第77話 黒の王の救難信号と、強欲猫耳のスケイルラッシュ
朝一番の、トカゲ娘たちによる『最高級ゲテモノ間接キス(口移し)デスゲーム』による大進撃から命からがら森の奥へと敗走し、お昼前になってデート前に自室で服を着替えようと大集落の入り口へとトボトボ戻ってきた俺(人間姿)。
(そろそろガルダたちのヤンデレ繁殖ボルテージも、一族の長老室でオヤジの往復ビンタを喰らって収まった頃合いだろ……トホホ)
だが、広場へと差し掛かった瞬間、俺の脳細胞はまたしても大混乱の重力波を網膜に浴びた。
「擬態が解けてしまったが、まだミルワームの燻製を何も買えてないんじゃ!」「こら! トカゲ姿のまま露店に詰め寄るな! 商人さんが怖がっているだろ! 」「 何か売ってくれ!」「擬態が解けたやつは大人しく自室へ帰れ!」「頼む! もう何でもいい! キラービーの幼虫でも何でも買ったらすぐ帰るからァァァ!!!」
広場にはまだ露店布を広げた新キャラ商人ミーアちゃんの姿があったが、その周囲は【人間の姿のリザードマンと、行列が長引きすぎて3時間の制限時間が切れて2.5mの巨大怪獣に戻ってしまったトカゲどもがごちゃ混ぜになって押し寄せる、防衛線大崩壊の大混乱】に陥っていたのである。
擬態の解けた長老たちも慌てて収拾をつけようとするが、年に一度のゲテモノ物産展に暴走したトカゲどもの熱量には多勢に無勢、完全に収拾がつかなくなっていた。
そんな大怪獣のすれ違い大進撃の真ん中で、猫耳商人ミーアちゃんは遠目には「これは100ゴールドにゃ♡」と平然と猫かぶり営業を続けているように見えた。
だが、ミーアちゃんが人間の姿の俺を見つけると、翡翠色の猫耳をピキィィィンと直撃させ、必死の顔で大声を張り上げてきた。
「マモル様ーーーっ!!! ちょっと、ちょっとこっちに来てほしいにゃーーーっ!!! お願いにゃーーーっ!!!」
(ひえっ!! またあの巨大ムカデの塩辛とかいう100%ガチのゲテモノを強引にお買い物売りつけされてはたまらんわ!!!)
俺は無視して自室へダッシュしようとしたが、何度も「お願いにゃ!涙」と叫ばれるので、恐る恐るミーアちゃんの露店の中心へと近づいていった。
――と、間近で見た瞬間、俺はハッと目を見開いた。
遠目には平然と商売しているように見えたミーアちゃんの顔が、【恐怖のあまり完全に真っ青に引きつり、猫耳も尻尾もガタガタとリアルに震えている】ことに気づいたのだ。
「……マモル様、お助けしてほしいにゃ……っ」
(そうだよな!!! キアラちゃんは別格のエリート魔導士だからトカゲ姿に慣れてるけど、普通の人間や獣人の女の子からすれば、2.5m級のゴツゴツした不気味な巨大トカゲの化け物の集団に四方八方から大音量で囲まれて、平気でいられるわけがねぇだろバカヤローッ!!!ミーアちゃんよく今まで猫かぶり笑顔を維持して耐えたな偉いぞ!!!)
俺はミーアちゃんの手元へと歩み寄ると、これ以上ないほど静かで頼もしい声で告げた。
「――ミーアちゃん。ちょっと目を閉じて、耳を塞いでいて」
ミーアちゃんが涙目でコクンと頷き、両手で猫耳をギュッと塞いで目を閉じたの確認した、まさにその数秒の瞬間だった。
俺は世界最強の王としてのチート魔力を全開に大点火させ、大集落の青空へ向けて、太陽の光すら消し炭にするほどの【特大の漆黒の王のオーラ(最大出力の威圧覇気)】をドゴォォォォォォンッ!!!と全方位へ放出した!!!
空間全体が激しく小刻みに震え、広場を埋め尽くしていたトカゲどもの大騒ぎが、一瞬にして凍りついたように(シ――ン……)と静まり返った。
「擬態が解けた者、および魔力ゲージが切れそうな者は、今すぐお買い物をやめて大人しく自分の家へ帰宅しろッ!!!」
漆黒の王としての一喝を脳細胞に浴びたリザードマンたちは、蜘蛛の子を散らすように大慌てで「ひ、ひぃぃぃマモル様がガチでお怒りじゃァァァ!!!」と、一瞬でそれぞれの我が家へと爆速で逃げ帰っていったのだった。
再び静まり返った広場。ミーアちゃんは恐る恐る目をあけると、あれだけいた怪獣たちが更地のように消え去っている光景に、ホッと胸を撫で下ろした。
「助かったにゃ……。でもマモル様、お助けの覇気がちょっとやりすぎですニャ。まだ特産品はたっぷり残ってますし、ミーアは一族の素晴らしいウロコもまだ全然買い足りないですニャ……(※お財布を握りしめる強欲さ)」
あまりにもミーアちゃんが可哀想だったから力加減を間違えちゃったな……と、俺はこれ以上ないほどいたたまれない気持ちになり、自分の人間のズボンのポケットへと手を突っ込んだ。
そこには、昨夜のカフェのテラス席で、命がけの目隠しステルスガードを展開して俺の24時間変身ハッキングを涙目でアシストしてくれたアリアちゃんへ、「泥縄ガードのお礼のプレゼントね!♡」と渡すために、あらかじめ大集落のベッドの上でポロポロと剥がれ落ちていた【国宝級の漆黒の脱皮ウロコ(フケ素材)】を数枚、極秘で忍ばせてあった。
「あ、じゃあさ。アリアちゃんにあげる予定だったんだけど……お騒がせしたお詫びに、これ、ミーアちゃんにあげるよ」
俺がポケットからその剥がれ落ちた漆黒のウロコを何気なく差し出した、まさにその瞬間だった。
ミーアちゃんの瞳の色が、ガチの「一獲千金のマネーロンダリングハイライト」へと一瞬にして大上書きアップデートされた。
「な、何ですかにゃこれは……!? ミーアはただの旅の商人ですけど、魔導伝導率がこれ一枚で【国宝・神話級魔導素材】だってことくらい一瞬で看破できるにゃ……っ!!!(※強欲な大興奮でのガクブル顔)」
マモル(元日本人高校生)からすれば、ただの痒いフケや日焼けの皮が剥がれたようなゴミ感覚なのだが、人間の1,000倍強い黒の王の脱皮素材は、この世界の人間の市場へ密輸すれば1枚で100万ゴールド(日本円で2億円くらい)は下らない超特級のチートお宝素材だったのだ。
「ああ、それなら全然気にしないで。俺、最近ちょうど脱皮の時期らしくて、部屋のベッドの上とかでよくポロポロ取れるからさ(※軽いノリ)」
「ま、毎日ベッドの上でポロポロ取れる!?!?(※特大の衝撃)旦那様!! これはミーアの商売の歴史を1,200%ひっくり返す、夢の『ウロコのゴールドラッシュ』……正真正銘の【スケイルラッシュニャァァァーーーッ!!!♡】」
アリアちゃんへのお礼のはずだった脱皮ウロコの山を前に、ミーアちゃんが完全に猫かぶりをかなぐり捨てて強欲マネーの瞳をバキバキに大点火させて歓喜の雄叫びを上げるなか、俺の実質24時間擬態のタイムラインは、この猫耳商人を相棒にした、一攫千金で心臓に悪い『国宝級ウロコ密輸ゴールドラッシュデスゲーム』の幕開けに向けて容赦なく突き進んでいくのだった。
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(次回更新:明日18時40分!)




