第72話 産卵ローテの有給休暇と、夜間村のモンスタースタンピード大誤解
「えぇぇ〜〜〜ッ!?!? ママジっすかァァァーーーッ!?!? ウチの初めての産卵おもてなし(既成事実)の権利が、秒速で消し炭にされたっすぅゥゥ!!! 嘘っすよそんなのぉぉぉ!!!(※トカゲ姿のまま涙目を流してガチ絶望するガルダ)」
隣国最強の戦闘狂リザさんとのタイマンをものの数分で終え、俺(大トカゲ姿)が素材(黒髪ロングの髪の毛1本)のハッキング実食を完遂して大集落の奥の森へ戻ってきた、今日の昼下がり。
エルシエラが裏で勝手に決めていた『産卵予約ローテーション(完全予約制)』の取り決めに則って「今日の夜はウチの産卵残業の番っすよ!♡」と我が物顔で不法侵入してきた火のギャルトカゲ・ガルダちゃんに対し、俺はココア様のシステムロックが解除されたドヤ顔の勝利宣言をブッ放した。
俺は涙目でへたり込んでいるガルダを置き去りにすると、大集落の広場をフンフンフ〜ンと短い足で軽快にスキップをキメながら我が家へと直帰し、今日最後となる貴重な『2回目』の擬態魔法の魔力ゲージがチャージされるのをベッドの上で大人しく待ったのだった。
そして、夜の帳がすっかり下りきった、夜のディナータイム。
「よし……! 魔力ストックもスケジュール管理も完璧だぜ!!」
俺は人間の少年の姿へとポップアップ再変身をキメると、髪の毛1本でキアラちゃんとのキス我慢システムを綺麗に初期化した無敵の状態で、夜デートの約束の場所――人間の村のいつものカフェへと、全力の隠密ダッシュで街道を爆走したのだった。
(昨夜の『キスに溺れましょうよ♡』の連続カウントリセットの絶望を、今夜こそ完璧にイケメンな大嘘でガードしきってやるわァァァッ!!!)
――だが。
夜の村に到着した瞬間、俺の爽やかなイケメン笑顔は、網膜に飛び込んできた異様な光景によって一瞬にしてガチガチに完全氷結させられた。
いつもの馴染みのカフェのテラス席どころか、村全体の照明が消され、松明や魔導ランプの不気味な光が揺れるなかで、防衛隊の兵士たちがガチガチの重装鎧を着込んで殺気立っていた。村の入り口には、丸太や鉄条網を組み合わせた巨大なバリケードが、夜の闇の中で物々しく完全封鎖をキメていたのである。
「あ、マモルさん! 来ては駄目ですわ、今すぐ安全な避難所へ避難してくださいまし!!」
バリケードの最前線で、防衛隊の特注杖をシャキーン!と不穏な重力波を放ちながら逆手に構えた、凛々しくて格好いいトップエリート分隊長キアラちゃんが、部下を率いて鋭い眼光を夜の森へと向けていた。
「キ、キアラちゃん、一体何なんだよこの夜の物々しい非常警戒態勢は……!?」
「マモルさん、聞いてくださいまし。今日の昼間、森の奥で【空間が粉々に粉砕され、一国家の精鋭騎士団を焦土に変える最大出力の暗黒破壊魔法が連続で大爆発した】との特級危険魔力ログが、防衛隊のレーダーに直撃で観測されましたの!!これは間違いなく、歴史的な『モンスタースタンピード(魔物の大進撃)』の最悪の前兆に違いありませんわァァァーーーッ!!! 今から私の分隊を率いて、夜の森の爆心地へガチの緊急夜間調査(特攻)に出陣しますわッ!!」
(モンスタースタンピードの前兆じゃなくて、俺が今日の昼間に、中身が還暦を過ぎた隣国の世界最強おばあちゃん戦闘狂と、森の奥でただの髪の毛1本をペロッと実食剥ぎ取りするために1,000倍パワーでおもてなしスパーリングしてただけなんだよキアラちゃん!!!ウロコを焦がされて『痛ってぇぇ!』って涙目で絶叫しながら大木をへし折ってただけなんだよォォォオオオ!!!)
俺がそのあまりにもキアラちゃんらしいピュアな大激怒(大誤解)を浴び、顔面から滝のような冷や汗を流して愕然とお通夜状態になっている、そのコ数秒後だった。
「……待ってよキアラ。ボクも、その夜間調査に行くよ……っ。国の一大事に、いつまでも治療院のベッドでのんきに寝ていられないからね……っ!」
「ア、アリアちゃん!?」
バリケードの影から、杖を松葉杖代わりにしてガタガタと震えながら歩いて現れたのは、お昼にゴルゴリザさんのバックブローを顔面に浴びて病院送りになっていたはずの、頭からつま先まで包帯をグルグル巻きにされた【満身創痍のミイラ姿の大魔導師アリアちゃん】だった!!
アリアちゃんは包帯の隙間からルビーの瞳をバキバキに血走らせ、俺(人間姿)へ向けて(マモル様、ボク、昨日は2連続でお使いに失敗してピクルスのミンチにされる恐怖で眠れなかったから、今夜は命がけで調査(泥縄フォロー)をがんばります!)というガチの共犯者アイコンタクトを送りながら、キリッと大魔導師の格好良さを絞り出してきた。
「マモル様……っ! この人間の村の平和を守るために、どうか、あなたのその『黒の王』の圧倒的な武力の力を、ボクたち防衛隊の夜間調査に貸してください……っ!!!(※涙目のガチ懇願)」
キアラちゃんもルビーの瞳のガチ恋覇気を最大出力で大点火させると、俺の顔をゼロ距離まで近づけてきた。
「マモルさん、師匠の言う通りですわ! 私たちの愛する人間の村を魔物の更地にさせないため、今夜は私と一緒に、暗い夜の森の最前線で背中を預け合って愛の共同作業として戦ってくださいましーーーッ!!!♡」
(『ごめんあれ、俺が今日の昼間に、隣国の戦闘狂おばあちゃんと髪の毛を毟り取るために森の木々をマッハで大爆破してただけなんだ』なんて、こんなに殺気立ってるお堅い騎士たちのバリケードの前でガチでゲロえるわけねぇだろォォォオオオ!!!(※精神的即死ダメージ))
アリアちゃん、国の一大事じゃなくて俺たちの身内のやらかしお買い物ライフだし、お前がミイラ姿のまま涙目で真面目に頼み込んでくるから、キアラちゃんのヤンデレ覇気が最悪の方向に大爆発しちまったじゃねぇかバカヤローッ!!!
これじゃあ今夜、暗黒の夜の森の奥のガレキの現場(自分の犯罪現場)で大嘘の言い訳の限界を迎えて正体がトカゲの王だとバレるか、不可抗力で人間の青年の姿のまま戦場でキアラちゃんに不意打ちの『おやすみ誓いのキス』を強奪されてシステム永久再ロックを喰らうかの、逃げ場のないガチの即死デッドゲームのゴングが鳴り響くわァァァ!!!
俺のお買い物隠密スローライフは、カフェデートの約束が一瞬にして【包帯ぐるぐる巻きの師匠 ✕ 殺意ギガマックスの弟子】に挟み撃ちにされ、自分のやらかしたタイマン現場へと強制夜間出撃させられるという最悪の気まずさ(大お通夜)のなかで、もはや誰もコントロールできない超泥縄ループ日常サスペンスへと、容赦なく突き進んでいくのだった。
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(次回更新:本日18時40分!)




