第48話 宿屋の密室お色気と、喜びのトビラ物理爆破大突入
アリアちゃんの提案したトカゲハグセラピーが、現代日本人にウジ虫を這わせる『マゴットセラピー』並みにキアラちゃんにとって論外の拷問であると一瞬で理解した俺は、
「あ、あははは……キアラちゃん、冗談だよ! ちょっと頭を冷やすために、お水でも取ってきてくれるかな?」と笑顔を引きつらせて彼女を一時的にカフェの奥へ退避させた。
キアラちゃんがいなくなったコンマ数秒の隙を見計らい、俺は横でカバンを抱きしめて死ぬ気でガタガタ震えているアリアちゃんの腕をガシッと掴んだ。
「アリアちゃん、トカゲエステは論外だ。この後、今から俺の宿屋の部屋に来い。第2回作戦会議だ」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃッッッ!!!!(※ガクブル最大瞬間風速)」
俺が怪しまれないためだけ(※防衛隊の目をごまかすため)に人間の村に借りている質素な宿屋の空き部屋。そこへアリアちゃんを連れ込み、パタンとトビラを閉めて完全な密室を作った、その瞬間だった。
アリアちゃんは恐怖と脳内等価交換ルールのバグにより、ルビーの瞳を涙目でバキバキに血走らせながら、プルプルと震える手で自らの服の襟元をベリベリと激しく緩め始めた。
「わ、分かったよマモル様……っ! カフェでのトカゲ恋活アシストが沼地の大イカ大拒絶で大失敗したペナルティとして、キアラだけじゃなくてボクの肉体までまとめて夜の生贄に欲しがっているんだね……っ!? いいよ、好きに噛み砕いてボクの全身の皮膚を剥ぎ取って魔導素材にしてお怒りを鎮めてぇぇぇ!!!涙」
「2回目の作戦会議だって言っているだろバカヤローッ!!! 服を緩めてエルフの最高位のお色気生贄サバトを完全密室で自作してんじゃねぇよアリアちゃん!!! 誰がロリババァ大魔導師のお前をハーレムに習慣したんだよォォォッ!!!」
俺がベッドの横で光速の往復ビンタツッコミをブチかましていると、突然、部屋のトビラの外から、フシュゥゥゥ……と人間の村を滅ぼせるレベルの、禍々しい【ヤンデレ殺意覇気】がジリジリと漏れ出してくるのが分かった。
俺が戦慄してトビラの「覗き穴」から外を覗くと、薄暗い廊下には、デメトの親父のウロコ特注杖をシャキーンと逆手に構えてトビラに耳を押し当てているキアラちゃんが仁王立ちしていた。カフェの奥から俺たちの怪しい密会を尾行し、案の定、「アリア師匠がマモルさんと浮気しようとしているわ!」とガチギレしていたのだ。
トビラを開けられた瞬間にゼロ距離地魔法爆撃でこの宿屋ごと更地にされると悟った俺は、必死に喉を鳴らし、トビラ越しにいつも通りの爽やかな声を張り上げた。
「あ、あれ? キアラちゃん!? そこにいるの? ごめんね、今アリアちゃんに【キアラちゃんへの内緒のサプライズプレゼントの最高位の魔導鑑定】を、この部屋で極秘に頼んでいたんだ! 男らしく、ちゃんとしたデートの時にキアラちゃんを世界一喜ばせたいからアリアちゃんに協力してもらってたんだけど……その、中を見られるとサプライズが台無しになっちゃうから、あと10分だけ、カフェの席でお楽しみに待っててくれないかな……っ?」
そのピュアすぎるイケメン大嘘(言い訳)を聞いた瞬間、外のキアラちゃんは一瞬でヤンデレ覇気が消し飛び、顔面から「プシューーーッ!!」と湯気を噴いて大赤面した。
「マ、マモルさん……っ! 私のために、師匠を巻き込んでまでそこまで真剣にサプライズを……っ! ああ、もう嬉しすぎて、私、1秒も待っていられませんわァァァーーーッ!!!(※喜びのあまりテンション大暴走)」
「え? 待っ――」
俺が引きつった笑顔で制止しようとした、そのコンマ数秒後だった。
ズガァァァァァン!!!
「マモルさぁぁぁーーーん!! 私も今すぐあなたを抱きしめたいですわァァァーーーッ!!!♡」
キアラちゃんが嬉しさのあまりテンションを大爆発させたせいで、特注杖から放たれた最大出力の地魔法の爆撃により、宿屋のトビラが粉々に粉砕されて爆発四散したのだ!
「あ、あはは……トビラがまた粉砕された……」
俺がベッドの上で安堵の冷や汗から一転、爆風の煙の中で白目を剥いた、まさにその瞬間だった。
「……あら?」
煙が晴れ、満面の笑顔で部屋へ突入してきたキアラちゃんのルビーの瞳から、一瞬にして光が完全消滅した。
キアラちゃんの視線の先――そこには、トビラ爆破の恐怖のあまりガタガタと激しく震えながら、自ら服の襟元をベリベリに大きく緩めてはだけさせているアリアちゃんと、 それをベッドの横で「服を直せ!」と両手で掴んで必死にツッコんでいた俺の密着した体勢(※ただのツッコミ)が、この上ない現行犯の絵面として100%完璧に直撃していた。
「……最高位の魔導鑑定を頼まれているだけのはずなのに、何故、アリア師匠の服の襟元が淫らに乱れてはだけていて、マモルさんとそんな破廉恥な密着をしているのかしらァァァ……?」
「ひえっ!? 違うんだキアラちゃん!!! これはお色気アクシデントじゃなくて、このロリババァ大魔導師が勝手に魔王の生贄だって勘違いして服を引きちぎっただけで――」
トビラの覗き穴どころか、物理的に完全オープンになった部屋の入り口で、キアラちゃんのルビーの瞳が最高に血走り、ハルマゲドンレベルの地魔法の魔法陣が俺たちの鼻先でバチバチバチッと大展開され始めた!
「だ、ダメだァァァ! 嘘がバレたァァァ!! 宿屋ごと殺されるゥゥゥ!!」
俺がベッドの上で白目を剥いた瞬間、横で服の襟元をはだけさせたまま完全に恐怖で脳がバグり散らかしていたアリアちゃんが、涙目で叫びながら前に飛び出た!
「もうこれしかないんだよォォォ!!! マモル様、ボクは絶対に裏切らないから世界を滅ぼすのだけは勘弁してぇぇぇえええ!!!(※本日2度目の大号泣特攻)」
ピキィィィィィィン!!!
アリアちゃんは、激怒して村を更地にしようとしていたキアラちゃんに向けて、正面から【強制睡眠魔法】をダイレクトにブッ放したのだった!
「ふぇ? 師匠、またこれ……うにゃん……っ!?」
目の前で地魔法を練り上げていたキアラちゃんは、至近距離からの大魔導師の涙目の不意打ち魔法をまともに浴び、そのまま白目を剥いて粉砕されたトビラのガレキの上にバタンと再び完全気絶した。
アリアちゃんは涙目で汗をダラダラ流しながら、ガレキの上で眠るキアラちゃんを魔法の土の触手でガシッと抱きかかえ、そのままキアラの家へお持ち帰りしようと窓に足を掛けた。
その、まさに去り際の数秒の瞬間だった。
俺は人間の姿のまま、窓から飛び立とうとしたアリアちゃんの肩を後ろからガシッ!!!と力強く引き留め、耳元へ超低音のブラックボイス(※ただの真面目な相談)を吹き込んだ。
「おい、アリアちゃん。キアラちゃんを睡眠魔法で強制送還してくれて助かったよ。……だが、俺はお前と『3回目の作戦会議』を開いて、キアラちゃんのトカゲ嫌いをマイルドにする現実的なホワイト裏工作をじっくり話し合いたいんだ」
俺は、本日最後となる2回目の擬態制限時間のタイマーがカチカチと減っていくのを見つめながら、爽やかなイケメン笑顔(※アリアちゃん視点では無慈悲な魔王の微笑み)を浮かべて畳みかけた。
「お前、キアラちゃんを送り届けたら、今夜リザードマンの大集落にある『俺の部屋』に来い。いいな?」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃッッッ!!!!(※ガクブル最大瞬間風速)」
アリアちゃんはルビーの瞳をこれ以上ないほどバキバキに血走らせ、白目を剥いて泡を吹きそうになりながら、激しく首を縦にヘドバンさせて完全服従を誓った。
(……ひ、ひぃぃぃ!!! ボクがキアラを連れて逃げようとしたから、マモル様に完璧に先回りされてガシッと引き留められた……っ! しかも『今夜、夜のトカゲ村の完全な密室に夜這い強制指定』だなんて……っ!
『お前への前払いの国宝級ウロコの分まで、お前のエルフの肉体を生贄に捧げて、3回目のサバトを今夜じっくり執行してやる。もし来なかったらこの村を更地にして滅ぼすぞ』っていう、逃げ場のない【恐怖の深夜残業呼び出し】なんだわァァァアア!!!涙)
「は、はいぃぃ! もちろん喜んで夜のトカゲ村の魔王様のお部屋へ伺いますぅぅぅ! 命だけは助けてぇぇぇ!!」と心の中で血の涙を流しながら、アリアちゃんはキアラちゃんを小脇に抱えて音速のスピードで窓から人間の村の方向へとマッハで去っていった。
キーン……!!
アリアちゃんが飛び去っていったせいで、粉砕されたトビラの大穴から激しい衝撃波だけがヒューヒューと室内へ虚しく吹き込んでくる。
トビラも壁も粉々にブチ壊され、防犯性ゼロになった宿屋の空き部屋に一人ぽつんと取り残された俺は、夕方になり人間の姿を完全に使い果たしてトカゲ戻りの時間を迎えつつも、静かに心の中でため息をついた。
(なんでお前が勝手に魔王の深夜残業呼び出しだと思ってパニック大暴走してんだよ!! 俺はただ単に『お互いに一番人間が来なくて安全な大集落の俺の部屋で、真面目にトカゲ嫌い対策の作戦会議を開こう』って常識的な提案をしただけなんだよバカヤローッ!!!)
俺の不器用すぎるイケメンフォローとアリアちゃんの襟元お色気大暴走、そしてキアラちゃんの喜びのトビラ物理爆破のせいで、人間の村の宿屋を舞台にした『第2回・秘密作戦会議』は、深夜の『第3回トカゲ村作戦会議』の強制予約という最悪の不穏な引きを残して幕を閉じた。
守のお買い物隠密スローライフは、アリアちゃんが(今夜の魔王様との3回目の夜の儀式に向けて、ボクがもっと命がけの裏工作を用意しなきゃ……っ!涙)とめらめらと自己犠牲の炎を燃え上がらせるなかで、もはや神様でもコントロールできない泥縄へと、容赦なく突き進んでいくのだった。
いつも『トカゲにモテても嬉しくねぇ!』をお読みいただきありがとうございます!
毎日たくさんの方に読んでいただき、PVの数字が増えるだけでも本当に嬉しくて日々の励みになっています!
そんな皆様に感謝を込めまして、明日金曜日から日曜日までの週末限定で、いつもの時間に加え、21時20分にもう1話追加して1日3話でお届けします!
「週末が楽しみ!」「ちょっと面白いかも」「続きが気になる」と思ってくださったら、画面下の【ブックマークに追加】や、【評価の☆☆☆☆☆(星)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!
よろしくお願いいたします!
(次回更新:明日12時20分!)




