第65話 大賢者ツッコミの大復活と、アイスコーヒー片手の黒の天災
朝一番に、隣国から人間砲弾として吹っ飛んできたアリアちゃんの石頭によって、せっかく直ったばかりの我が家の新しいトビラを跡形もなく木っ端微塵に大爆破された、あの悪夢のようなテロ事件から数時間後。
太陽が真上へと昇りつめた、今日のお昼時のランチタイム。
なんとか気絶から大復活を果たしたアリアちゃんを連れて、本日『1回目』の擬態魔法(3時間枠)を発動して人間の姿にポップアップした俺は、人間の村のいつもの馴染みのカフェのテラス席で、キアラちゃんとテーブルを囲んでランチデートの席についていた。
だが、そのテーブルを包む空気は、これ以上ないほどに重く緊迫していた。
「――師匠ぉぉぉ!!! 一体そのお身体はどうされたのですかァァァーーーッ!!! (※ガチの心配での大パニック)」
「い、いや……ボク、マモル様にお願いされて、ちょっと隣の国までお買い物(※命がけの特攻隠密出張)をしに行って、現地の化け物に派手に返り討ちに遭っただけでさ……」
「……マモルさんのお買い物のために? ――っ、マモルさん、一体どういうことですの? 私に内緒で、私の大切な師匠をそんなボロボロになるまで危険な目に遭わせるだなんて……白状しなさい(※ルビーの瞳からハイライト完全消滅)」
(ひえっ!! 師匠をガチ心配した直後の、俺への寻問のシフトチェンジの速度がマッハすぎて脳細胞が即死するわバカヤローッ!!!(※恐怖の白目))
俺がキアラちゃんの誤解による物理的消滅の恐怖で滝のような冷や汗を流した、まさにそのコンマ数秒の瞬間だった。
パコォォォーーーッ!!!(※アリアちゃんの杖がキアラの頭を叩く、乾いた良い音)
「いたたたたっ!? 師匠、何故私の頭を!?」
「コラァ!!! キアラ、またお前の悪い暴走妄想癖が出ているぞ!!!ボクはマモル様に個人的なお買い物をお願いされて、ちょっとお使いに行って失敗しただけだ!! マモル様を1ミリも問い詰めるんじゃないよ!!!(※決死の身内フォロー)」
アリアちゃんの頼もしすぎる大魔導師物理ツッコミを脳天に浴びたキアラちゃんは、涙目で両手で頭を押さえながら、ルビーの瞳にキラキラとハイライトを大復活させて猛烈に大反省(赤面)し始めた。
「す、すみません師匠ぉぉ……。そ、そうだったんですのね……。マモルさんが私へのサプライズ食材のために、私の大好きな師匠にお使いを……っ! 勘違いして問い詰めてしまって、本当にごめんなさい、師匠、マモルさん……っ!!(※最新のチョロイン超理論バフ大爆発)」
(これだァァァ!!! これだよ、やっぱり俺の隠密スローライフの横には、この完璧なキレ味と身内の圧倒的な説得力でキアラを物理的に止めてくれる『大魔導師ツッコミ(アリアちゃん)』がいないと、日常の防衛線が成り端ねぇんだよ!!! アリアちゃん愛してる、生きて帰ってきてくれて本当にありがとうォォォ!!!)
俺がテラス席で涙目を流しながら魂の底からアリアちゃんに大感動している、まさにその直後のことだった。ガタバシッと、俺たちのすぐ真隣の空いているテーブルのイスに、一人の黒髪ロングの美少女が何食わぬ顔で腰掛けた。
「いたたたた……。あ、店員さん、アイスコーヒーね。氷多めでよろしく(※サバサバしたおばあちゃん口調)」
俺とアリアちゃんの脳細胞が、一瞬にしてガチチのフリーズをキメた。
((朝一番に俺の部屋から隣の国まで思いっきり特大ホームラン(物理パージ)したはずの、あの【黒の天災】が、何事もなかったかのように人間の姿でカフェの隣席にのんきにポップアップしてくんじゃねぇよー!!!(※ガチのパニック)))
隣国最強の戦闘狂(中身還暦超えおばあちゃん)は、隣の席で包帯ぐるぐる巻きになっているアリアちゃんにのんきに気付くと、サバサバと片手を挙げた。「あれ? アリアじゃないか。奇遇だねぇ」
アリアちゃんは(ひ、ひぃぃぃ! 魔王様の暗殺ターゲットが人間の村までストーキングおもてなししてきたぁぁ!)とリアルに椅子の上で激しくガタガタと痙攣しだした。
しかし、中身が還暦を超えた超絶大雑把な爬虫類オタクのリザさん。目の前にいる黒髪の爽やかな俺(人間姿)を見ても、さっき大集落の自室で自分を隣国まで消し飛ばした「黒の王(巨大トカゲ本体)」だとは、これっぽっちも気付いていない様子だった。
「いやぁ、私、異世界転生して以来初めてタイマンで負けちゃったよ。あの大集落にいた【黒いリザードマン】、本当に物凄く強くてワイルドで最高だねぇ! 早く体力を回復して、あの黒トカゲとベッドの上でもう一度激しく絡み合いたい(※モフモフ再戦したい)ねぇ!」
「あの、もしかして……隣国で一国家の精鋭軍隊を消し炭にしていると噂の【黒の天災】と呼ばれている、高名なリザ様ですの……!?(※ルビーの瞳をキラキラ輝かせる)」
アリアちゃんのミイラ姿を完全にスルーして、キアラちゃんが伝説のチート人間の登場に興奮して食いついた。
「ああ、そうだよ。お嬢ちゃんも強そうだけど、アリアよりは弱いかねぇ」
「リザ様、今おっしゃったその『黒いトカゲ』とは……もしや、大集落で【マモル様】と呼ばれている、あの黒い漆黒の巨大トカゲのことですの……?(※一瞬でヤンデレハイライト完全消滅)」
「ああ、そういえばそんな名前を叫んでいたねぇ」
「やはりそうですわ!! あの不衛生な黒いトカゲは、この私のマモルさん(※人間姿の俺)を拉致監禁した、エルシエラとかいう銀髪泥棒猫の凶悪な『番犬(下僕)』ですのよォォォ!!! 今すぐ私の地魔法で消し炭に――」
パコォォォーーーッ!!!(※アリアちゃん決死の2度目の物理ツッコミ)
「いたたたたっ!? 師匠、何故また私の頭を!?」
「ご、ごめんねリザさん!! ウチのキアラは優秀なエリート魔導師なんだけど、ちょっと妄想癖(大勘違い)が強くてさ!! ハハハ!!(※顔面滝の汗での必死の泥縄フォロー)」
「あ、ああ、うん……。お堅い令嬢の弟子がいるってのも大変だねぇ。ああごめん、ちょっと冷たいお水貰ってくるよ」
リザさんはアイスコーヒーを飲み干すと、おばあちゃん特有の超大雑把な苦笑いを浮かべながら、のんきに席を立ってお水を取りに向かった。キアラちゃんも頭を押さえながら、「あ、私も頭を冷やすために、お水を取ってきますわね……」と席を立った。
テラス席のテーブルに2人きりで残された、俺と包帯姿のアリアちゃん。
俺は、水を取りに給水器へと向かったリザさんの無防備な背中を見つめながら背中に滝のような冷や汗を流しつつ、コソコソとアリアちゃんの耳元へ口を近づけて、これ以上ないほど強欲な耳打ちをした。
「――アリアちゃん。ちょうどいいじゃん。リザさん、中身がおばあちゃんでめちゃくちゃ大雑把だし、今あいつが水を取りに行って完全に油断してる隙に、後ろから極秘で【髪の毛1本】だけでいいから、何とか上手いこと毟り取って回収してきてよ! よろしくねっ!♡(※お買い物感覚の無茶振り再発注)」
アリアちゃんの包帯の奥のルビーの瞳が、恐怖と絶望でこれ以上ないほどバキバキに丸く点になった。
(隣国最強の『歩く天災』の背後から、油断してる隙に呪いの触媒(髪の毛)を暗殺ハッキングで毟り取ってこいだなんて、マモル様のお買い物感覚の無茶振りが昨日以上に容赦ねぇぇぇ!!!失敗したらボクが今度こそ消し炭のミンチにされる、過去最も心臓に悪い『隠密・素材剥ぎ取りデスゲーム』のゴングが今ここで鳴り響くじゃないかー!!!)
アリアちゃんが涙目をダラダラと流しながら、杖を抱きしめて、お水を入れているリザさんの背後へとガクガク震えながら隠密ストーキング特攻を仕掛けようとする、まさにその瞬間。
俺たちの人間の肉体を取り戻すための第五章のタイムラインは、カフェの給水器の前を舞台にした、過去最も心臓に悪い『素材剥ぎ取り隠密ステルスサスペンス』の幕開けに向けて、容赦なく突き進んでいくのだった。
【更新スケジュール変更のお知らせ】
いつも『トカゲにモテても嬉しくねぇ!』をお読みいただきありがとうございます!
より安定して面白いお話をお届けするため、来週から1日1回更新(毎日18時40分公開)のペースで更新していきます!
なお、今週末はまた1日3話公開しますのでたっぷりお楽しみください!
今後ともよろしくお願いします!
「ちょっと面白いかも」「続きが気になる」と思ってくださったら、画面下の【ブックマークに追加】や、【評価の☆☆☆☆☆(星)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!
よろしくお願いいたします!
(次回更新:明日12時20分!)




