第39話 恐怖と物欲の奇跡の等価交換と、ガクブル美少女の秒速ウロコ強盗
「ひえっ、まだ足りませんか!? これならどうじゃ!」「これで交易を許してくだされー!」
本来のガチトカゲ姿の長老トカゲ(渋い老竜)が、涙目で【1枚で人間の町に豪邸が建つ、光の聖女エルシエラの最高級の白い脱皮ウロコ】 を、お詫びのおかわり(菓子折り)としてアリアちゃんの目の前にバサバサバサッと大盤振る舞いで追加し始めた、マモルの部屋。
華奢で小柄なエルフの少女であるアリアちゃんの、実に2倍近い身長を誇る俺(漆黒の大トカゲ姿)や風の戦士長(ゼフィラの親父) 、そして廊下や窓の外をギチギチに埋め尽くした【数百頭のガチ巨大トカゲの軍勢】の無言のプレッシャー(※ただの買い出し出禁ペナルティへの恐怖)を前に、アリアちゃんの脳内は、完全にチビり散らかしたパニック状態で大爆発を起こしていた。
(……くっ! 目の前にあるのは豪邸が数十棟建つレベルの世界最高峰の魔導素材……! 喉から手が出るほど欲しい……! でも、ボクが今ここでこの国宝級の山を強奪しようとした瞬間に、ボクの肉体がこの2倍近いバケモノどもにデコピン一発でミンチにされる……っ! 命とウロコ、どっちが大事なんだボクはァァァ!!!)
人間の100倍強いはずの大魔導師アリア・クブル。しかし、圧倒的な野生の格の違いの前に完全に心がポッキリと折れ、生命の危機を察した彼女は、冷や汗で全身をビショビショに濡らしながらも、キリッと偉そうな大賢者の顔(大嘘)を作って杖をキィィィンと鳴らした。
恐怖と物欲を脳内で等価交換させた結果、プライドだけは死守した、過去最高にバカバカしい『大人のドヤ顔超理論』を弾き出したのだ。
「……フン、なるほどね。よく分かったよ、キアラ。ボクの国家最高峰の鑑識眼によって、この哀れなトカゲたちの『呪いの正体』がすべて完全に看破できた。……この呪いは、ボクが思っていたよりも遥かに根が深すぎる。今すぐボクの最強魔法でそのウロコをベリベリに剥離しようとすれば、あまりの魔力反動の衝撃で、この村の全区画ごと爆発四散(※ボクが一瞬で肉片にされる)してしまうだろう。それはボクの本意ではない」
「ええっ!? 呪いが強力すぎて、師匠でも今すぐ解くのは危険なのですか……!?(大感動・大勘違い)」と、キアラちゃんがルビーの瞳を潤ませて手を合わせる。
「あぁ。だからボクは、この健気なトカゲたちが差し出してきたこの白いウロコの山(※菓子折りおかわり)を、一時的に『呪いの進行を抑えるための担保(研究素材)』として【戦略的に回収】してあげることにしたよ。ボクほどの慈悲深い大賢者になれば、可哀想な彼らを見捨てたりはしないからね。……さあキアラ、今日のところはこれで一旦人間の村へ帰還するよ! 決してボクが2倍近い化け物たちにビビって今すぐお家(安全圏)に帰りたいわけじゃないからね!!」
アリアちゃんは、恐怖で両手がプルプルと激しく震えているのを隠しながら、もの凄いハイスピードで豪邸ウロコの山を自分のカバン(マジックバッグ)へシュババババッ!!と秒速で回収した。 物欲の、完全勝利であった。
長老トカゲたちは、アリアちゃんがウロコを全てカバンに詰め込んだのを見て、「フシュゥゥゥ……(※おお、お土産のウロコをすべて満額で受け取って、怒らずに帰ってくれるようじゃな! 交易の服やお菓子の買い出し出禁ペナルティは完全に回避できたぞい! 良かった、本当に良かったのぅ……涙)」と、嬉しさのあまり涙を流してガチトカゲの手足をパタパタと大きく叩いて喜びを表現した。
だが、それを見たアリアちゃんの心臓は、完全に爆発寸前に陥った。
「ひ、ひぃぃぃ! 化け物どもの軍勢がウロコを回収したボクを包囲したまま、さらに狂ったように手足をバタバタさせて威嚇(※ただのホワイトなお見送り)してる!! 殺される、今すぐ帰るゥゥォオオ!!」
アリアちゃんはキアラちゃんの手をガシッと掴むと、「じゃ、じゃあねおじいさんトカゲたち! 担保は確かに預かったよ! 達者でね!」と涙目で叫んだ次の瞬間、人間の100倍の魔力のすべてを『逃走(身体強化魔法)』に全振りして、音速を超えるもの凄まじいスピードで、キアラちゃんを引きずりながら人間の村の方向へと爆走して去っていった。
大集落の入り口からキーン!!とソニックブームの激しい衝撃波だけが虚しく室内に吹き込んでくる。
我が家のベッドの上で、元の真っ黒な大トカゲ姿のままの俺が、白目を剥いて魂の底からツッコんだ。
(誰も威嚇してねぇよ!!! 長老たちはただ単に『お土産(菓子折り)を全部受け取ってくれて、服やお菓子の交易が守られて良かったのぅ』って常識的なホワイト営業お見送りをしてただけなんだよ!!
っていうかアリアちゃん、恐怖と物欲を完璧に等価交換させて、豪邸が数十棟建つレベルのエルシエラのウロコだけはキッチリ満額で回収していきやがったぞ! どんな最強に図太いお通夜マッドサイエンティストだよバカヤローッ!!!)
村中総出の規格外すぎるホワイトおもてなし包囲網によって、人間の100倍強いはずの大魔導師アリア・クブルを(別の意味で)完全に撃退することに成功した、俺の隠密スローライフ。
アリアちゃんが高級ウロコの詰まったカバンを大事に抱えてマッハで逃亡し、キアラちゃんの中で「トカゲたちを救うために国に帰って研究を始める健気な師匠」として完璧に大勝利ストーリーが継続するなかで、物語はいよいよ、マモルがこのトカゲ姿のままでキアラちゃんへの不器用すぎるアプローチを試みなければならない、さらなる大混乱の日常へと、容赦なく引きずり込まれていくのだった。
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(次回更新:本日21時20分!)




