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第5話 泥トカゲの家庭料理と、のたうち回るトラウマ

前日のデート中に、爆乳美少女姿のままハエを素口で高速捕食するという前代未聞の奇行をぶちかましたガルダ。「デートの邪魔だ!」と俺が彼女を物理的に村の外へと押し戻し、キアラちゃんに「サバイバルの達人だから!」と言い訳の限界突破をしてから一夜明けた。


「……マモルさん、昨日のお友達、本当にサバイバルの達人なんですよね? 警察より、精神病院か魔獣対策班を呼んだ方がよかったんじゃないかって、私、昨日の夜ずっと思い悩んでいたんですけど……」

「だ、大丈夫だから! あいつはちょっと……ほら、プロ意識が高すぎてハエを見ると体が勝手に反応しちゃう特殊な訓練を受けてるだけだから!」


俺は必死に顔を引きつらせながら、今日も人間の村の広場をキアラちゃんと歩いていた。

毎日毎日、トカゲヒロインたちの野生パワーに振り回されて寿命が縮まる思いだ。


お目当てのカフェが満席だったり、広場のいろんな出店をのんびり見て回ったりしているうちに、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。気づけば、人間にいられる3時間のタイムリミットも、残り少なくなってきていた。


「あ、マモルさん、あそこを見てください。新しい屋台ができてますよ。あそこで何か遅めのランチにしませんか?」


キアラちゃんが指さした広場の中央。そこには木製の素朴な移動屋台が佇んでいた。看板には『土の恵み・デメトの家庭料理』と書かれている。


屋台の奥でエプロンを締め、おっとりと微笑んでいるのは、見事な琥珀色の髪をゆるく三つ編みにした、包容力抜群の豊満ボディを持つお姉さんだった。

街の男たちが「なぁにあのおっとり美人……」「お嫁さんにしたい……」と群がっている。


だが、その正体を、俺は知っている。

土の部族の戦士長の娘――デメトだ。


(デメト! お前まで人間に化けて何やってんだよ!?)


俺が内心で絶叫していると、キアラちゃんが

「まぁ、私と同じ地属性の、綺麗な琥珀色の髪をしたお姉さんですね! 挨拶してみましょう!」と、デメトの屋台へ吸い寄せられていく。


「あら、いらっしゃい……って、マモルくん!」

俺の姿を見るなり、デメトは琥珀色の瞳を優しく細め、嬉しそうに胸元を震わせた。


「ゼフィラちゃんもガルダちゃんも、力ずくであなたを連れ戻そうとするから失敗するのよ。男の子を落とすなら、やっぱり美味しい手料理で胃袋を掴まなくっちゃね。ちょうど今、あなたのために作った特製のスープが煮え上がったところよ〜」


「えっ、スープですか!? 凄くいい匂いがしますね!」

無邪気に喜ぶキアラちゃん。確かに、お肉とスパイスの濃厚で香ばしい、めちゃくちゃ食欲をそそる良い匂いが漂っている。


「はい、マモルくん。アタシの愛をたくさん込めた、最高級スープよ。お召し上がれ」


デメトが「ふふっ」と聖母のような微笑みを浮かべ、木のお椀を俺たちの前に差し出してきた。


その瞬間、俺とキアラちゃんの視界に、そのスープの『中身』が飛び込んできた。


濃厚な茶色のとろみのあるスープの底。

地属性の秘伝ソースをたっぷりと絡められ、熱々のスープの中で、丸々と太った手のひらサイズの巨大な芋虫たちが、「うねうねうねうね!!」と、ものすごい生命力でのたうち回っていた。


「はい、魔の森の最高級食材『アースワームの踊り食いスープ』よ。元気が出るから、たくさん食べて早くアタシに元気な卵を産ませてね」


デメトはおっとりとした声で、とんでもないトカゲの交尾・繁殖のパワーワードを笑顔で添えた。


「……ひっ……ひぃぃぃぃいいいい!!!」


キアラちゃんは一瞬で顔を真っ青にし、口元を押さえてガタガタと震え出した。

「む、虫が……! 生きたままのたうち回る芋虫がスープの海で踊ってる……!! しかも、たまごを産ませるって何、何なんですかこの人ォォォオオ!!」


同じ「地属性」の力。

片やホカホカの美味しいパンを作り、片や土壌から芋虫を収穫して躍らせる。

大地の恵みの進化の方向性が、人間とトカゲで違いすぎる!!


「デメトーッ! 人間の村のど真ん中でトカゲのゲテモノ料理を出すんじゃねぇぇぇえええ! デートの邪魔どころの騒ぎじゃねぇぞバカヤローッ!」

「あら、マモルくん照れちゃって。反抗期かしら? 暴れる悪い男の子は……こうよ?」


デメトは困ったように眉を下げると、優しく地面にトントン、と足を打ち付けた。


直後、俺とキアラちゃんの足元の石畳が、一瞬で泥のようにドロドロに溶けた。

「え……っ!?」とキアラちゃんが声を上げる暇もない。


ズガガガガガ!!!

広場のど真ん中に、直径5メートルの巨大な「底なしの落とし穴」が、デメトの土魔法によって突如として出現したのだ。


「ぎゃああああああああああ!!!」

「キャァァァァァァァァァ!!! 穴ァァァアアア!?」


俺とキアラちゃんは、仲良く二人で暗闇の落とし穴の底へと真っ逆さまに落下していく。


(クソっ、デメトの得意魔法は落とし穴だった……! っていうか、やばい!)


落ちていく浮遊感の中、俺の脳内に最悪の電子音が響き渡る。


――ピピッ。制限時間、残り10分。

魔力がまもなく底を尽きます。


嘘だろ、この深くて暗い穴の底で、キアラちゃんと一緒にいる状態で変身時間が切れる!?落ちた先で漆黒の大トカゲに戻ったら、トカゲ大嫌いなキアラちゃんに確実に嫌われる!!


トカゲたちのおっとり優しすぎる(?)恐怖の手料理と、容赦のない野生の魔法。俺の3時間の命をかけた隠密ラブコメは、正体露見のギロチンが迫る、絶対絶命の地下迷宮へと突き落とされるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:本日17時20分!)

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