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第28話 キアラの真横の密室サバトと、サクサクの残業代取引

「もぐもぐ……ふふ、どんなに美味しいお菓子で私を懐柔しようとしても無駄よ……! ……でも、この焼き立てパンも、麦茶も本当に美味しいわ……! おかわりをちょうだい」


大集落の広場の中央、長老たちが並べた長机で、重装備のキアラちゃんが完璧におもてなし(もぐもぐタイム)を満喫しながら居座り続けている、まさにそのすぐ横の物陰――交易用の大きな木箱の山(資材置き場)の影では、これ以上ないほどの極限のタイムサスペンスが繰り広げられていた。


「ヤバいっすゼフィラ……! あと3分でアタシたちの変身タイマー(3時間)が切れてトカゲに戻っちゃうっす……! この木箱の影からハミ出してキアラに正体がバレたら、人間の服もお菓子も1ヶ月全面没収(外出禁止ペナ)になるっすよォォォ(ガタガタ)」


制限時間のバッテリーが限界を迎え、擬態魔法の術式が極限まで不安定になったせいで、人間姿のガルダ(火・ギャル美少女)やゼフィラ(風・ツインテ美少女)たちの手の甲や首元から、ガチのトカゲのウロコが『ザザザッ』と不気味に浮き出しかけていた。


長老の椅子の裏で『真っ黒な大トカゲ(リザードマン姿)』のままキアラちゃんに杖を突きつけられていた俺は、すぐ横の木箱の影での不穏な気配に、心臓が口から飛び出そうになりながら大パニックになった。


(隠せ隠せ隠せ!!! キアラちゃんがすぐ目の前でパン食べてる真横で、ゴツゴツした爬虫類のウロコをボロ出しにするんじゃねぇよバカヤローッ!!! 一発で即死するだろォォォオオ!!!)


そんな絶体絶命の彼女たちの前に、まだ擬態時間が『8時間』もたっぷりと残っている銀髪のチート聖女、エルシエラ(人間姿)が優雅に、1ミリも悪びれずにぬっと現れた。


「ふふ、お可哀想に。昨夜、野生の本能のまま人間の村を暴走して、朝から正座でお説教を喰らっていたおバカなあなた方と違って、わたくしは至って無罪ですからね♡ 持ち時間もバグレベルに余っています。……ちょうど良いですね。わたくしの持つ膨大な神聖魔力は、体内に溜め込みすぎるとウロコが澱んでしまうのです。あなた方の不器用な唇で、わたくしの高純度な魔力を美味しく吸い出してもらいましょう♡」


エルシエラはルビーの瞳を妖しく輝かせると、ガタガタ震えるガルダの顎をクイッと持ち上げた。


「さあ、わたくしのウロコの美しさのために、今すぐわたくしと『時間上書きの接吻(1時間チャージ)』を交わし、人間の姿を延長しなさい♡」

「くっ……!! 光の女、めちゃくちゃ上から目線でムカつくっすけど……1ヶ月外出禁止になるよりは1万倍マシっす!! 唇を出すっす……んむゥッ!?」


ガルダがプライドを捨てて差し出した唇に、エルシエラが優雅に、かつ力強く唇を重ね合わせた。

エルシエラの高純度な神聖魔力が口移しでダイレクトにガルダへとチャージされた、その瞬間――。


擬態が解けかけて浮き出ていたガルダのウロコの不安定な魔力と、それを力ずくでねじ伏せるエルシエラの光の魔力が体内で激しくスパーク! その凄まじい魔力衝突の副反応として、物陰のなかで「プシュゥゥゥン!!!」とまばゆいピンク色のラノベの光が盛大に大爆発したのだ。


(だから光るなって言ってんだろバカヤローッ!!! ウロコが引っ込んだのはいいけど、チャージの化学反応の爆光を至近距離で放つんじゃねぇよ!! こんな国家転覆規模の緊急事態の真っ好中で、トカゲ同士の『命がけの連続レズ接吻美容デトックスサバト』を開いてんじゃねぇ!! ガルダたちも魔力が一気にブチ込まれたせいで、サウナ上がりの水風呂みたいなトビ方してウットリしてんじゃねぇよ!! 絵面が邪教の不純異性交遊より1万倍カオスなんだよバカヤローーッ!!!)


「ぷはっ……♡ さあ、次はゼフィラ、あなたです♡」

「ちょっと、来るんじゃないわよ……! あ、アタシだって本当は悔しいけど、服の買い出しに行けなくなるのは嫌よ! 早く吸わせなさいよ! んぐぅッ!?」


プシュゥゥゥゥン!!!


デメト、ネレイダまで順番にエルシエラに組み伏せられ、物陰が「プシュン! プシュン!」と激しく純白の輝きを放つたびに、俺(大トカゲ姿)は心臓が口から飛び出そうになり、トカゲの手足をパタパタと必死に動かして光を遮ろうと大パニックになった。


周りの長老トカゲたちも冷や汗を滝のように流し、長いローブをバサバサと広げて全力で目隠しを作りながら、長机のキアラちゃんに向けて必死の営業スマイルで畳みかける。


「ほ、ほうほう! キアラ様、今物陰がピカピカ光ったのは、ウチの村特製のハニー焼き立てクロワッサンが最高に美味しく焼き上がった、お祝いの神聖なフラッシュですぞい! さあさあ、冷めないうちにおかわりをどうぞ!!」


「……そうなの……? うぅ、もう本当にお腹がいっぱいで死にそうなのだけど……でも、おじいさんたちが私のために焼いてくれた兵糧パンだもの、残すわけにはいかないわ……っ! もぐもぐ、サクサクして美味しいわ……っ!」


助かったァァァ!!!俺や長老たちの命がけのホワイト隠蔽フォローと、お腹パンパンなのに死ぬ気で食べ進めてくれるキアラちゃんの健気すぎる大勘違い大食い(兵糧攻め)が奇跡の融合を果たしたおかげで、彼女は物陰の泥棒猫たちの人間姿に1ミリも気づくことなく、机にのしかかって限界のもぐもぐタイムを継続してくれた。


エルシエラに1時間限定の魔力を上書きチャージされた4頭の泥棒猫たちが、木箱の影で静かに息を潜める、のどかな昼下がり。タイムリミットまで残り1時間。キアラちゃんを美味しいおやつで足止めすることには成功したものの、ただの真っ黒な大トカゲに戻ってしまっている俺の隠密スローライフは、キアラちゃんがお腹をはち切れさせながら居座り続けるという、過去最も心臓に悪い『昼下がりの一斉トカゲ戻り大爆破』への、静かなるカウントダウンの時間を刻んでいくのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:本日21時20分!)

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