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第27話 お母様方の血涙スイーツと、サクサクの極上足止め

デメトの親父のウロコが埋め込まれた特注の杖(※魔力伝導率ギガマックス)を鼻先に「ガッ!」と突きつけられ、俺(漆黒の大トカゲ姿)はフシュゥゥゥと冷や汗を流しながらカチコチに固まっていた。


キアラちゃんの目が完全に据わっている。声で正体がバレそうな気がするので手足で必死にバタバタと身振り手振りでジェスチャーを送ると、それを見たキアラちゃんはさらに殺意を研ぎ澄ました。


「……凄まじい邪気を放って私を威嚇しているわ。さすがは泥棒猫の凶悪な番犬トカゲね……!」


(近い近い近い!!! 威嚇じゃなくて必死の命乞いなんだってば!! 誰か助けてくれェェェ!!)


俺の鼻先が杖の魔熱で熱ちィィィと焼きトカゲになりかけた、まさにその時だった。


「キアラ様! お待ちくだされ、どうかその番犬を圧殺するのはおやめくだされーーーっ!」


広場へと涙ながらにバタバタと駆け込んできたのは、人間姿に変身したトカゲの母親たちだった。彼女たちは、ずっしりと重い最高級の木箱を抱えると、これ以上ないほど丁重にキアラちゃんの前へと差し出した。


「これ……ウチの娘たちの不祥事のお詫びとして、これを差し上げますから……! どうか本日のところは、これでお怒りを鎮めて穏便にお引き取りくだされ……っ!!」


木箱のフタが開いた瞬間、みずみずしい極上の香りが広場一帯に広がった。

そこに鎮座していたのは、人間の村で大流行している、『1日限定30個・3時間並ばないと絶対に買えない超高級極上イチゴタルト』だった。


それは、トカゲのお母様方が「貴重な昼間の変身枠(3時間)」のすべてを行列に並ぶためだけに消費し、魂を削ってようやくゲットした人生最大の宝物だったのだ。


「……っ!!」


長老の大きなドレスの陰に隠れている人間姿のゼフィラ(風)やガルダ(火)たちは、お母様方の背中から立ち上る、凄まじい「心の血涙(殺意の覇気)」をビンビンに察知して、一瞬にしてウロコを真っ白に染めた。


(ウ、ウソだろ……。お母様、アタシたちのせいで、自分が3時間並んで買った幻のイチゴタルトをお詫びとして消費させられてるっす……。お母様の背中から『帰ったらタダじゃ済まさないからね』っていう、追加の地獄オシオキ確定の暗黒オーラがプンプン漂ってくるっす……!)

(ひ、ひぃぃ……キアラの魔法に当たるより、家に帰った後のお母様方の家庭内制裁(リアルな爪研ぎの刑)の方が1億倍恐ろしいわよぉ……っ!!)


マモルの心配など1ミリもせず、美少女姿のままガタガタと震え上がって抱き合うトカゲヒロイン4頭。最強の一騎当千集団が、実の母親の怒りの前にはただの怯える小動物と化していた。


一方、脳細胞が限界突破しているキアラちゃんは、差し出された幻の限定スイーツを見て、大粒の涙を流しながらさらに特大の大勘違いへと爆進していった。


「……なんて、なんて健気で可哀想なトカゲのお母さんたちなの……! あの5人の凶悪な泥棒猫(メスの化け物)ども、このお母さんたちが愛する家族のために必死に3時間も並んで買ってきた大切な限定お菓子(※ただのお土産・交易品)まで、武力で脅迫して強奪し、自分たちのアジトの兵糧として立て籠もっていたんだわ……ッ!!! 許せない、どこまで極悪非道な泥棒猫たちなの……っ!!」


優しいトカゲのお母様方が、泥棒猫たちに略奪された悲劇の被害者として完璧に脳内変換され、キアラちゃんの「泥棒猫への殺意」が天元突破する。


「さあさあ、キアラ様、まずはこれを食べて落ち着いてくだされ」

長老がすかさずお上品なスプーンを差し出すと、キアラちゃんは涙を拭ってスプーンを受け取った。


「くっ……どんなに美味しいお菓子(※略奪された兵糧)で私を懐柔しようとしても無駄よ……! ……んぐ。サ、サクサクして、イチゴが甘酸っぱくて、ほっぺたが落ちるくらい美味しいわ……!!」


めちゃくちゃおもてなし(もぐもぐタイム)を満喫し始めるキアラちゃん。


「おじいさん、お母さん、安心してください! 私はこの極上のスイーツのエネルギーを力に変えて、今夜一晩中、この村の全区画をシラミ潰しに捜索し、泥棒猫たちを全員生け捕りにして、マモルさんを絶対に奪還してみせます……!! もぐもぐ、おかわりをください」


「さあさあ、冷たい麦茶(エンドレス麦茶)もどうぞ、パンも焼き上がりましたぞ!」と長老たちがさらに畳み掛け、キアラちゃんの本格的な「おもてなし(足止め)尋問」がスタートした。


長老のローブの陰から、大トカゲ姿のままの俺が心の中で白目を剥いて絶叫した。


(足止めできたのは嬉しいけど!!! キアラちゃん、おもてなしを120%満喫しながら目が完全に据わったまま『今夜一晩中しらみ潰しに捜索する』って言ったか!? これ、明日の夜明けに俺の変身タイマーが日付変更でリセットされて人間に戻るまで、俺、このおぞましい看守トカゲ(偽マモル様)の姿のまま、キアラちゃんの鼻先で一晩中おやつタイム尋問のデスゲームに耐えなきゃいけないってことじゃねぇかァァァアア!!!)


お母様方の血涙の限定スイーツと、お留守番長老たちの完璧すぎるエンドレスおもてなし。

本日分の擬態ストックを全て使い切り、ただの真っ黒な大トカゲ(番犬)に戻ってしまった俺の隠密スローライフは、キアラちゃんを足止めすることには成功したものの、夜明けまでの長い長い『密室おやつ尋問サスペンス』という新たなる生き地獄へと引きずり込まれていくのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:本日20時20分!)

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