第76話 リザードマンの物産展と、恐怖のゲテモノ口移し
人間の姿のままキスしても世界のシステムエラーが再ロックされない完全無敵の仕様と、実質『24時間ずっと人間の姿でいられる』という擬態魔法の過剰上書きアップデートをハッキングで手に入れた、あの怒涛の1日。
俺(大トカゲ姿)は、夜はいつも通りトカゲ村の自分のベッドで大の字になって不貞寝(有給休暇)を満喫し、朝の目覚めを迎えていた。
「フシュゥゥ……?(なんだ、朝から広場がやけに騒がしいな……?)」
トビラの大穴から外を覗くと、いつもはお留守番(訓練)をしているはずの一族のトカゲどもが、人間の姿にポップアップ変身して広場にギチギチの満員電車並みに群がっていた。
俺も大急ぎで人間の姿に変身し、何事かとその人だかりの中心へと近づいてみると――。
バリバリの異国風の露店布を広げ、満面の胡散臭い営業スマイル(猫かぶり)を浮かべている、翡翠のような美しい緑髪に、ぴこぴこと愛らしい猫耳を揺らした【猫の女獣人商人】がそこに座っていた。
(う、うわあああァァァーーーッ!!! 異世界に転生して以来、トカゲ娘やエルフばかり見てきたけど、本物の『猫耳のケモミミ美少女ヒロイン(獣人)』を肉眼で見たの、人生で初めてだぞォォォ!!!最高に可愛いじゃねぇか!!!)
俺が初めて見る獣人の姿に国宝級の感動を覚えていると、猫耳の女商人は即座に俺の姿を網膜に捉え、これ以上ないほどお上品にペコリと頭を下げて自己紹介をしてきた。
「あら、あなたがこの大集落の偉大なるリザードマンの王様(マモル様)ですね? ミーアは、ミーア・カブリアと申します。遠い国から、一族の皆様のために特別な最高級食材(商品)をお持ちいたしました。おもてなしの等価交換として、マモル様の素晴らしい漆黒の脱皮ウロコなども高値で購入させていただきたいですわ♡(※完璧な猫かぶり笑顔)」
「こ、これは丁寧にご挨拶どうも……(※引きつったイケメン笑顔)」
ミーア・カブリアと名乗った猫耳商人の露店には、お買い物好きなリザードマンたちが目をギラギランに輝かせて群がっていた。
すると、火の部族の脳筋ギャル・ガルダが、お腹をペコペコに鳴らしながら興奮した口調でミーアちゃんに食いついた。
「ミーアちゃん!! このめっちゃ美味そうで脂が乗ってそうな最高のご馳走はいくらっすか!?」
「これはですね、とっても貴重な特産品ですが、マモル様への免じて特別に20ゴールドでいいですよ♡」
ガルダが一体どんな高級スイーツを買おうとしているのかと、俺がのんきに後ろから覗き込んだ、まさにその数秒の瞬間だった。
「よっしゃ、買ったっす!!!(※大歓喜)」
ガルダが嬉しそうに両手で掲げたのは――長さ20センチメートルは余裕である、丸々と太って茶色く丁寧に燻製された、ガチの【巨大なジャイアントミルワーム(※イモムシ)の燻製】だった。
ブォォォンッ!!!(※俺の人間姿の全身のウロコ(鳥肌)が一瞬にして最大出力で逆立つエラー音)
「ガ、ガルダ、それ……どうするの……?(※顔面蒼白でガタガタ震えるツッコミ)」
「え? どうするって、そりゃマモル、これだけの最高級いくら丼レベルの栄養(素材)っすよ!? 朝ご飯にムシャリと食べるに決まってるっすよォォォ!!!♡」
ガルダは美少女姿のまま、その巨大なイモムシの燻製を「バキッ、ムシャ、モグモグ……♡」と、これ以上ないほど極上のクレープでも食べるかのような恍惚の表情で美味そうに実食しだしたのである。
(うわあああァァァーーーッ!!! 美少女の姿のままガチの巨大イモムシを笑顔で咀嚼してんじゃねぇよバカヤローッ!!!(※精神的即死ダメージのドン引き))
「フン、ガルダは相変わらず子供ね! アタシはこっちの最高級の特産品を貰うわッ!」
風のツンデレツインテ・ゼフィラが、フンと鼻を鳴らして50ゴールドを叩きつけ、ハチミツの中に【親指サイズの凶悪なキラービーの幼虫】がゴロゴロと無数に漬け込まれた、ホラー映画のバイオハザードばりの瓶詰めを購入した。
「あら、アースワーム(※巨大イモムシ)の天日干し特選ジャーキーじゃない。これ、一族の仕様で作るの難しいのよねぇ。ミーアちゃん、これはおいくら?」
土のバブみ豊満お姉さん・デメトまでが、日本の北海道物産展で高級鮭とばでも見つけたかのような達観した大人の笑顔でイモムシの干物を査定しだす。
「スワンプクラーケン(※泥沼のバケモノ烏賊)の、干しスルメ……ください……」
水の人魚ヤンデレ・ネレイダちゃんまでが、気だるげな低体温ボイスでイカの化け物の足を毟り取り、露店は文字通り天下を獲るレベルの大大盛況(満員御礼)を極めていたのだった。
マモル(元日本人)からすれば、あんな100%正真正銘のゲテモノの山に貯金を散財する狂った気持ちは1ミリも理解できなかったが、彼女たちリザードマンにとっては、これが年に一度の「最高のご褒美物産展」なのだろう。
「マモル様もお一つ、こちらの肉厚なムカデの塩辛いかがですかニャ?♡」
「い、いや、俺は遠慮をしておくよ……(※顔面滝の汗)」
ミーアちゃんの猫かぶり営業を全力の引きつった笑顔で拒絶していると、ミルワームをごくごく潤いながら完食しかけていたガルダが、ルビーの瞳をトロンと熱くさせて俺の正面にじりじりと距離を詰めてきた。
「そんなこと言わずに、マモルもコレ最後の一口どうっすか!? ガチで脂が乗ってて美味いっすよ!? ――あ、でも、これって同じイモムシを絡み合うから、実質マモルとの【間接キス】になるっすねぇ……♡」
ピキィィィィィィン……!!!
その「間接キス」という禁断のハッキングワードが広場に響き渡った瞬間、横にいた他の3頭のトカゲ娘たちの瞳から、一瞬にして光が完全消滅(ヤンデレ覇気大点火)した。
「ちょっとガルダ、抜け駆けはアタシが許さないわッ!!! このキラービーの幼虫、ハチミツが濃厚でとっても甘いわよッ!! さあ、アタシの甘い愛の証明を今すぐ口の中にインしなさいよッッッ!!!♡(※虫の瓶を差し出すゼフィラ)」
「ちょっとゼフィラ!! アタシのイモムシが先っすよ!!!♡(※ガルダ)」
「やっぱり育ち盛りの男の子は、アースワームの特大ジャーキーで精力をチャージしなきゃダメよねぇ……?♡ さあ、お姉ちゃんが優しく口を開けさせてあげましょうねぇ(※デメト)」
「マモル……。これ……アタシが口の中で、柔らかくしといた……。さあ、邪魔者は消えなさい……。今すぐアタシのこの水分(※クラーケンの口移しスルメ)で、濃厚に溺れましょうね……♡」
(ネレイダァァァ!!! お前美少女姿のまま、口の中で巨大イカのバケモノの足をグミみたいにクチャクチャ柔らかくしたやつを『はい、口移し♡(※最恐のヤンデレ等価交換)』で、真っ正面から不意打しようとしてんじゃねぇよバカヤローッ!!!(※リアルな生命の危機))
ネレイダちゃんのあまりにも低体温で一線を越えすぎた口移し(ホラー)を目撃した瞬間、他の3頭のヤンデレ繁殖ボルテージが臨界点を完全突破!
それぞれが自分のゲテモノをもう一口食べると、瞳を完全に消し炭にさせながら、「「「「マモル、アタシ(ウチ)の愛の間接キスを受け取りなさいーーーッ!!!♡」」」」と、四方八方から完全密室監禁のノリで俺に向かって全霊で飛びかかってきたのである!!!
「人間の姿のまま美少女たちに『イモムシやイカの口移しおもてなし』を連続で喰らったら、オス(チェリー)の精神構造がショック死して物語が強制終了するわァァァ!!!)」
俺は本日1回目となる、バッテリー残量が10時間以上残っているはずの貴重な人間の青年の手足を泥縄にバタつかせると、
ゲラゲラと猫かぶり笑顔で帳簿をつけている商人ミーアちゃんの横をマッハの速度で突き抜け、朝一番からリザードマン一族の居住区(爆心地)から不気味な森の奥へと向けて、涙目を流しながら全力の隠密ダッシュで悲鳴を上げて大敗走をキメるのだった。
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(次回更新:明日18時40分!)




