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第69話 世界最強の握手と、2日連続の天井人間砲弾

昨夜のカフェのテラス席の出口でのキアラちゃんによる不意打ち溺愛キス強奪事件によって、せっかくハッキング初期化したはずの【トカゲ姿のままキスして人間に完全復活できる裏技】に、再び世界のシステムレベルで無慈悲な【再ロック】がガチガチにかかってしまった、今日の昼下がり。


人間の村のいつもの馴染みのカフェのテラス席に、本日『1回目』の擬態魔法(3時間枠)を発動して現れた俺(人間姿)は、せっかく回収した髪の毛を使いロックを解除したのを初日の夜に速攻でリセットされた絶望から、目の下に真っ黒なクマを作ってバキバキの死んだ魚の目でお通夜状態になっていた。


「師匠ぉぉぉ!!! お身体はもう大丈夫なのですかァァァーーーッ!!! 」


そんな俺の正面では、治療院から無事に退院して合流したばかりのアリアちゃん(包帯ぐるぐる巻きの満身創痍姿)を抱きしめて、キアラちゃんがピュアな心配で取り乱して大パニックを起こしていた。


「あ、あはは、もう大丈夫、大丈夫だからキアラ……(※ガタガタブルブル)」


キアラちゃんにハグされながら激しく痙攣しているアリアちゃんの脳内は、(ひ、ひぃぃぃ! ボク、マモル様の『黒髪を毟れ』という暗殺命令を、通算【2連続】で大失敗したんだよぉぉぉ!!!

次こそ失敗したら、ボク、本当に物理的にミンチ(搾りカス)にされてこの村ごと更地にされるぅぅぅ!!!)という、魔王への恐怖ので100%埋め尽くされていたのだった。


すると、俺が死んだ魚の目でスープを虚無のノリで口に運んでいる、まさにその直後のことだった。ガタバシッと、俺たちのすぐ真隣の空いているテーブルのイスに、一人の黒髪ロングの美少女が何食わぬ顔で腰掛けた。


「あ、店員さん、アイスコーヒーね! 氷多めでよろしく!(※昨日とまったく同じのんきな注文)」


俺とアリアちゃんの人間姿の脳細胞が、一瞬にしてガチガチの完全氷結をキメた。


(もう隣の国へ帰ったと思って絶望してたのに、神様仏様リザ・ウェカム様ァァァ!!! 奇跡のお買い物リベンジチャンス再来キターーーッ!!!

今度こそアイツの黒髪を毟り取って、システムを初期化してやるわァァァ!!!)


隣国最強の戦闘狂(中身還暦超えおばあちゃん)は、隣の席で包帯姿のまま固まっているアリアちゃんにのんきに気付くと、サバサバと片手を挙げた。「あれ? アリアじゃないか。いやぁ、昨日は後ろに立たれたから条件反射でパージしちゃってごめんねぇ」


アリアちゃんは(ひ、ひぃぃ! 暗殺ターゲットから直撃でお詫びれたぁぁ!)と白目を剥きながら「あ、あはは、あれはボクも間が悪かったからさ……」と泥縄のフォロー。


リザさんが「ちょっと冷たいお水貰ってくるねー」と席を立ち、キアラちゃんも「あ、私もお水を取ってきますわね」と2人が席を外した、まさにその数秒の瞬間だった。


俺はアリアちゃんの耳元へコソコソと顔を近づけた。

「アリアちゃん、第4回・泥縄隠密素材剥ぎ取り作戦会議だ(※イケメン顔のコソコソ声)」


「ひ、ひぃぃぃ……っ!!! マモル様、昨日もマッハの速度で天井まで殴り飛ばされて無理だったのに、あのおばあちゃんゴルゴから髪の毛を毟るなんて、もう絶対に無理だよぉぉぉ!!!(※大号泣)」


「大丈夫、今回は俺に完璧な『おもてなしハッキング超理論』がある! 奴が戻ってきたら、俺が【握手】を求めるフリをして、【リザさんの両手を我が漆黒の王としてのチート筋力でガッチリと正面からホールド(拘束)】してあげるから!俺が奴の両手を掴んだら、それが『突撃(素材剥ぎ取り)の合図』だよ、いいね!? 両手が塞がっていれば、あの戦闘狂のおばあちゃんでも自動カウンターは絶対にブッ放せないからさ! よろしくねっ!♡」


アリアちゃんは(それなら……両手が塞がっていれば、ボクが消し炭にされる確率は3%くらいに減るかも……っ!)と、涙目を流しながらブンブンと必死に首を縦に振って頷いた。


給水器から、リザさんとキアラちゃんがコップを持って席に戻ってきた。

俺はイスから立ち上がると、これ以上ないほど爽やかな営業スマイルを浮かべてリザさんの正面に立ちはだかり、右手を力強く差し出した。


「リザさん、お噂はかねがねお聞きしております! 私と同じ『黒』の属性の伝説の英雄であるリザ様にお会いできて、本当に光栄です! どうか、この出会いの記念にガッチリと握手してください!」


「おや、お嬢ちゃんの言っていた『マモルさん』かい。ああ、私と同じ黒の属性は珍しいねぇ。本当は今すぐここで命がけのタイマンを手合わせ願いたいところだが……まあ、握手くらいならいいよぉ」


ガシィィィッ!!!


俺はリザードマン一族の王としての最強の野生のチート筋力を密かに右手に1,200%上書きチャージし、油断しているリザさんの【両手】を真っ正面からガッチリとホールドした!

逃がさないように完璧に腕の動きをロックした俺は、包帯姿のアリアちゃんへ向けて、目をバキバキに血走らせて(今だァァァ!!!(※特大のアイコンタクト))の合図をブッ放した!


「世界平和のためにィィィ!!! ボクは今から黒い天災の髪の毛を毟り取る暗殺スパイになるんだよォォォオオオ!!!(※涙目でリザの背後へ音速で隠密ストーキング特攻)」


アリアちゃんがリザさんの後頭部に突撃した、まさにそのコンマ数秒の瞬間。

両手を俺にガッチリ掴まれていたリザさんの漆黒の瞳が、ピキィィィン!と完全な戦闘狂ハイライト消滅をキメた。


「――おっと、だから後ろ(死角)に立たれると身体が勝手に、ねぇ?」


両手を完全に固定された状態のまま、リザさんは軸足を一瞬で大バグ加速させ、空いた【下半身】の筋力を全開にして、背後へ神速の【自動カウンター・空中反転ローリングソバット(足技カウンター)】をノー猶予でブッ放したのである!!!


ドガァァァァァォンッ!!!!!


「ひえええええええ!?!?(※2日連続の天井人間砲弾絶叫)」


アリアちゃんはリザさんの強烈な空中回し蹴りを顔面に直撃で浴び、なんと、昨日バックブローで突っ込んだのと【全く同じカフェの天井の板】に、頭からズボォォォッ!!!と大根のように直撃して突き刺さり、そのまま下半身を包帯ごとぶら下げた状態で白目を剥いてガチ気絶したのだった!!!


「あっちゃ〜……またやっちゃったよ。いやぁごめんねアリア、手が塞がってたから、つい足が自動で反応パージしちゃったんだよねぇ。これ、今日の分の『追加の治療費(金貨ドンッ)』だからさ!」


リザさんは俺に両手を離し、あっちゃ〜……と苦笑いすると、テーブルにまた結構な金額の大金を置き、アイスコーヒーを片手に「んじゃまたねー!♡」と、おばあちゃん特有の恐ろしいフットワークの軽さでサササッと市場の闇へ退場していってしまった。


「師匠ぉぉぉ!!! 2日連続でカフェのまったく同じ天井のオブジェクトに頭から突き刺さって下半身をぶら下げてガクブル震えていらっしゃるなんて、一体どんな特訓をされているのですかァァァ!!! 待っててください今すぐ引っこ抜いて差し上げますわァァァッ!!!」


キアラちゃんが「フンヌッ!!(※大根を引き抜くガチの物理筋力)」と天井からアリアちゃんの足を引っ張って泥縄に引っこ抜こうと大騒ぎしている横で、俺は人間姿のまま、テラス席の床の上で呆然と立ち尽くした。


(両手をガッチリ抑えて正面からホールドしてたのに、手が出せないならローリングソバットで自動カウンターをブッ放してアリアちゃんを2日連続で天井のゴミにしてんじゃねぇよバトルジャンキーおばあちゃん!!!(※涙目の大号泣クレーム)

あの還暦チートボスから髪の毛1本を毟り取るの、マジで無理ゲーのインフレじゃねぇかよー!!!)


髪の毛(素材)が手に入らなかったということは、俺は今夜の夜デートで、またキアラちゃんに『キスに溺れましょうよ♡』って濃厚な不意打ちキスを喰らって、裏技解除システムを永遠に1日目でループさせられて、本当に一生ガチトカゲ姿のまま完全確定飼育監禁されるという最悪の未来が残されているということだ。


俺の隠密スローライフは、アリアちゃんが2日連続でカフェの天井から大根のように引っこ抜かれている大惨事のなかで、「素材剥ぎ取り不可」の絶望タイムラインの重力波を全身に浴びながら、もはや誰もコントロールできない超泥縄ループ日常へと、容赦なく突き進んでいくのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:本日18時40分!)

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