第55話 お預け1日目のスピードリセマラと、夜のテラスの濃厚証明口づけ
夜のカフェのテラス席。
キアラちゃんの村を焦土にするレベルの、周囲の重力を狂わせる暗黒ヤンデレ地魔法の魔法陣がバチバチと展開するなか、俺は12時間の変身魔法の魔力が尽きかけて、人間の骨格の奥から白竜の筋肉がピキピキと大暴れし始めているエルシエラの背中を、ドスドスと両手で必死に外へと押し出した。
「おいエルシエラ!! お前はとにかく今すぐ本来の姿に戻る前にリザードマンの大集落の自室へ帰れ!! ここで白竜の巨体に戻ったら俺の隠密スローライフが終わっちまうんだよォォォ!!!(※必死の説得)」
「あら……わかりましたわ、マモル様♡ それではわたくし、一足お先にマモル様のお部屋へ戻って、ベッドのシーツを綺麗に整えて、いつでも卵100個を産み落とせる完璧な体勢で、マモル様のお帰りを全裸でお待ちしていますわねぇ……♡(※満面の聖女の微笑み)」
「全裸で待つなァァァ!!! 余計な夜這い待機宣言(火に油)をキアラちゃんの目の前でドヤ顔で残して帰るんじゃねぇよバカヤローッ!!!」
エルシエラは優雅に一礼すると、お買い物袋を片手に、夜の市場の物陰へと何食わぬ顔でスーッとマッハの速度で去っていった。タイムリミット寸前で、なんとか村のど真ん中でのガチ竜正体バレだけはセーフとなった。
「待ちなさいよこの泥棒猫ォォォ!!! 私に内緒の全裸のベッド密約の話は、まだ終わっていませんわァァァーーーッ!!!(※ヤンデレハイライト完全消滅)」
「行かせたら今度こそ人間の村とトカゲの村が世界大戦で全滅するわァァァッ!!!」
俺は大慌てで、最大出力の特注杖を構えてエルシエラを猛追しようとしたキアラちゃんの華奢な腰を、後ろからガシッ!!!とラグビーのタックルばりに羽交い締めにして全力で阻止した。
キーン……!!
エルシエラ様が音速で去っていった爆風だけがヒューヒューと吹き抜けるカフェのテラス席に、ぽつんと2人きりで残された、俺とキアラちゃん。
キアラちゃんは杖をテーブルにドンッ!!と叩きつけると、トロンとした昼間のガチ恋の瞳から一転、浮気不倫を絶対に許さない「防衛隊のガチの特高尋問官」の眼光で、俺をジロリと睨みつけてきた。
「……さあ、マモルさん。説明を求めますわ。何故、あの銀髪の不法侵入泥棒猫が、マモルさんのお部屋のベッドで卵を100個産み落とす密約を嬉しそうにゲロっていったのですか……? 詳しく、1文字の狂いもなく吐き出しなさい(※ヤンデレ覇気により天井の照明がチカチカ明滅)」
(浮気なんて1ミリもしてねぇのに、ツッコミ・ブレーキ役のアリアちゃん(隣国へ隠密出張中)が不在のせいで、このキアラちゃんの脳内ブレーキが完全に壊れて大暴走しちまってるよォォォ!!!)
俺は冷や汗をダラダラと滝のように流しながら、前世の脳細胞をフル回転させて、これ以上ないほど必死に泥縄なイケメン言い訳(大嘘)をブッ放した。
「ち、違うんだキアラちゃん!! あれはさっきの宿屋のサプライズ鑑定の続きなんだけど……!俺がキアラちゃんに世界一喜んでもらえる最高級の『オムレツ料理(卵100個分)』の超高級食材を極秘でエルシエラに発注していただけなんだ!! でもエルシエラは頭がちょっとおバカなポンコツだから、『我が家のベッドへ卵をお届け(デリバリー)しますね♡』っていうのを、間違えて『ベッドの上で卵100個産み落としますね♡』って、最悪に破廉恥な言い間違いをしちゃっただけなんだよォォォッ!!!(※必死のドヤ顔)」
「……そ、そういうことですの……っ!? マモルさん、私のために、卵100個分の超高級特大オムレツのサプライズディナーを……っ!♡」
一瞬、超絶チョロインバフによりルビーの瞳に光が大復活して大感動しかけたキアラちゃんだったが、さすがに今回の言い訳は無理がありすぎたのか、すぐに「……でも、そんなの、やっぱりあまりにも言い訳が苦しすぎて、100%信用はできませんわ……ッ!!涙」と、ルビーの瞳を潤ませてじりじりと顔を近づけてきた。
「マモルさん、私のことが本当に一番好きなら……今すぐ私に、お昼よりも濃厚なキスをしてください!! キスをして、そのオムレツが私への真実の愛の証明だということを、今ここで証明してくださいましーッ!!!♡」
(しまっ……! 麦茶のピッチャーはもう空だし、食べ物の盾も全部キアラちゃんのお腹の中に消し炭にされたから、物理ガードする武器が何もねぇ……ッ!!!)
じりじりと迫ってくるキアラちゃんの可愛い唇を前に、俺は脳内でカチカチと減っていく変身時間と、ココアから突きつけられた「お預け100日連続ルール」を思い浮かべ、極限の1秒のなかで、非情な「強欲ハッキング超理論(ソロバン勘定)」を弾き出した。
(……待てよ? ココアの言っていた新ルールは『人間のままキスしたら1日目からカウントリセット(最初からやり直し)』だったよな……?ってことは、俺、いま【まだお預け1日目の最初の夜】だから……今ここでキアラちゃんにキスをされて1日目にリセットされたとしても、失う我慢日数は【実質ゼロ(ノーダメージ)】じゃねぇか!!!)
「……分かったよ、キアラちゃん。これが俺の、愛の証明(オムレツの言い訳)ね」
俺は引きつったイケメン笑顔のまま、腹を括って、じりじりと迫るキアラちゃんの甘い唇を受け入れ、夜のテラス席で最高に濃厚な『2回目のフライングキス(本日2回目の人間姿のままのキス)』を真っ向から交わしてしまうのだった。
柔らかくて甘い、最高の両想いキス(※ただしリセマラ)。
(うわあああ大歓喜だけど、最高にご褒美ラッキースケベだけど、100日間キスを我慢しようとココアの神殿のトビラを粉砕して硬く誓ったまさにその初日の夜に、始まって数時間で秒速カウントリセット(1日目リセマラ)をキメる俺のこの意志の弱さ不甲斐なさよォォォオオオ!!!(※心の中で大号泣の血涙)
アリアちゃん!! 早く隣の国からチート怪物の髪の毛を毟り取って帰ってきくれねぇと、俺、明日からも毎日キアラちゃんに押し切られて永遠に『1日目』をループするハメになって一生ガチトカゲが確定しちまうぞォォォオオオ!!!涙)
「はふぅ……♡ マモルさん、最高の愛のオムレツ証明(ちゅっ♡)ですわ……♡」と幸せそうに抱きついてくるキアラちゃんをなんとか送り届け、本日最後となる2回目の擬態制限時間をすべて使い果たし、元の漆黒の大トカゲ姿へと強制的に戻された俺は、魂の抜け殻のようになって大集落の我が家の自室へと命からがら逃げ帰ってきたのだった。
「はぁ……はぁ……、散々な1日目の夜だったわ。……あ、そういえばエルシエラのやつ、部屋のベッドで全裸でシーツを整えて待ってるとかほざいてたな。まさか本当に部屋に潜入して待ってたりして――」
俺がトゲトゲしいツノを擦り寄せながら修理されていないトビラの大穴から恐る恐る部屋を覗き込み、ベッドの上へと視線を向けた、その瞬間だった。
「…………(※スースーと優雅に寝息を立てる音)」
見ると、俺のベッドの上には、【12時間の大容量変身魔力が完全に尽き果て、お色気もクソもなく、ただの『ゴツゴツした真っ白なガチ竜姿(2.5m級の質量)』に戻ってドスンと丸くなって爆睡しているエルシエラ(本体)】が、当然のように不法侵入して占拠していたのだった。
(全裸の超絶美少女(人間姿)じゃなくて、ただの【白いトカゲ(怪獣)】が俺のベッドの真ん中で優雅に二度寝キメてんじゃねぇかバカヤローッ!!!
絵面がラノベのご褒美ハーレムじゃなくて完全に『ジュラシック・パークの飼育小屋』じゃねえか!!! 俺はどこで寝りゃいいんだよォォォオオオッ!!!涙)
キアラちゃんのおねだり不意打ちキスにより、明日からまた「1日目」の麦茶ガードをやり直すハメになった絶望と、部屋に帰ったら待っていた白竜の物理的にシュールすぎるおもてなし。
俺のお買い物隠密ライフは、アリアちゃんが隣国で「魔王様の暗殺命令(※ただの軽いお使い)を果たさねゃ世界が滅ぼされるぅぅ!涙」と命がけの単独テロに挑んでいる裏で、一生ガチトカゲ化を回避するための、さらなる泥縄と大混乱の日常へと、容赦なく突き進んでいくのだった。
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(次回更新:本日18時40分!)




