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第30話 深夜のリアル置物耐久レースと、涙の張り込み防衛戦

「誰もここから一歩も動くんじゃないわよ!!」


お腹パンパン(胃袋暗殺状態)で今すぐ激しく動けないキアラちゃんが、長老たちの用意した大きな椅子に深く腰掛けたまま、最新の杖をガッと構えて『徹夜の張り込み(籠城検問)』を宣言した、昼下がり。


長老の椅子の裏で『真っ黒な大トカゲ(リザードマン姿)』のまま固まっていた俺(草壁守)をはじめ、木箱の影から露出したガルダ(火)やゼフィラ(風)たち4頭のリアル巨大トカゲたちは、キアラちゃんに「動いたら泥棒猫の仲間として即座に圧殺するわ!」と据わった目で睨まれているため、広場の真ん中で【ガチのリアルなトカゲの置物のフリ】をして1ミリも動けずにピキピキと固まっていた。


(じ、地獄すぎる……! 次の日の夜明けに日付変更リセットが発動して人間に戻れるようになるまで、俺たち、キアラちゃんの目の前で一晩中この無様な爬虫類ポーズのまま耐えなきゃいけないってことじゃねぇか!! ウロコが、ウロコが痒くても尻尾ひとつ動かせねぇよ!!)


俺が内心で冷や汗を流して白目を剥いていると、無情にも時間は過ぎ去り――やがて美しい夕陽が沈みかけた、夕暮れ時。

キアラちゃんに「仲間から見捨てられた泥棒猫の残党」として、杖をその胸元に直撃で突きつけられて尋問されていた、人間姿(銀髪美少女)のエルシエラ(光の聖女)のタイマーが、ついに残り10分の限界を迎えた。


朝から俺や4頭に魔力を連続譲渡(前払い)し続けたせいで、チートな彼女のバッテリーもここで底を尽きかけたのだ。

制限時間のバッテリーが極限まで不安定になったせいで、キアラちゃんの目の前で立たされているエルシエラの白くて美しい首元や手の甲から、ガチの白竜のウロコが『ザザザッ……ザザザッ……』と物理的に浮き出しかけていた。


長老の椅子の裏からそれを見ていた俺(大トカゲ姿)は、心臓が口から飛び出そうになりながら大パニックになった。


(ひえっ!? ヤ、ヤバい、キアラちゃんの目の前で光の女のウロコがボロ出しになりかけてる!! バレたら俺の正体もろとも一発で全員即死(終了)だァァァッ!!!)


俺は焦りのあまり、トカゲの手足をバタバタと必死に動かして(おいエルシエラ! ウロコが出てる! 何とかしろ!!)と無言の猛烈なジェスチャーを送り、自分の太い尻尾を必死に伸ばして、キアラちゃんの視界から彼女のウロコを隠そうと大慌てで大立ち回りを始めた。


だが、当のエルシエラは、ウロコが露出しかけているというのに、焦るどころかルビーの瞳をトロンと潤ませ、頬を赤らめてこれ以上ないほど嬉そうにうっとりと微笑んでいる。


「ふふ……マモル様がわたくしのウロコを、そんなに必死な顔で熱く見つめてガードしてくださるなんて……♡ 幸せですわ……♡」


(嬉しそうに余韻に浸ってんじゃねぇよバカヤローッ!!! 緊迫感の温度差がバグってんだろ!! 早く神聖魔法か何かでウロコを引っ込めろォォォオオ!!!)


俺が俺の太い尻尾でエルシエラの体を必死に遮ろうとパタパタ暴れていると、その不審な大トカゲの動きに、お腹パンパンのキアラちゃんがハッと目を剥き、杖をガッとこちらへ構え直した。


「――何をしているの看守トカゲ!! さっきから不気味に手足をバタバタさせて、あの仲間から置き去りにされて人質になった可哀想な銀髪の女のエルシエラを、尻尾で威嚇して怯えさせているんだわ……っ! 泥棒猫の片棒を担ぐおぞましい爬虫類め、それ以上彼女をいじめるなら私の地魔法で消し炭にしてあげるわよ!!」


(近い近い近い!!! 威嚇じゃなくて必死の隠蔽工作(身内を庇う介護)なんだってば!! あとエルシエラは1ミリも怯えてねぇよ、俺の尻尾のガードを特等席みたいに満喫してウットリしてんだよ!!!)


キアラちゃんの杖による凄まじい威嚇の覇気に射すくめられ、俺は涙目で完全にフリーズするしかなかった。

幸い、俺の必死の尻尾ガードのドタバタが目隠しになり、キアラちゃんにウロコを直視されることはギリギリで防げたものの、直後に――。


――ピピッ。制限時間終了。本来の姿へと強制定時退社(送還)を行います。


シュゥゥゥゥウウウ……!!!

ドカン!!!と、擬態解除を告げる純白のラノベの光が大爆発し、次の瞬間、そこには人間姿の銀髪美少女の姿はなく――神聖な白いウロコを持つ『ガチの白竜姿(等身大トカゲサイズ)』へと強制送還されたエルシエラの姿があった。


目の前で最後の人間(泥棒猫の残党)までが一瞬にしてトカゲに変身したのを目撃したキアラちゃんは、ショックのあまり大粒の涙を流し、杖をガたがたと震わせながら最悪の『邪教呪い魔法超理論』を大爆発させた。


「……な、なんてこと……! 私に置いていかれて可哀想だと思っていた、あの銀髪の女まで……! あの極悪非道な泥棒猫の本隊ども、私がこの村に居座っているのを知って、遠隔からさらに強力な呪いの魔法をブッ放して、身内であるはずの仲間の女の子まで、無理やりあのおぞましいトカゲの化け物の姿に変えちゃう呪いをかけたんだわ……ッ!!! どこまで、どこまで血も涙もない血に飢えた魔女たちなの……っ!!」


(違うんだキアラちゃん!!! 呪い魔法じゃなくてエルシエラ自身も最初からガチの白竜なんだよ!! 魔力の譲渡をやりすぎて夕方に綺麗に時間切れになって、元の白いトカゲ姿にお肌がゴツゴツに戻っただけなんだよ!!(位置関係上、エルシエラの本性もまたしても1ミリもバレずにセーフになったわァァァアア!!!))


「ひ、ひぃぃぃっす……キアラの魔法に当たるより、明日の朝、家に帰った後のお母様方の追加のオシオキ(家庭内制裁)の方が1億倍恐ろしいっす……っ!」

俺の横では、ガルダ(ガチトカゲ姿)が、お詫びとして限定イチゴタルトを消費させられた実の母親の怒りのオーラを思い出して、リアルなウロコをガタガタと激しく震わせていた。最強の集団が、実の母親の爪研ぎの刑の前にはただの怯える小動物と化していた。



やがて夜が更け、夜風が冷え込んできた深夜の静寂。

丸一日、ガチのトカゲの置物のフリをしてカチコチに固まり続け、全身のウロコと精神が限界を迎えていたその時。


泥棒猫の呪いでトカゲの姿に変えられた(と思われている)長老トカゲたちが、トカゲ本来の重低音ボイスで「フシュゥゥゥ……(※キアラ様、夜は冷えますから温かいカボチャスープと胃薬をどうぞ……)」と、ガチトカゲの短い手足で不器用にお盆をプルプル震わせながら、お腹が少し落ち着いてきたキアラちゃんへと夜食を運んできた。


本来なら大の爬虫類嫌いであるキアラちゃん。一歩間違えればトカゲの群れを直視した瞬間にショックで失神(発狂)してもおかしくない状況なのだが――そこは、我がリザードマン一族の命がけの『ホワイトおもてなし』が、奇跡のセーフティネットと化していた。


長老たちが運んできた長机の上の夜食は、お腹の満腹感を気遣った『超巨大なすり鉢サイズの大皿カボチャスープ』であり、それが物理的な壁となって、キアラちゃんの視界から奥のガチトカゲたちの生々しい姿を完璧に目隠ししてくれていたのだ。


おまけに、キアラちゃんがドヤ顔で着ている特注の胸当てには、ゼフィラの親父(風の戦士長)のウロコ粉末がガッツリ編み込まれている。

リザードマンの中でも上位の実力者である戦士長のウロコは、一般の個体とは一線を画す別格の防御力と精神安定の魔力を秘めているのだ。その戦士長のウロコの加護が、皮肉にもキアラちゃんの精神的ショック(SAN値減少)を無意識のうちにガチガチにガードし、彼女のメンタルを強制安定させていた。


(キアラちゃんがトカゲの真ん中で正気を保っていられるの、大嫌いなトカゲの戦士長のウロコ防具が、お前のメンタルを完璧に24時間セーフティガードしてくれてるおかげだからな!! あと、目の前のすり鉢カボチャスープのせいで俺たちの体が全然見えてねぇじゃねぇかァァァアア!!)


キアラちゃんは、呪いで不快なトカゲ姿にされて言葉も通じないのに、自分を気遣って巨大スープを運んでくれるおじいさんトカゲの健気さに、大皿の奥で大感動の涙を流していた。


「おじいさん……トカゲの姿にされて苦しいはずなのに、私にスープを……っ! 泥棒猫の備蓄だけど、いただきます……! んぐ、温かくて、冷えた体に染み渡るくらい美味しいわ……っ!! 安心してください、私は明日の夜明けまで一歩も動外ず、あの泥棒猫どもが戻ってきた瞬間にこの最新の杖で全員圧殺して、マモルさんとあなた方の呪いを絶対に解いてみせます……!!」


(もぐもぐすんなや!!! 結局おもてなし夜食を120%満喫して、ますます張り込みのモチベーションがギガマックスに燃え上がっちゃってんじゃねぇ加バカヤローーッ!!! 長老たちもトカゲの顔のまま『よく食べてくれるのぅ、おかわりの麦茶じゃ』みたいなノリで巨大スープを追加するんじゃねぇ!!)


やがて長い夜の闇が終わりを告げ、東の夜空がうっすらと白み始める、夜明け前。


丸一日、リアルなトカゲの置物のフリをして耐え抜いた俺の脳内に、ついにあの待ち望んだ世界のシステム音が鳴り響き始める。


――ピピッ。日付変更(日の出)まで、残り10分。これより本日分の『1回目』のカメレオン擬態魔法の再発動のスタンバイに入ります。



(朝が……朝が来る……!! ついに今日最初の変身タイマー枠が復活するぞ……!!)

俺は脳内で涙を流して大感動した。


だが、すぐ真横では、一晩中サボらずに杖を構え続けた重装備のキアラちゃんが、徹夜とおもてなし夜食バフのせいで目がさらに血走った状態で、不敵に笑っていた。


「……夜が明けるわね……さあ、泥棒猫ども、マモルさんを返しに来なさい……! 私の最大出力の地魔法で、塵一つ残さず消毒してあげるわ……っ!」

キアラちゃんが最新の杖に、最大出力の地魔法の魔力をバチッバチッと纏わせ始める。


(キアラちゃん一晩中おやつ食べながら起きてたからフルコンディション(戦闘モード)でスタンバイ完了しちゃってんじゃねぇか!! 朝日が昇って人間に戻れた瞬間、この殺意MAXのチョロインの目の前にどうやって何食わぬ顔でポップアップ(復活)すればいいんだよォォォオオ!!!)


本日の擬態ストックを全て使い切り、ただのトカゲに戻って丸一日を耐え抜いた俺たちの隠密スローライフは、朝日の日の出とともに訪れる『人間大復活・正体バレ即死デッドゲーム』の秒読みのなかで、究極の日の出を迎えるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:明日8時20分!)

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