第49話 涙のガチ告白と、国宝ウロコの深夜残業会議
「ま、マモル様……っ! 昼間の約束通り、夜の3回目の儀式に伺いました……っ! どうかボクのこのエルフの肉体を生贄に捧げますから、キアラと人間の国だけは滅ぼさないでぇぇぇ!!」
宿屋の修羅場を一旦収束させた、あの怒涛のランチタイムから数時間後――。
本日最後となる2回目の擬態制限時間をすべて使い果たし、誰も人間が来ない安全なリザードマンの大集落の自室へ逃げ帰って元の『漆黒の大トカゲ姿』に引きこもっていた俺の部屋に、深夜、アリアちゃんがガクブルとマッハで震えながら潜入してきた。
ブチ壊されたままポッカリと大穴が空いているトビラの隙間から、一睡もしていないせいで目をバキバキに血走らせ、昼間に俺が大盤振る舞いした国宝級規模の漆黒の脱皮ウロコをカバンごと大事そうに抱きしめての完全降伏だった。
(おいアリアちゃん、昼間の宿屋での『今夜俺の部屋に来い』っていう真面目な作戦会議の予約を、なんで『来なかったら街を更地にする恐怖の深夜残業呼び出し』だと思って涙目で特攻キメてんだよ!!!)
俺は大トカゲ姿(重低音フシュゥゥゥ)のまま、コイツがこの先も世界平和のために狂った単読テロ(目隠し拉致)を繰り返すのを防ぐため、ホワイトで誠実な『魂のガチ告白(前世暴露)』をぶっかけることにした。
「違うんだアリアちゃん!!! 落ち着いて聞いてくれ、俺は世界を滅ぼす魔王なんかじゃない! 俺の正体は、ちょっと前まで日本の高校に通っていた、トカゲが大嫌いなだけの【普通の18歳のピュアな男子高校生】なんだよ!!
村を更地にする気なんて1ミリもねぇし、そもそもあの擬態魔法だって【1日2回、各3時間】しか人間の姿になれない制限付きなんだぞ!!
一昨日の昼に人間の姿に連続変身したのも、ただお買い物の制限時間が切れそうだったから2回目の変身枠をその場で前払い上書きしただけなんだってば!!」
俺は必死にトカゲの短い手足をバタバタさせて変身のシステム制限まで大真面目に打ち明けた。……のだが、人間の100倍強い伝説の大魔導師アリアちゃんの脳内超理論は、この俺のピュアなガチ告白を浴びて、最悪のウルトラ大誤解を遂げた。
(……ひ、ひぃぃぃ!!! 漆黒の化け物のマモル様が、ボクの忠誠心と口の堅さを試すために、わざわざ切ない顔をして『ボクはただの無害な前世高校生のピュアな男の子だよ♡』なんていう、高度すぎる猫かぶり欺瞞作戦を仕上げてきてるんだわァァァ!!!
さらにボクたち人間に手の内を隠して油断させるために、『ボクは1日2回、各3時間しか変身できない不自由なトカゲだよ』なんていう嘘の情報操作まで仕込んできてるんだわ……っ! ここでボクが『へぇ〜、なんだ、ただの18歳の童貞ガキだったんだ(笑)』なんて不敬な態度を1ミリでも見せた瞬間に、ボクの首を即座にへし折って、カバンの中の豪邸ウロコごとこの世界を消し炭にする気なんだわァァァアア!!!)
アリアちゃんは顔面から滝のような冷や汗をダラダラと流しながら、涙目で必死に俺に話を合わせるように叫んだ。
「そ、そうだねマモル様!! マモル様はただの無害でピュアなチェリーの高校生(※世界滅亡の隠語)だねっ! ボクもそう思うよ! リザードマンの王たるマモル様なら、そんな1日2回の制限なんて関係なく、本当はいつでも好きな時に一瞬で人間の少年に擬態して世界を欺けるもんねっ!! だからボク、マモル様のその高校生ライフ(※世界征服)のために、命がけで秘密を墓場まで持って行って全力で恋活アシストを頑張るからねっ!!涙」
(ガチの真実をシステムのルールごと100%打ち明けたのに、なんで『俺の忠誠心を試すための恐ろしい猫かぶりトラップ』として脳内格上げして完全服従してんだよアリアちゃんのバカヤローッ!!! しかもリザードマンはいつでも自由に変身できるってどんなウルトラ大誤解だよ!! 俺のピュアな18歳のアイデンティティが、世界滅亡を意味する最悪の恐怖の隠語に超進化してんじゃねぇかァァァ!!!)
俺がベッドの上で白目を剥いて血涙を流していると、完全服従のイエスマンと化したアリアちゃんは、昼間にチップとして大盤振る舞いされた国宝級のウロコの対価を支払うため、エルフの大魔導師としての英知をフル回転させ、世界のシステムをハッキングしたかのような【完璧なタイムライン裏工作】を涙目のドヤ顔で提案してきた。
「マモル様……っ! ボク、マモル様のその強大すぎる『いつでも変身できる能力』を活かした、完璧な時間差ハッキング作戦を考えてきたよ!
明日の昼、まず1回目の変身中に、ボクがキアラの目を魔法の黒帯で完全に封じるんだ。そしてマモル様は『キアラ、絶対に目を開けるなよ』って人間に化けたままキアラをロマンチックに抱きしめて、キスの直前――変身を自らスッと解いて、一瞬だけ大トカゲの姿に戻るんだよ……っ!
そのままトカゲの姿でキスをした次の瞬間に、マモル様が再び何食わぬ顔で一瞬で人間に大復活すれば――キアラに正体が1ミリもバレないまま、トカゲの姿でのキスという条件だけを完璧にクリアできるよぉぉぉ!!!涙」
(……おい、待てよ。このガクブル震えてるロリババァ大魔導師、いつもはおバカな空回り単独テロばっかりやってるポンコツだと思ってたけど……。この時間差変身トリック、俺がトカゲ姿のままキアラちゃんに正体を1秒も明かさずに、ココアの突きつけてきた無理難題を100%安全にハッキングして人間に完全復活できる、文字通り【宇宙一完璧な最強の完全犯罪】じゃねぇかァァァ!!!(※アリアちゃんを初めて心から見直した大感動))
「……アリアちゃん。お前、天才かよ」
俺がトカゲの重低音ボイスで本気のリスペクトを告げると、アリアちゃんは「ひえっ! 魔王様が低い声でボクを褒めた! 殺される前の最後の晩餐の言葉だぁぁぁ!涙」とさらにガクブル震えて泡を吹きそうになっていたが、俺の脳内は明日への勝利の確信でギラギラと燃え上がっていた。
キアラちゃんへの正体バレ即死の恐怖を、アリアちゃんの立てた命がけの天才的タイムラインでねじ伏せる決意。
俺は明日の昼の宿屋の密室で待ち受ける、人間の肉体を取り戻すための過去最も心臓に悪い『ステルス時間差目隠し大戦』の勝利のビジョンをガチガチにロックしながら、さらなる大混乱へと、容赦なく突き進んでいくのだった。
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(次回更新:本日18時40分!)




