんのおかげだからさ。本当にありがとう!」
ピキィィィィィィン……!!!
俺がこれ以上ないほどホワイトな常識人の笑顔でお礼をドロップした瞬間、隣に座る包帯ぐるぐる巻きのミイラ姿のアリアちゃん、そして巨大行商リュックを背負ったままの猫耳商人ミーアちゃんの眼球が、同時に「網膜の裏側から物理的に飛び出る」かと思うほどの特大のフリーズをキメた。
「こ、こ、こ、こんなに貴重な、一国家の国家予算を1撃で丸ごとへし折るレベルの神話級魔導素材(黒の王のウロコ)を、一気に5枚(※日本円で10億円分くらい)も、ボクみたいな満身創痍のミイラが貰っちゃって本当にいいのォォォ!?!?(※アリアちゃんの脳内大パニック)」
重度の魔道具マニアであり、魔道具の最高級チート素材になるリザードマンのウロコが大好物で、すでにエルシエラ(白)や俺のウロコを数枚ベッドの横にコレクションして密室研究していたアリアちゃんからすれば、目の前に5枚のウロコをジャラジャラ提示された衝撃は、大賢者としての理性を粉微塵に大爆破させるのに十分すぎた。
「ああ、いいのいいの。気にしないで! 俺、最近ちょうど脱皮の時期らしくて、部屋のベッドの上とかでよくポロポロ取れるからさ(※軽いノリ)」
「ま、毎日ベッドの上でポロポロ取れる!?!?(※アリア ✕ ミーアの瞳がマネーと強欲のハイライトでギラリと大点火)」
アリアちゃんは包帯の隙間から目をバキバキに血走らせ、ゴクリと生唾を飲み込んで俺に詰め寄ってきた。
「マ、マモル様、魔道具に興味はありませんか……っ!? この黒の王のウロコを使えば、世界のゲームバランスを物理的に崩壊させる特級呪物魔道具が作りたい放題ですよ……っ!!」
「あ、ずるいにゃ!!! マモル様のウロコ(2億円のフケ)は、ミーアが一生の連立方程式として永久独占密輸契約を交わすってさっきから決まってるにゃ旦那様ァァァ!!!♡(※素のニャが大バグ噴出で割り込んでくるミーア)」
「魔道具か……アリアちゃん、キアラちゃんへのサプライズプレゼントに、俺のこのウロコを使った魔道具とか作れるかな?いつも夜遅くまで警備をがんばってくれてるし、俺からの愛のサプライズにちょうど良いかもと思ってさ!」
俺がこれ以上ないほど誠実な営業スマイルでキアラちゃんへのプレゼント(※ウロコの再利用)について興味を持つと、隣にいたアリアちゃんの満身創痍姿が、ガタガタガタガタとリアルにマッハの速度で痙攣しだした。
(あ、あかん……ッ!!! ただでさえ始まった瞬間に全てを更地消毒(即死)させる、あのお堅い脳内大違いヤンデレ令嬢キアラに……世界最強の王の黒ウロコを使った国宝級神話チート魔導装備なんか渡して大点火させたら、本当にこの世界のパワーバランスがバグ大破して、手がつけられなくなってボクや防衛隊もろとも物理的に更地(即死終了)にされるぅぅぅ!!!)
「で、で、できるけど……あの……その……本当にあの暴走堅物令嬢にそんな最終兵器を渡すおつもりですか、マモル様……っ!?(※ガチの恐怖で白目を剥くアリア)」
「え、できるの!? あ、じゃあよろしくね! 杖とか鎧とか、キアラちゃんに似合いそうな頑丈なやつでいいからさ! アハハ!」
「ひ、ひぃぃぃ!!!(キアラにそんな国宝級の神話装備を持たせたら、人間の100倍強いボクの大魔導魔法でも一生抑えきれなくなるじゃねぇん!!!あかん、キアラが最強の破壊兵器を手に入れてボクを天井のゴミにする前に、ボクも今もらったこの5枚の黒ウロコを使って、対キアラ防衛戦用の『ガチ大賢者特注魔導装備』を速攻で新調しなきゃ本当に物理的に過労死するぅぅぅ!!!涙)」
アリアちゃんは包帯の奥の眼球のハイライトを完全消滅させると、恐怖のバフを全身に燃え上がらせてガタバシッとイスから立ち上がった。
「で、では!! ボク、世界平和(※ボクの命の防衛線)のために、今すぐ部屋に引きこもって神速でその特注装備の作成に取り掛かりますので、今日はこれで失礼させていただきますーーーッ!!!」
アリアちゃんはゾンビのような凄まじい執念の千鳥足で、松葉杖代わりに杖を突きながら、街道の闇へ向かってマッハの速度で直帰退場していってしまったのだった。
「…………(シ――ン……)」
ミイラ大賢者アリアちゃんが過労死寸前のパニックで去っていき、カフェのテラス席の陥没したクレーターの真ん中には、俺と、巨大行商リュックを背負ったままの猫耳美少女の2人だけがポツンと取り残された。
「――ふふっ♡ 旦那様、お堅い令嬢の邪魔者も、包帯のミイラ師匠も、これで綺麗に全員退場いたしましたわね♡」
ミーアちゃんは、キアラちゃんやアリアちゃんが完全に去っていった事実を網膜に捉えると、衣服(2.5mリュック)の重力を風魔法で丁寧にセーブしながら、普段の品行方正なお上品お姉様としての【丁寧語口調(猫かぶり)】を完璧にカチッとロックし直し、ガチのウロコ契約を独占するために、熱いマネーの瞳をバキバキに輝かせて俺のゼロ距離まで密着してきた。
「それではマモル様♡ やっと2人きりになれましたし……ミーアと旦那様の、これからの【ウロコの永久独占密輸契約商談】を、濃厚に始めましょうか(笑)♡」
(キアラちゃんもおばあちゃん(リザ)もいなくなって防衛線は大勝利したと思ったら、今度はこの有能すぎる巨大リュック猫耳にカフェの密室テラス席で2人きりで外貨密輸のハッキング商談を迫られてんじゃねぇかバカヤローッ!!!)
俺のお買い物隠密ライフは、実質24時間擬態の無敵の姿を手に入れた最初の昼下がり、強欲猫耳商人ミーアちゃんによる『脱皮ウロコ強欲マネーロンダリング編・本当の商談本番』という、もはや誰もコントロールできない新ステージの荒波へと、容赦なく突き進んでいくのだった。
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(次回更新:明日18時40分!)




