第51話 お預け100日のロック解除と、卵100個のヤンデレ夜間残業予告
「マモルさん……♡ 私たちの真実の愛の誓いの口づけですわね……♡ これからもデートのお誘い、いつまでも待っていますわァァァーーーッ!!!♡」
人間の村の宿屋の一室。廊下のトカゲヒロイン5頭のストーカー乱入のせいで焦らされまくったキアラちゃんが、俺がトカゲに戻る前の【人間の姿のまま】で不意打ちのフライングファーストキス(※エルシエラは事故につきノーカウント)を強奪していった、その直後のことだった。
俺は顔面を完全に真っ白にさせたまま、引きつった極限のイケメン笑顔全開で、「あ、あはは、キアラちゃん。……じゃあ、俺、ちょっと急用を思い出したから、また、夜にね……っ!涙」とガタガタ震える声で告げ、大赤面で悶絶するキアラちゃんを残して、人気の少ない市場の物陰へとマッハの速度でダッシュした。
物陰に飛び込むと同時に擬態を解いて漆黒の大トカゲ姿へと戻ったした俺は、地鳴りのような足音をドスドスと響かせながら、大集落のさらに奥の森にそびえ立つ、『光の神殿』へと涙目で全力ダッシュをキメた。
ズガァァァァァン!!!
「おい! いるんだろココア! 出てこいバカヤローッ!!!」
俺はトカゲの短い前足で、神殿の重厚な大理石のトビラを容赦なく物理爆破して突入した。
煙が立ち込める神殿の奥、神聖な白いクッションの上で、すべての元凶である世界最高神の申し子――ココアが、つぶらな瞳をパチパチさせながらのんきにポップアップした。
「あ、マモルくんだー。そんなに慌てて不法侵入(ドア破壊)して、一体どうしたのー?♡」
「どうしたのじゃねぇよココアァァァ!!! キアラちゃんがチョロすぎて人間の姿のまま不意打ちキスを喰らっちまっただろォォォ!!!ロックが作動して人間の姿に戻るチャンスが永久にロストしちまったじゃねぇかぁー!!! 他に人間に戻る裏技を今すぐ吐き出しやがれバカヤローッ!!!(涙目の特大クレーム)」
俺がココアの小さな白い肉体をガシッガシッと両前足で締め上げると、ココアは人畜無害なドヤ顔のまま冷酷に語りかけてきた。
「あ、おめでとうマモルくん! でも人間の姿のままでうっかりキスを交わしちゃったから、システムが誤認して愛の裏技解除条件は永久に消滅(確定ロック)しちゃったよっ!♡ 一番簡単なのはキアラちゃんが死ぬとロックが解除されるんだけど――」
「嫌に決まってんだろキアラちゃんは俺の大切な恋人だぞバカヤローッ!!」
「じゃあ、次に簡単なのは、リザードマンのメスに【卵を100個】産ませると、一族への貢献バフとしてシステムロックが解除されるんだけど――」
「そんな倫理観の崩壊したサイコパスな絶倫レースができるかバカヤローッ!!! 俺の中身は18歳のピュアな男子高校生なんだってば!!」
俺が白目を剥いて全力拒絶をブチかましていると、ココアは最高にイラッとする笑顔のまま、さらにとんでもないトカゲ超理論の裏コードを口にした。
「じゃあね、本質が同じ【黒】の魔力を持つ隣の国の人間から、ほんの少し『髪の毛1本』とか『切った爪』とかを回収してペロッと食べるだけで、キアラちゃんとのキスでかかった永久確定ロックの術式だけは綺麗に上書き解除(初期化)されるよ?
それか、あとは……キアラちゃんと【100日間連続で、人間の姿のまま絶対にキスをしないでお預け耐久レース】を完遂すれば、キスの呪い魔力が自然消滅してロックは解除されるよ。ただし、【その100日間の間に、うっかり人間の姿のまま1回でもキスをされちゃったら、今までの我慢が全部パーになって『1日目からカウントリセット(最初からやり直し)』】になっちゃうから、キアラちゃんに近づかれるたびに必死で唇をガードしてねっ! ロックさえ外れれば、またいつものトカゲ姿のままキスをして人間に完全復活できるようになるからねっ!♡」
(な、なるほど……! 髪の毛を食べるか、100日間お預けを喰らわせるか、それなら俺のオスとしての尊厳も死守できるな……!)
俺が冷や汗を流しながら「じゃあ、その100日間お預けレースで――」と本命の提案に乗ろうとした、まさにその時だった。
「――ココア様。リザードマンのメスが卵を100個産むというのは、1頭が100個産んでもいいんですの?」
「ひえっ!?」
俺がココアの小さな肉体を両前足でガシッガシッと締め上げていた、まさにその時だった。
粉砕された神殿のトビラの大穴から、神聖で上品な、だけどこれ以上ないほどに禍々しいヤンデレの重低音覇気が漂い、ぬっと一人の美少女が乱入してきた。
人間の姿に擬態魔法で変身している、白竜一族の長――銀髪の超絶美少女姿のエルシエラ様だった。
俺のように1日2回の小回りは利かないが、【最長12時間ぶっ続けで人間に化けていられる】という、聖女特有のバグレベルの超大容量変身バッテリーを誇るエルシエラは、俺の後を完璧にストーキングして、人間の姿のまま12時間の余裕の残量を優雅に引き連れて神殿まで先回りし、一族の繁殖システムの仕様を真面目な顔でハッキングしにきていたのである。
ココアがつぶらな瞳を輝かせて「うん! 1頭で100個産ませてもロック解除だよー!♡」と肯定した瞬間。
エルシエラはルビーの瞳をギランギランに怪しく輝かせ、漆黒の大トカゲ姿の俺に向かって、これ以上ないほど上品でおっとりとした、最高に逃げ場のないヤンデレな微笑みを浮かべて至近距離で凄んできた。
「マモル様、安心してください。キアラ様には、このことは絶対に内緒にしておきますわ。……さあ、人間の肉体を取り戻すため、今夜からこのわたくしに、卵を100個産ませてくださいましね……っ!!♡(※満面のお色気夜這い予告)」
「お前が一番の不法侵入のプレデターだろォォォ!!! なんで神殿まで俺をストーキングして、ヤンデレ絶倫夜間残業の強制契約を迫ってきてんだよバカヤローッ!!!」
キアラちゃんのフライングキスのせいで人間の姿への復活チャンスが永久ロックされた挙げ句、隣の国の謎の【黒の人間】の存在が浮上し、さらにはエルシエラによる恐怖の卵100個おもてなし夜這い大戦という、最悪の方向へ世界がバグり散らかしていく光の神殿。
(よし、明日からの日々、キアラちゃんのキスを絶対に100日間死ぬ気でガードしきって、その間に隣の国の【黒の人間】から髪の毛を回収する別のルートを探し出してやるぞォォォオオ!!!)
宿屋のトビラ同様、これからのタイムラインの防衛線(唇)を必死にロックしようと心の中で血涙を流す俺。
だが、明日のお昼のデートの席で、お買い物感覚の軽い気持ちでアリアちゃんにその「隣の国の黒の人間」についての相談を振ってしまうことが、どれほど最悪な大暴走の引き金になるのかを、この時の俺はまだ知る由もなかった。
俺のお買い物隠密ライフは、すべてのやらかしのツケが一気に回り始めるなかで、もはや神様でも誰もコントロールできない大混乱の日常へと、容赦なく突き進んでいくのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「ちょっと面白いかも」「続きが気になる」と思ってくださったら、画面下の【ブックマークに追加】や、【評価の☆☆☆☆☆(星)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!
よろしくお願いいたします!
(次回更新:明日12時20分!)




