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第3話 初めてのデートと、背景に溶ける緑髪美女

人間化の擬態魔法を使い、漆黒の髪と瞳を持つ人間のイケメン姿に変身した俺は、今日も人間の村の広場へとやってきていた。

目的はただ一つ。昨日出会った、世界で一番トカゲが嫌いな美少女――キアラちゃんとの再会だ。

「あ、マモルさん! 本当にまた来てくれたんですね」

人混みの中から、麦わら色の髪をなびかせたキアラちゃんが嬉しそうに駆け寄ってくる。


人間の女子の笑顔、柔らかい私服、漂う良い匂い。やっぱりここは最高の聖域だ。


「昨日はいきなり大声を上げて逃げちゃってごめん。お詫びに、あそこのカフェで何か奢らせてほしいんだ」

「ふふ、いいですよ。でも、『這い回る群れのボス』さんのお財布が空っぽにならないか心配ですけど」

「うっ、異世界語方言の件は勘弁して……」

そんな甘酸っぱいラノベのような会話をしながら、二人で歩き始めた、その時だった。


「――ちょっと待ちなさいよ。アタシを置いて、その貧相な人間のメスと何を楽しそうに密会してるのよ?」


背後から、凍りつくほど冷ややかで、だけど極上に美しい声が響いた。


振り返ると、そこに立っていたのは、見事なエメラルドグリーンの髪をツインテールに結った、誰もが振り返るようなスタイル抜群のクール系美少女だった。気品溢れる切れ上がった瞳に、モデルのような引き締まった肉体。


……が、その正体を俺は知っている。

風の部族の戦士長の娘――ゼフィラだ。


「ゼ、ゼフィラ!? お前、なんで人間の村に……」

「風の部族の索敵能力(鼻)を舐めないでよね。マモルが毎日、人間の姿になってコソコソ消えるから怪しいと思って付いてきてみれば……。信じられない、ウロコも翼もない、ツルツルの出来損ないみたいな女とイチャつくなんて、マモルの正気を疑うわ!」


ゼフィラは人間姿になっても、ツンとした態度で俺を睨みつけてくる。

見た目は最高なのに、吐くセリフが完全にリザードマンのそれだ。


「な、何よあなた……! マモルさんの知り合いなの!? っていうか、出来損ないってどういう意味よ!」

キアラが不機嫌そうに一歩前に出て、ゼフィラをキッと見据える。


「ハッ、人間風に名乗るならゼフィラよ。言っておくけど、アタシはマモルの『第一の番』になるメスなんだから、気安く近づかないでくれる?」

「つ、番……!? マモルさん、この派手な女の人は一体何なの!?」

キアラの目が一瞬で嫉妬と不信感に染まる。


「ち、違うんだキアラちゃん! コイツは故郷の、ちょっと頭の中がファンタジーな幼馴染で! 番っていうのはその、結婚を前提とした……って火に油を注いでるわ俺!!」


俺が必死に冷や汗を流しながら言い訳をしていると、キアラの爬虫類アンチのアンテナがピクリと反応した。


「……マモルさん。このゼフィラって人、さっきから怒るたびに、ツインテールが後ろのレンガの壁と全く同じ赤茶色に変色してるんですけど……気のせいですか?」

「げぇっ!?」


見ると、怒りで魔力のコントロールが乱れたゼフィラの髪の毛が、カメレオンのように背景のレンガの壁と同化して透明化しかけていた。


「ゼ、ゼフィラ! 髪! 髪がレンガになってる! 背景に溶けてるってば!!」

俺はキアラに見えないよう、必死に体でゼフィラを遮りながら小声で叫ぶ。


「な、何よ……! 人間の姿って魔力の維持が繊細で難しいのよ! ちょっと頭に血が上っただけじゃない!」

焦ったゼフィラが慌てて魔力を込め直すと、今度は背景の看板の色と同化して、エメラルドグリーンの髪が『本日のパスタ・5ゴールド』という文字模様に変色した。


「うわああああ! 髪がメニュー看板になってる! 完全に擬態のボロが出てるって!」

「……マモルさん、隠さないで見せてください。あの人、髪の毛が文字になったり消えたり、やっぱりどこか『トカゲ』っぽくて生理的に本当に無理です……!」

恐怖で顔を青ざめさせるキアラちゃん。


トカゲたちの恐ろしすぎる野生と擬態能力。俺の3時間の命をかけた隠密ラブコメは、早くも一話目にして(人間の村のデートとしては)絶体絶命の危機を迎えるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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