第38話 村中総出のホワイト包囲網と、豪邸が建つウロコの押し売りデスゲーム
まばゆい金髪とツンと尖った耳を持つ、キアラちゃんの偉大なる地魔法の師匠――アリア・クブル(見た目ロリエルフ美少女・人間の100倍強い大魔導師)の杖が、俺の鼻先数センチのところでガチガチと音を立てて完全に静止していた。
小柄な彼女の2倍近い身長を誇る俺(漆黒の大トカゲ姿)から漏れ出る、黒の王としての圧倒的な野生の格の違い。さらにトビラの大穴からぬっと現れた、同じく2倍近い巨体の風の戦士長(ゼフィラの親父)。そしてお昼に変身が切れてガチトカゲ姿に戻ったトカゲヒロイン4頭。
彼らに狭い自室をギチギチに包囲され、アリアちゃんの額からは滝のような冷や汗がドバドバと吹き出していたが、そこへさらなる大ポカ(パニック)が廊下の奥からドス、ドスと地鳴りを立ててやってきた。
「フシュゥゥゥゥウウウ……(※いったい何の騒ぎですかな? って、また防衛隊のキアラ様ですか!?)」
現れたのは、人間の不穏な魔法の気配を察知した、本来のガチトカゲ姿(灰色のウロコを持つ2.5m級の老竜)の長老トカゲたちだった。
長老たちは、昨夜ウロコの菓子折りを渡して穏便に帰ってもらったはずのキアラちゃんが、朝からまたしても物騒なエルフを連れて村の最奥(王の部屋)で魔法をバチバチさせているのを見て、本気で顔面を真っ白(トカゲ面)にさせた。
(大変じゃ! 昨夜あれだけ低姿勢にお詫びしたのに、まだ人間の怒りが収まっとらん! ここでお得意様を怒らせたら、お菓子や可愛い服の健全な交易が永久に出禁になって、村のウロコ経済が破滅(交易滅亡)してしまうぞい!!)
長老のただごとではない悲壮な気配を察し、大集落中のリザードマンの大人や戦士たち――アリアちゃんの2倍近い巨体を持つガチトカゲたちが、「なんだなんだ? 人間のお得意様がまた怒って殴り込みに来たのか?」「交易ルールを守るために、総出でおもてなし(命乞い)しなきゃ!」と、廊下の奥、窓の外、屋根の上まで数百頭の規模でゾロゾロと大集結。
気づけば視界のすべてが、アリアちゃんの2倍近いサイズのゴツゴツした巨大な爬虫類の軍勢によってびっしりと埋め尽くされ、エルフの大魔導師の退路は物理的に100%完全消滅していた。
アリアちゃんのルビーの瞳から、恐怖のあまりガチの涙がボロボロと溢れ出る。
(嘘……でしょ……? 部屋の中だけじゃなくて、この村の住人、数百頭全員がボクより強い化け物の軍隊なんだけどォォォ!!!? ボク、今ここでウロコを1枚でもベリベリに剥ぎ取ろうとした瞬間に、この村ごと塵一つ残さず物理的にミンチ(圧殺)にされるわァァァ(大絶望)!!)
人間の100倍強いはずのアリアちゃんがガクブルとリアルな恐怖で引きつっているのを、長老トカゲは「ウロコ(昨夜のお詫び)の量が足りなくてブチ切れている」と120%大勘違いした。
長老はプルプルと短い前足を震わせながら、一族の最奥に眠るとっておきのお宝――【1枚で人間の村に豪邸が建つ、光の聖女エルシエラ様の最高級の白い脱皮ウロコを、菓子折りおかわりとしてアリアちゃんの鼻先にガッと差し出した!
「フシュ、フシュゥゥゥ……!(※キアラ様、アリア様! これ! これを差し上げますから、どうか本日のところは、これでお怒りを鎮めて穏便にお引き取りくだされーーーっ!)」
あまりの国宝級の超お宝素材の輝きに、素材マニアであるアリアちゃんのルビーの瞳が飛び出しかけた。
だが、周りを取り囲む2.5m級のガチトカゲたちの無言のプレッシャー(※ただの買い出し出禁への恐怖)が恐ろしすぎて、アリアちゃんはビビり散らかしてどうしてもそのウロコを震える手で受け取ることができない。
それを見た長老は、さらに顔を真っ青にさせた。
「フ、フシュゥゥゥン!?(※ひえっ、豪邸が建つウロコ1枚では、まだお怒りが足りませんか!?)」
長老トカゲは涙目になりながら、「これならどうじゃ!」「これで交易を許してくだされー!」と言わんばかりに、さらに『豪邸が建つウロコ』を2枚、3枚、4枚と、アリアちゃんの目の前にバサバサバサッと大盤振る舞いで追加し始めたのだった。
キアラちゃんだけが満面の笑顔で大感動している。
「師匠! 見てください、泥棒猫に脅されている被害者のトカゲたちが、師匠の大魔法(※ただの恐怖の引きつり)に本気で感動して、お詫びのおかわりをこんなに山盛りに捧げていますわ……!」
アリアちゃんは、目の前に次々と積み上げられていく「豪邸がボコボコ建つレベルの白いダイヤモンドの山」を見つめつつも、周囲の化け物トカゲたちの視線に怯え、(……い、いまさらこんな国家予算規模の山(菓子折り)を貰っても、ボク、生きて人間の村へ持って帰れる自信が1ミリもないんだけどォォォオオ!!!)と、最新の杖をプルプル震わせながらお通夜の顔で硬直するしかなかった。
(長老たち、おもてなし(菓子折り)の圧力が強すぎて、アリアちゃんの顔が『全財産を強盗に脅し取られた被害者のおじいちゃん』みたいな絶望の表情になってんじゃねぇかァァァ!!! お互いに恐怖でガタガタ震えながら、街に豪邸が建つレベルの超高級ウロコの押し付け合い(等価交換デスゲーム)をしてんじゃねぇよバカヤローッ!!!)
村中総出の規格外すぎるホワイトおもてなし包囲網と、差し出されるエルシエラの最高級豪邸ウロコの波状攻撃。
ただの真っ黒な大トカゲ(王)に戻ってしまっている俺の隠密スローライフは、アリアちゃんが物欲とガチの生命の危機の板挟みで完全に魂が崩壊していくなかで、もはや誰にもコントロールできない膠着状態へと突入していくのだった。
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(次回更新:本日20時20分!)




