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第47話 お昼のテラスのハレンチ夢悶絶と、沼地の大イカ大拒絶

「マモル……さん……ッ!?」


東の空から、今日最初の擬態ストックが復活する『夜明けの朝日』が差し込み、俺がベッドの裏から人間の少年のイケメン姿にポップアップ大復活をキメた、まさにその直後のことだった。

ゼロ距離から俺の鼻面に爆弾レベルの地魔法の銃口を構えて大パニックを起こしていたキアラちゃんは、俺の姿を見るなり最新の杖を放り出し、俺の胸の中へと全力で飛び込んできて子供のように大号泣した。


だが、ひとしきり泣いて落ち着いたキアラちゃんは、涙を拭いながら、不思議そうに首を傾げて部屋の状況(※天井大爆破済み)を見渡した。


「マモルさん、無事で本当によかったです……! って、ところで私たちは、何故こんなトカゲの村のベッドの上にいるのかしら……?」


(ヤ、ヤバい……!! 我に返った知性派のエリート分隊長に、昨夜からのタイムラインの矛盾を追及されたら俺の正体バレ即死イベントが始まるーーーッ!!)


俺が背中に滝のような冷や汗を流して激しく動揺した、そのコンマ数秒の瞬間だった。


「キアラ、お疲れ様! とりあえず一回寝ようねっ!!」

「ふぇ? 師匠……? ひゃんっ!?」


横でガクブル震えていたアリアちゃんが、これ以上の正体バレによる世界滅亡を防ぐため、自慢の杖を振るって【強制睡眠魔法】をキアラちゃんに直撃でブッ放したのだ。

アリアちゃんは白目を剥いて前のめりに倒れたキアラちゃんを魔法の土の触手でガシッと抱きかかえると、「マモル様ァァァ! ボクは絶対にチクらないから世界を滅ぼすのだけは勘弁してぇぇぇ!!涙」と俺に涙目の命乞いをして、そのままマッハのスピードで人間の村のキアラの家へと彼女をお持ち帰りして大敗走していった。


「……いや、助かったけどさ」

壊されっぱなしのトビラの大穴からキーンと吹き込んでくるソニックブームの湯気を見つめながら、早朝の人間の村に用事など何一つない俺は大トカゲの姿に戻り、魂の底から血涙を流して崩れ落ちた。


(もったいねぇぇぇえええバカヤローッ!!! 朝一番の貴重な本日『1回目』の3時間擬態枠、キアラちゃんを睡眠魔法で強制送還するまでの、わずか数分間しか使ってねぇのにもう消費しちまったじゃねぇかァァァ!!!)


擬態魔法を途中で解いた俺は涙目で不器用に前足をパタパタさせながら安全な我が家のベッドでふて寝を兼ねた優雅な二度寝をキメることにしたのだった。


そのおかげで、午前中のうちに『3時間の魔力インターバル』をスッキリと綺麗に消化し終えた俺は、本日『2回目』の、今日最後となる最後の変身枠をフルチャージの状態で発動。


キアラちゃんを待たせることなく、いつものお昼のジャストなランチタイムに、完璧な余裕の笑顔で人間の村の馴染みのカフェのテラス席へと現れることができたのだ。


「マモルさん! 今日もいつものお昼ご飯に付き合ってくださってありがとうございます!」


テラス席で待っていてくれたキアラちゃんが、俺(人間姿)の姿を見つけるなり、極上の癒やしの笑顔で迎えてくれた。 だが、彼女はすぐにサンドイッチを前にして、顔面から「プシューーーッ!!」と物凄い湯気を噴き出して猛烈に大赤面し始めた。


「うぅ、マモルさん、師匠……。私、エリート防衛隊員として、昨夜から今朝にかけて、あまりにも破廉恥で刺激的すぎる【最低のリアルな夢】を見てしまいましたわ……っ!!」


キアラちゃんは両手で真っ赤になった顔を覆い、ルビーの瞳をトロンと潤ませて大絶叫した。


「今朝、自分の部屋のベッドで目が覚める直前なのですが……私、夢の中で、なぜか頑丈な目隠しをされ、身動きが取れないように縄縛りにされたミノムシの体勢のまま、トカゲの村の最奥でマモルさんにキスを求めていたんですわ……っ!おまけに途中で目隠しが外れたら、目の前に巨大な不衛生トカゲがいて地魔法で天井を爆破した後、マモルさんに情熱的にギギューッと抱きついてハグをするだなんて、よく分からないけれどどこまで破廉恥で刺激的な夢なのかしらァァァッ!!!♡(大悶適)」


(キアラちゃん、それ夢じゃなくて100%ガチの現実(さっきの出来事)なんだってばァァァ!!! 自分で自分をミノムシにする変態じゃなくて、お前の隣で引きつった笑顔を浮かべてるアリアちゃんにガチで寝込みを襲われて生贄として拉致監禁され、その後に睡眠魔法で強制送還されただけなんだよ!!!)


しかし、知性溢れる次期隊長候補が「最悪の嫌な夢(※ただしマモルさんとハグできて嬉しくて悶絶中)」として勝手に脳内で自己完結してくれたおかげで、俺の正体バレ即死イベントは完璧に泥縄セーフとなった。

キアラちゃんが「頭を冷やすために、今からお店の奥で冷たいお水を取ってきますわ!」と大赤面のまま席を外した、その数秒の隙だった。


俺は、横でカバンを固定して大事そうに抱きしめて死ぬ気でガクブル震えているアリアちゃんの真横へとスッと腰掛けた。 そして、今朝俺の皮膚からポロポロと剥がれ落ちたばかりの、まばゆい漆黒の脱皮鱗(国宝級)数枚を、テーブルの上に「ホイッ」と気前よく大盤振る舞いでチップ代わりにプレゼントした。


「おい、アリアちゃん。とりあえず今朝はキアラちゃんを睡眠魔法で連れ帰って、大惨事を防いでくれて助かったよ。これ、そのおチップね。……でさ、1回真面目に作戦会議をしたいんだけど、キアラちゃんのトカゲ嫌いをマイルドにする良いアイデア、国一番の大魔導師のお前なら何か思いつかないかな?」


俺にとってはただのタダで剥がれるフケみたいなものなのだが、それを受け取ったアリアちゃんのルビーの瞳が、恐怖と物欲で血走った。


(……ひ、ひぃぃぃ!!! 『アリアちゃん』って爽やかな可愛い笑顔でちゃん付けしながら、国宝級の鱗の山を居酒屋のチップみたいに大盤振る舞いで貢いできた……っ!!!

ボクへの先行投資だ、前払いで残業代は満額払ってやったぞ、さあ、俺のこの国宝級の恋活を実らせる裏工作を今すぐ開始しろっていう、逃げ場のない最強の圧力なんだわァァァ!!!涙)


アリアちゃんは涙目でウロコを秒速でカバンに回収すると、「わ、分かったよマモル様! ボク、世界平和のために、全力で知恵を絞ってキアラのアンチ感情をへし折る作戦を考えてあげるからねっ!!」と完全イエスマンとして腹を括った。


「マモルさん、お待たせしましたわ♡」

お水を持って戻ってきたキアラちゃんに向かって、アリアちゃんは国宝級ウロコの対価を支払うため、涙目で必死に自作したトカゲのステマ(無茶振り)を大絶叫し始めた。


「キ、キアラ! お前がさっき言ったその『ハレンチなハグの夢』だけどね、ボクは大魔導師として確信したよ! トカゲ、特にあの『一族の漆黒の番犬トカゲ(俺の本体)』のゴツゴツした頑丈な皮膚はね、人間が目隠しをして全身でハグすると、ツボが強烈に刺激されて最高に美肌になれる【伝説の天然ウロコエステマッサージ】なんだよぉぉぉ!!!(涙目の必死さ)」


(作戦会議したばっかりなのに、一発目からどんなトチ狂った嘘八百を並べ立ててんだよアリアちゃん!!! トカゲの鱗なんてただのゴツゴツした魔導素材であって、美肌エステの効果なんて1ミリもねぇよ!!)


師匠の言葉をいつもなら100%信じるキアラちゃんだったが、今回ばかりは一瞬で顔面を恐怖で引きつらせ、ゾクゾクゾクッ!!!と全身に特大の鳥肌を立てて、イスごとガタバシッと後ろへ飛び退いた!


「い、嫌ですわァァァ!!! いくら師匠の言葉でも、それだけは絶対に、断固拒否いたしますわァァァ!!!」


キアラちゃんは涙目で全力の拒絶を叫ぶ。


「あんなゴツゴツしてて生臭くて気味の悪い化け物トカゲに目隠しをして抱きつくだなんて……っ!! それ、綺麗好きな女の子に『お肌の角質が綺麗に取れる極上のオーガニックエステですわよ♡』って笑顔で勧められて、ドブ臭い粘液まみれの【生きたスワンプ・クラーケン(沼地の大イカ)】を裸の胸元にギューッとハグさせられるようなものですわよォォォ!!! 吸盤が全身に吸い付くようなおぞましさで美肌になる前に脳が即死しますわァァァーーーッ!!!」


俺(人間姿)は引きつった笑顔のまま、心の中で血涙を流して叫んだ。


(例えのモンスターが最悪すぎるわ!!! っていうか何だよそのモンスター!? 俺、異世界転生してからまだ1頭もモンスター見たことねぇから『スワンプ・クラーケン』がどれくらい生臭いイカなのかさっぱり想像がつかねぇよ!!! 確かに前世の地球からしても、ドブ臭い巨大大イカを裸でハグさせられるのは気狂い沙汰の拷問だけど、俺の正体、キアラちゃんの中でどこのぬめぬめクリーチャーに格付けされてんだよォォォオオ!!!(※涙目の精神的即死))


キアラちゃんへの正体バレ即死の恐怖と、沼地の大イカと同格に格付けされた俺の尊厳の崩壊。

本日2回目となる今日最後の擬態制限時間のタイマーがカチカチと無慈悲に減っていくなかで、俺は冷や汗を流しながら、この後、キアラちゃんに怪しまれないためだけに借りている「人間の村の宿屋(空き部屋)」へとアリアちゃんを緊急で連れ込み、最悪の第二の密室修羅場サスペンスを強制始動させるための、次なる泥縄大作戦を必死に脳内で組み立て始めるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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(次回更新:本日18時40分!)

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