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第37話 戦士長の無言の圧力と、遅れてきた大魔導師の冷や汗

「あはは、最高じゃないか! 今すぐ私の地魔法で、この大トカゲ(俺)の全身の皮膚を1枚残らずベリベリに引っぺがして、私の最高位の魔導具のコレクションにしてやるォォォオオ!!」


まばゆい金髪とツンと尖った耳を持つ、キアラちゃんの偉大なる地魔法の師匠――アリア・クブル(見た目ロリエルフ美少女・人間の100倍強い大魔導師)が、俺の『国宝級ウロコ』を前に理性を完全に大爆発させ、最新の土魔法の陣をバチバチと展開した、次の瞬間だった。


ピキィィィィィィン……!!!


「……っ!?」

突き出そうとしたアリアちゃんの杖が、俺の鼻先数センチのところでガチガチと音を立てて完全にフリーズした。


この国では誰も敵う者がおらず、圧倒的な自信に満ち溢れていたはずのアリアちゃんの額から、滝のような冷や汗がドバドバと吹き出していく。エルフの大魔導師としての五感が、我に返って冷静に魔力測定を察知した瞬間、脳内に最大級の警戒警報が鳴り響いたのだ。


(……ま、待って。さっきは国宝級のウロコの美しさに見惚れてて脳内麻薬のせいで一瞬気付かなかったけど……このベッドの上の黒いの、ボクたち人間とは生物としての次元が違いすぎる。この国で最強って言われてるボクより遥かにヤバいオーラを、ただの呼吸フシュゥゥゥで放ってるんだけどォォォ!!!?)


アリアちゃんが精神的にフリーズしかけていると、さらに我が家の壊されたトビラの大穴から、地鳴りのような重低音ボイスが響き渡った。


「フシュゥゥゥゥゥウウウオオオ……(※ウチの娘の部屋の方向から、人間の不穏な土魔法の気配がするんじゃが……)」


ぬっ、と現れたのは、娘のゼフィラの危機を察知して駆けつけてきた、風の部族の戦士長(ゼフィラの親父)だった。

華奢で小柄なエルフの少女であるアリアちゃんの、実に2倍近い身長を誇る圧倒的な巨体。 天井にトゲトゲしいツノをギチギチに擦り寄らせるその質量は、まさに野生の筋肉の壁そのものだった。


それだけでなく、親父の後ろからは、お昼前に人間の村で無事にタルトの弁償お買い物を終えて擬態のバッテリーが完全に切れ、本来のガチトカゲ姿に戻ってお留守番していたゼフィラやガルダたち4頭までもが、ゴツゴツした巨大な爬虫類の顔を「ぬっ」「ぬっ」とハミ出させて部屋を覗き込んできた。


アリアの2倍近い身長を誇る漆黒の大トカゲ(俺)に、同じく2倍近い身長の風の戦士長、

さらに一騎当千の巨大トカゲ4頭。

狭い部屋の入り口が、野生の筋肉と凶悪なウロコに満ち溢れた『ガチ巨大トカゲの群れ』によって物理的にギチギチに包囲されてしまった。

アリアちゃんのルビーの瞳が、恐怖で過去最高に血走り始める。


(嘘でしょ……!? ボクの2倍近いサイズの化け物の群れに完全に密室で包囲されたんだけど!? 手を出したらボク、国家最高峰の地魔法を放つ前に、1秒で物理的に噛み砕かれて肉片にされるわァァァッ!!(ガクブル))


実力は完全にトカゲたちの圧勝である。だが、俺(黒の王)をはじめ、戦士長の親父もガルダ(ガチ姿)たちも、1ミリもアリアちゃんを攻撃することができなかった。


(ひ、ひぃぃぃ! あの金髪のエルフ、人間にしては生意気に魔法をバチバチさせてるけど……ウチの親父がキレてあの小娘(国一番の大魔導師)をちょっとでも小突いて傷つけたら、人間の村との和平が完全に崩壊して、アタシたちの人間の可愛いお洋服やお菓子の買い出しが永久に出入り禁止(交易滅亡)になってお母様にリアルに爪研ぎの刑にされるっす(わ)ーーーッ!!)


買い出し出禁ペナルティの恐怖のせいで、アリアの2倍近い巨体トカゲ全員が、アリアちゃんを傷つけないように、でも国宝級ウロコを剥がされないように、プルプル震えながら「無言のホワイトおもてなしディフェンス(ただの恐怖の威圧感)」で必死に耐え忍ぶという、最悪の等価交換縛りが発生していた。


この、お互いに別の恐怖(ガチ即死 vs お買い物出禁)でガタガタと震え合っている極限の膠着状態の真ん中で、何も知らないキアラちゃんだけが、満面の笑顔でアリアちゃんを応援してきた。


「師匠! さすがは国一番の大魔導師様です! あの師匠の2倍近くもあるおぞましい番犬トカゲたちの凶悪な威圧感(※お買い物出禁へのビビり)にも、ガタガタと武者震い(※ガチの恐怖の震え)で応えていますわ……っ! さあ師匠、その大魔法で、あの看守トカゲたちの国宝級ウロコをベリベリに剥ぎ取って人間に救い出してあげるのです……っ!!(涙)」


アリアちゃんのルビーの瞳から、ボロボロと悔し涙(恐怖)が溢れ出る。


(キアラお前バカかァァァ!!! 応援すんじゃねぇ!! ボクが動いた瞬間にあの2倍近いの黒いのと緑色のやつに物理的に圧殺されるんだけどォォォオオ!!! そもそもボクが着ているこの胸当て、目の前のトカゲの親父のウロコじゃねぇか! 本物の前で偽物の魔法が通じるわけないだろバカーーッ!!!)


(キアラちゃん、お前のその健気な特攻命令のせいで、人間の100倍強いはずのアリアちゃんが『自分の2倍近い化け物の群れの前に引けなくなった特攻兵』みたいな顔になって涙目で杖をプルプルさせてんじゃねぇかァァァ!!! お互いに実力は隠して、お買い物ルールを守るために『無言のウロコガードにらみ合いサスペンス』をしてんじゃねぇよバカヤローッ!!!)


俺がベッドの上で滝のような冷や汗を流して白目を剥くなかで、自分より2倍近い巨体たちに包囲されたエルフの大魔導師が涙目でフリーズし続ける、極限の『密室ウロコ防衛にらみ合いレース』のゴングが静かに鳴り響くのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:本日19時20分!)

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